悪なき殺人のレビュー・感想・評価
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パズルのような仕掛けに脱帽
ある女性の殺人事件から始まる運命の連鎖に観ているこちらまで翻弄された。途中で全く違う物語が始まっているものだと錯覚する程に精度の高さに脱帽する。考え抜かれた仕掛けはまるでパズルのようで珍しく貴重な作品。
2022-6
もう一度観て伏線をしっかり回収したくなるね
これまた見事なミステリーでした!
ある出来事を複数の人物の視点から描くことによって少しずつ全貌が見えてくる、いわゆる“羅生門スタイル”(最近多いですね)ですが、フランスの寒村とアフリカのコートジボワールまで繋がっていて実に巧妙。
そこにはネット詐欺等のとても現代的な問題も絡んでいて観ていて全く飽きません。
登場人物たちの報われない愛に苦悩する姿がよりドラマに深みを与えています。緻密な脚本と構成の勝利ですね。
ただ邦題がなぁ。東京国際映画祭で上映されたときのタイトル「動物だけが知っている(ほぼ原題の直訳)」の方が絶対良かったのになぁ。
まぁ邦題問題は作品の本質には関係ないのでいいんですけど「悪なき殺人」ってタイトルはちょっとピンとこないですね。
最後の最後に、余計な事をやってしまい後悔した事はありませんか?的な。
最後が、ぶっ壊しに近い蛇足。だと思うんですよね……
Only the Animals が英題。動物(達)だけが知っている真実。みたいな意味でしょうか?
死体のありかを知っていた犬。アマンディーヌが使っていたアバター(アイコン)も動物。エヴリーヌが持っていた動物のキーホルダー。などなど。秘密を知っていたのは動物さんでした。みたいな?で、どんな秘密も必然も、偶然には勝てない、と。
コートジボワールから始まり、フランス中部の片田舎、パリなどなど。バラバラに登場してくる人物たちが、どこでどんな偶然でつながって行って、殺人に発展するのか?と言う観衆の興味には、ちゃっかり応えてくれます。それはそれで良いとしてですね。でも、正直言うと最後の蛇足感も半端なくw
「アリス」⇒「ジョゼフ」⇒「マリオン」⇒「アマンディーヌ」⇒「ミシェル」と言う登場人物のリレーです。「アリス」でネタを貼り「ジョゼフ」で回収するも「この死体はなんやねん?」の謎を残し。「マリオン」で更にネタを張って、「アマンディーヌ」と「ミシェル」で回収。と言う構成の面白さの中に、ジョゼフと言う猟奇的変人の不可解な行動があったり、ストーカーのレズがあったり、大陸をまたぐサイバー犯罪があったりと、この動的な展開にはワクワク。雪景色の田舎の密室感、コートジボワールの貧困生活の閉塞感、モービルの中のマリオン、と言う「閉じている」個々の要素。この対比が、結構面白かったです。
って事で。最後が、むっちゃ残念。
あれが無ければ「偶然」と言うか、つながりの交差点は、一点に集約できてたのにw
ぐるりと繋がっていたのでした
映画が始まったとたん、なんとも言えない叫び声がしたので、あぁ、確か女性が殺される話しだったなあと思いきや、自転車に乗る男の後ろ姿には、ヤギみたいな動物を背負っていて「キェ〜ッ」って鳴いてるし、正体はコレか。
映画のポスターにもなっていたけど、別の男が背負っていたのも殺された女性だった。
寒々しいフランスの雪景色の農村と、暑苦しい夏の不衛生なコートジボワールの街並み。
5000キロも離れているけど、SNSならすぐそこ。
ミシェルがネットの女性と思い込んだマリオンを見つけて、「やった!会いに来てくれた!」と思い、そりゃもうウッへーてな感じで、今まで無愛想だった妻に車の中で、キスをする。妻のアリスも「え?何を今さら、ど、ど、どうして?」みたいな感じで受け入れる感じが滑稽でした。
ラストシーンも、ああ!なるほど!って、なんだかストンとうまく繋がって◎
暑い国から来たアルマンの元恋人モニークが、車から降りてあまりの寒さに衿を立てて街を見回す。なんとなく薄ら寒い空気が漂っていたのかも、、、
エンドロールで流れた男女の歌の雰囲気も良かったです。
バカなミシェル
吹雪の夜、フランスの山間の町で女性が失踪した。犯人として疑われたジョセフ、彼と不倫関係にあったアリス、そして彼女の夫ミシェルなど、秘密を抱えた5人が、フランスとアフリカのコートジボワールが関係した事件となってた事がわかるという話。
不倫、レズ、愛人、などエロいシーンも多く、夫婦関係の乱れ、国際的なネット詐欺、そして偶然の殺人に何故か隠すアホも登場し、面白かった。
最もバカなのはミシェルなのは間違いない。
「偶然」は一個まで。
後半は、お話を回収するためだけに費やされており、「よく練られた脚本」が自己目的化していて安い。ラストに至っては苦笑。偶然の面白さ、意外さは一個までにしないと...。あと一つ、ネットに引っ掛かる男の描写が軽すぎて、彼らがどうなろうと知ったことじゃねえや、という気にしかならないのは致命的。別に犯罪者でもスケベな男でも一向に構わないし、個人的にはそういう人物の方が好きだけど、最低限の想像力はそなえていてもらわないと(彼らの運命はこのあとどうなるんだろうか?)というドラマを共有する気になれない。「ちょっと辛味のある面白い映画を撮ろう」という当初の目標は買う。ただ買って損した気持ちになった。
は?
3本目。
2日連続の池袋から新宿へ。
池袋のビックカメラで道草してギリセーフ。
成程と思ったけど、男って奴はと、それ以上に、しょーもな。
謎が分かってくるにつれ、そう思ってしまう。
アクセントとして、古畑任三郎がいてくれたらなと思った。
無いものを愛させる。
フランスの雪山の中の田舎で女性が行方不明となる事件が発生。その事件の真相が様々な登場人物の視点で明かされていく話。
事件を比較的中立に見る最初のアリスの視点ではダークなサスペンスのトーン。『ファーゴ』とか『ウインドリバー』のような社会派サスペンスなのかと思ったらコメディでした。
でもアリスの不倫相手ジョゼフの視点になると死体を愛する変質者映画になるし、被害者と関係を持つ少女の視点になると年の差がある女性同士の上手くいかない恋愛映画になるし、アリスの旦那マリオンの視点では急にコメディ(笑)(これは完全に今年見た『SNS 少女たちの7日間』の犯罪バージョンではと思ったね)
全く考えてることも行動も違う登場人物達には共通点もあって、皆どんな形であれ、誰かを愛しているということ。そして皆"無いものを愛している"。
アリスの場合は、全く見当違いな推理をしているように、旦那と不倫相手が自分のために争っているという状況に酔っていてその自分を1番愛してそう。ジョゼフは死体の人物を全く知らないのに勝手に空想で恋してるし、被害者を若さゆえに愛しすぎる少女もまた相手の気持ちより自分の愛する気持ちが全て。
"無いものを愛した"最大級がマリオンなのだが、これ写真が美人じゃなくておっぱいも見せてなくてもここまでするのだろうか。この映画から学んだのは本当の自分を愛してもらうより、幻想の自分を愛させるのが勝ちなんだなと。
真相が徐々に解き明かされていくのも爽快で、ここからは個人的などうでも良い話なのだが、最近「真犯人フラグ」で伏線ばっか散りばめられてフラストレーション溜まってたし、あな番も全然伏線回収って感じの映画じゃなかったので、ここでその溜まったものが解消された(笑)
もうひとつの『偶然と想像(というか思い込み)』
この映画に出てくるキャラクターは直面する状況に対する判断とのギャップによって玉突き事故のように悪循環な出来事に見舞われます。ある意味オムニバスのようで全てが繋がっている物語のラストは思わず唸ってしまいました。
R15だからすき好みは出るかなぁ…。
今年212本目(合計276本目)。
そもそも結構公開は前なのですが、他の映画におされて変な時間帯にしか設定されておらず、年の瀬のこの時期にやっとフリーで観てきました。
フランス語は英語ほどよくわからず、仏検準2しか持っていないレベルです(聞き取りだと1割かよくて2割)。
ということでこちら。もともと、 Only the animals(「動物だけ」/元のタイトルは「動物だけが知っている」)という事情から、動物も出ることは出ますがほんのちょっとだけ。
最初に全体像はもう出てしまって、後からどうやって主人公たちがこの結論にたどり着くのか、という「最初に提示してエンディングに収束させるかを問う」という、ときどきあるタイプのストーリーです。
なお、R15であるのは、やや大人の営みのシーンが多い(ただ、本質的に必要なところと、なくても良いのではと思えるところがある)からであり、暴力的なシーンや不穏当な発言はほぼほぼない状況です。
他の方も書かれていましたが、結局「ラストへの収束」というのが見どころになるので、途中はよくわからない展開が続きますが、ラストまで見ると「なるほどね」ということがわかります(もちろん、ある程度ヒントは隠れていますが)。また、フランス以外でフランス語が話されるコートジボワール等も出ますので、黒魔術がどうだの精霊がどうだの(「聖霊」ではない模様)、結構マニアックな字幕も出ますが、出るだけで本質的にはかかわってこないところです。
まぁ、R15という事情もあるし、ミニシアター中心ではありますが、「ツイッターやラインなど、相手がだれかわからない人を安易に信用するのはダメですよ、ましてや素性のわからない人に送金したりするのもダメですよ」というのはありますが、それは常識的範囲内なので、そこは論点にはなりづらい(見る方の一般的なリテラシーからすれば常識範囲)と思いますので、結局「ラストに向けての収束度合い」をどう楽しむか、に尽きると思います。
上記のような事情があるので、最低限でもラインやSNSなどの知識があれば、と思います。地名こそそこそこ出ますが、それまで追っているときりがないので(コートジボワール等、そもそも調べにくいところも出てくる)、そこはもう割り切りかなと思えます。
採点にあたっては下記が気になりましたが、小さい傷と思うのでフルスコアにしました。
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(減点0.2)この映画、上記で触れたように「SNSによるやり取り」が一つのファクターをしめます。当然、やり取りは全部フランス語ですが、字幕はつきます。
英語では、時制というと、現在時制と過去時制の2つ(未来時制を認めるかは緒論ある)ですが、フランス語では過去時制といっても「複合過去」「半過去」「単純過去」という3つの過去形が存在します(単純過去は純粋な「過去形」ですが、今ではよほど硬い文章以外では出てこない)。ただ、複合過去と半過去は普通に出てくるのですが、字幕上見分けがつかず日本語でいう「~した?」「~した」という日本語でいう「過去時制」で統一されているので、仏検準2といえどもその理解がある前提で見ると、やや混乱を招く(この2つは用法が違うので、正しく翻訳しないと、いつの話をしているかわからなくなる)かなぁ…という気がします(ただ、どうにしても、過去時制が突然未来時制のように代用されるケースはないので、誤解が生じる余地はない)。
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後は任せる…って、悪なき殺人とは??
フランスの山奥、普通なら交わり得ない人達が、ある女性の失踪事件を中心に巻く渦に引きずり込まれていくオムニバス形式ミステリー作品。
農夫と不倫妻、チョロい旦那、アフリカの詐欺師、同性愛娘…運命のいたずらで繋がった人物達が、ある女性の失踪殺人事件にどう絡んでいくのか?果たしてその真実は?といった所に迫っていくアプローチが見どころ。
もうね、オムニバス形式の物語が、最後に一つになるって展開だけで個人的には垂涎モノなわけですよ。しかもジャンルが大好きなミステリーとくれば期待値は爆上げなワケでして。。
しかし、それでもガツンと刺さったわけではないのは、ミシェルがアホすぎるのと、その他登場人物で応援したくなるなるようなのが一人もいなかったのがでかいかな。。
それと、偶然には勝てない…ってのは間違いないけど、ちょっと出来すぎでは!?これは流石に映画でしか起こりえない(笑)もはや精霊様(⁉)が関与しているとしか思えない(笑)
それでも、完全独立はしていないものの、各物語が少しずつ干渉していく様にはゾクゾクしたし、不自然なセリフが聞こえたのも編集ミスかとさえ思ったが…成程そう繋がってくるわけですね。
みんな欲深かったですしね。間違えた方向に欲を出すと痛い目みるぞーってとこでしょうか。そんなメッセージがあるのかはさておき、出来すぎとは言え、欲深い人間達の小さな偶然から殺人事件という大きな問題につながっていくまでの手法は見応えがありました。
オムニバスが好きで最後にスカッとしたい(スカッとは違うかも…)人にはオススメ。最後の最後まで偶然の驚きと恐ろしさを体感させてくれる作品です。
但し一つだけ…「悪なき殺人」って…。これどう考えても悪以外の何物でもないでしょう。
アンジャッシュのコントか
途中までは、一癖ある登場人物のキャラ、そして彼らの複雑な関係性がなかなか良くて、話がどう繋がるのだろうとスリルがあった。けど、ミシェルがヒッチハイクをぶっちぎったシーンの時に、「まさかメインキャスト同士(8人)が濃厚に繋がって完結というオチじゃないよな」と思ったら、そのまさかの展開。アンジャッシュのコントを2時間見せられた気分で、残念ながら自分の好みの作品ではなかった。
高評価の意味がわからん
ハリウッド映画以外の外国映画はレビューの高さがかなり行くかどうかを左右する。それだけにこの映画は残念で仕方がない。どれだけ都合のいい話を偶然という言葉で片付けていくのか。2度寝かけた。
羅生門スタイルの中でもイマイチな作品。
構成も良くないのでラストの衝撃が濁ったのではないか。
よっぽど今年見た韓国映画の「藁をもすがる獣たち」の方が同じような映画でも面白かった
人は愛を求め、愛を失い、愛を得る。
…何でしょう、このポエム。
フランス語なら西アフリカの何処かかな…コートジボワールって書いてあった。アビジャンってそんな大都市なんだねえ。
視点を変えて描くならこのくらいはしてほしい。視点人物が変わるとガラリと様相が変わってくる構成大好き! シリアスだったりコメディだったり、ホラーめいたところもあったりの切り替えがメリハリがあって良かった。
アニメ絵アイコンの向こう側はそうなっているんですね。勉強になりまあす。ミシェルさん…いいの本当にそれで?
愛って何なんだろう?
まずオープニングの画が美しく心を奪われる(水色の車が行き交う町を同じく水色のTシャツを着て自転車を走らせるロレックス)。サヌーの住むビルの壁紙はチェック柄で珍しいなーと上映開始早々にしてストーリー外の部分に興味津々。
ストーリーはと言うと序盤から謎が散りばめられていて今後の展開に期待は高まる一方。しかもチャプターが変わる度に謎が増えてきて、自分の予想とその答え合わせをしながらまるで映画と追いかけっこしているように鑑賞。途中、サヌーが出会い系詐欺を成功させるコツをスピリチュアルに真顔でアドバイスするシーンはコントかよと内心笑っていましたが、「偶然には勝てない」という言葉で状況は一転。それ以降まさにその言葉通りになっていき、「脚本にやられた」という感じでした。ミシェルとマリオンのやり取りはお互い「次はどんな一手で来るのか?」という緊張感の高まりを加速させ、チャットというコミュニケーション方法の特性を上手く活かしている。
より個人的な感想になりますが、ミシェルには他人事ではない虚しさを感じた。綺麗な女性と親密な関係になると冷静でいられない心理状況は痛いほどわかる(この場合実際は男なのですが)。ミシェルに限らずどの登場人物にも愛が欠落しているわけですが、じゃあ自分は愛を知っているのか?と自問自答するとコレというモノが体感的になく、自分も彼らと同じなのだなとしみじみ思った。2021年は「これが愛なのかな?」と思える日が来ることを夢見るのでした。
最後に余談的な感想ですが、マリオンとエヴリーヌが身体を重ねるシーンはエロを通り越して美しく感じました。ミステリーを楽しむだけでなく様々な気付きを得られた映画体験となりました。
愛とはないものを与えること。あるものを与えるのは快楽だ。
一方的な愛が、思わぬ騒動を巻き起こす。きつめのミステリーと思いきや、どこか悲しげな滑稽さが付きまとう。愛することは相手のため、愛を与えることは善行、そうとでも思い込んでいる。その独善が一人ならず数人。見方によってはちょっとシリアスめな"すれ違いコント"。あなたが与えているその愛は、あなたのただの快楽に過ぎないのですよ。ああ、誰一人として(ラストショットの女性も含め)幸せには見えないなあ。
ラスト3秒に、人間の怖さが詰まってる
最初に事件の大筋がわかり
徐々に、それぞれの人物の行動や視点から
事件の謎が解けていき
パズルが組み合わさっていくような感覚で観られる。
それぞれの思惑やストーリーが徐々に紐解かれていき
最終的に全て回収される
構成は非常によく出来ていて
観た後にスッキリと納得できる作品だった。
ただ、悪なき殺人というタイトルはあまりしっくりこないかもしれない。
悪なくはない、というか、ある意味、全員悪意を持ち合わせていたようにも思える。
悪と好意による正義は紙一重
そしてラスト3秒は、なんとなく気づいていた展開だったけど
ゾッとする。人間の怖さを感じた。
脚本や演出が秀逸、話が一周するのは気持ちいい
2021年劇場鑑賞38本目 優秀作 72点
個人的2021年洋画ランキング1位。
まあ邦画しか見ないのでそもそも母数が少ないですが、わざわざ新宿まで見に行ったかいがありました。
伏線回収の様や細かい後のヒントになる演出など終始飽きさせることなく楽しめました。
映画館もすごくいい雰囲気で良かった、またあの会場に足を運びたい。
是非。
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