ミセス・ノイズィのレビュー・感想・評価
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隠れた悪は断罪されず…
物事の一部切り取りや片方からの見方・意見だけがネットやテレビを駆け巡る現代を皮肉に描く作品。
両者の視点を分けて描く事で、ひとつの事象に対して見え方が大きく異なる事がよく分かる演出でした。
ただ、夫の無関心さや動画を発信・拡散した親戚の男の子?が何のお咎めもなく終わっている点が残念。
特に、夫は自分の仕事優先で子供の世話をしない上に妻の味方にもならない。むしろ妻を批判する有り様があまりに酷く、ステレオタイプの夫像を描いているのかもしれませんが、露悪的に映りました。
この事件に潜んでいるもうひとつの悪には何も触れられていないまま終劇を迎えた事で、なんとも後味の悪い感触です。
外見
理解のない夫と言うことを聞かない子供、作家視点で描かれる可哀想な自分視点。しかし、同情を許さぬ批判性もしっかりと織り込む。そこからの見事な反転。見た目がいかに不利に働くか。しかし、このおばさんもやはり行動が常軌を逸している。
過剰気味に描かれたマスコミとネットの炎上。バランスをとった編集者とクラブの女の子。最終的に和して着地するのは良いが、とはいえ、飛躍まで与えるのは調子が良さすぎる。
この映画の場合はどっちもどっち
若田さん、確かに朝の6時からお布団パンパンはご近所迷惑。でも真紀もおはようございますの挨拶もなく、いきなり喧嘩腰の物言いはどうだろうか?子供を家にあげてお昼寝してしまった若田さん、一言預かってるよと言わないのは確かに悪いが、非常識呼ばわりする真紀もどうかと思う。忙しいとはいえ、ほったらかしにしていたのは事実なんだから。だって若田さんは落書きだって消してくれているのに。
娘の誕生日にケーキの蝋燭をつけるのを待っているのに、いつまでも若田さんの悪口を言い続ける真紀には観ていてイライラした。子供にそんなことを聞かせるのはダメだよ〜。
だんだん明かされていく若田さん夫婦の日常や行動を観ると決して悪い人たちではなく、確かに口は悪いが、お互いの理解と思いやりと歩み寄りがたりなかったことと、弟が面白半分にSNSにあげたり、ココぞとばかりに叩いてくるマスコミによって、大騒ぎになってしまった。
まあ、真紀たちは引っ越したようだし、たまには若田さん家に遊びに行ってあげて欲しいな。
そういえば布団叩きおばさん、何年か前にいましたねえ。
主人公のママが自己中すぎて…
お互いの視点によって齟齬が起こるのは仕事でも日常茶飯事だけど、主人公のママは自己中すぎてお互い様に観えず、終始イラついてしまった。(でもこれって監督の思い通りなのかもしれない。)
核は事情を知らずにSNS、メディアの煽りを間に受け、好き勝手に薪をくべる匿名の不特定多数の人間の無意識下の悪意。
火のないところに煙は立たないが、無関係なら薪をくべるのだけはやめよう!
胸が熱くなる1本
上映中に見逃し、Netflixで鑑賞。
久しぶりに胸が熱くなる邦画でした!
奇をてらった演出は一切なし。純粋にストーリーが面白く、それぞれの俳優さんも役にはまっていて良かったです。
途中シリアスな展開もありますが、重くなりすぎず、それでいてきちんと考えさせられる構成。
絶妙なバランス感でした。
ネット上でこれまでチヤホヤしてきた人たちが、次の日には突然掌を返す…。日常でもよくあることかと思いますが、巻き込まれた当事者にとっては、時には命に関わるほどの大問題。嵐が過ぎ去るのを待つのは耐えられないことも。
誰でも簡単に意思表明ができる時代だからこそ、それがどういう結果を招くのか、これまで以上に想像力を働かせる必要があるな、と改めて思いました。
また2者の視点をスイッチすると、こんなにも景色が変わるのだ、と気付きがあるのも面白かったです。
メディアでの騒動を逆手に取ったラストにも満足。
監督の次回作も楽しみです。
おそらく奈良の騒音おばさんがモデルだろうが、おばさんを一方的に悪者...
おそらく奈良の騒音おばさんがモデルだろうが、おばさんを一方的に悪者扱いせず、騒音おばさんサイドからの物語もあるのがいい。
そういう事情があったのか、それなら頭がおかしいと断ずるわけにもいかない、作家の女性もどっちもどっちだな、と感じる。
最後にきっちりと和解し、後味の良い作品となっている。
ドラマの裏に、もう一つのドラマがある。
wowowで放送されていたのを、録画して鑑賞。
どんな映画なのかまったく知らない状況で、見てみました。
最初は、少しコミカルな感じ。ある家族の生活が
だらだらと続いていくのかな、と思っていたら、一転。
重い雰囲気のドラマへと展開していきました。
一つの物語は、視点を変えると、待ったく違うドラマになる。
現代のSNSやマスコミ報道に疑問符を投げかけるような映画ですね。
重いテーマだけど、ちゃんと救いもあって、
そのバランスがいい感じだなあ。良作だと思いました。
騒音おばさん騒動をモチーフに、現代的な対立事象を透視図的に描き出す...
騒音おばさん騒動をモチーフに、現代的な対立事象を透視図的に描き出す。
ステロタイプといえばそれまでだが、近視眼的な作家を篠原ゆき子が好演。
登場人物との距離感が近くなったり遠くなったり、なかなか面白い描き方の天野監督のこれまでの作品も見たくなった。
子役が可愛い
騒音おばさんになってしまう背景が色々あるから
一概には、迷惑行為とは言えない。
子供は、実家に預けるかシッターさんを
雇う方がよかったかもね。
時間の都合で半分までしか、
見れなかったですが。。。。
後味が素晴らしい(これは戦争だ!)
これは戦争だ!2人の女優の。
漫画・ガラスの仮面の作中劇
「ふたりの王女」を思い出した。
本来のヒロインは真紀だ。しかし、観ていてなかなか真紀に共感出来ない。むしろ美和子の方が真っ当だと感じてくる。
そのうち、これは「美和子・真紀・直哉」の、三世代のジェネレーションギャップも描いていると気付く。
観客の年齢やこれまでの生き様によって、三者の誰に感情移入しやすいかも違ってくるだろう。
また、真紀に世代は近いが客観的で多面的な視野をもつ人物として、夫の祐一や担当編集者も配置されている。
終盤、真紀が心から素直に謝罪した時、それまで真紀サイド・美和子サイドいずれを応援していようとも、二人のヒロインに好感を抱く事が出来る。
それは演じている篠原ゆき子と大高洋子が実に見事に、ここまでのバランスを維持してきたからだ。
なるほど、序盤思ったほど真紀に肩入れ出来ず、むしろ否定的感情を抱いてしまったのも、篠原ゆき子の演技のなせる技だったか!
大高のパワフルさに負けないくらいの「微妙に嫌なオンナ感」を出さなければ「平凡な主人公」で終わってしまい最後のカタルシスで一気に挽回する事が出来ないのだ!
これは驚いた!篠原、大高、いずれの演技が優ってしまってもこの作品は上手くいかない。つまり2人には丁々発止の真剣勝負で均衡を保ち続けて貰わねばならない。そうしなければ簡単にヒロインの座はいずれか片方のものとなってしまうのだ!
難しいのは相手に非があるように見える場面こそ、自分にも非はあるように見せる必要がある事だ。更にその上で「でも、これって別に悪くはないんじゃない?」とも感じさせねばならない。
演じきった2人は見事としか言いようがない。
脚本も本当に素晴らしい!
タイトルから例の騒音障害事件をモチーフにしたとわかるのでストーリーの見当はつく。
「ある時点」から多視点になる事も、最後に「あの人物」が助けに入るであろう事も、最初っから予測がつく。
それなのに、これだけストーリー展開が読めるにも関わらず、味付けの予測はつかないんだなぁ・・・!
例えば「この材料ならハンバーグを作るだろうな」とはわかっているのに、なかなかオーソドックスには進まないというか、どこでどんな下拵えを仕込んでくるか、どんなスパイスや調味料を使うのか、常に選択の余地を絶妙に残している。
どの場面からでも、コメディにも、ラブロマンスにも、社会派ドキュメンタリーにも、サイコスリラーにも、サスペンスにも、ついでにホラーにだってスムーズに持っていけちゃうんだなぁ。
しかも、無駄なシーンの削ぎ落としも凄い。ディズニーアニメの大作では絵コンテ、ビジュアルコンテの段階でボイス録音まで行われ、何度もストーリーについてディスカッションが行われる。描かなくても観客の推測で話が通じるシーンは削ぎ落とされ、最高のテンポで物語が展開出来るようにスリム化される。
同様に本作も実によく練り上げられ、削ぎ落とされていると感じた。
それは、監督と各演者がそれぞれの役どころを充分深く掘り下げているからこそ可能になるのだろう。
完成された映像には映し出されない削ぎ落とされたシーンや、役者の皆さんがどれだけ本編と関係のないエチュードを繰り返されたのかと感心する。
その結果なのか「泣けた!」
元々涙脆い方ではあるが、近年は映画を観て泣いた事がなかったのに、数年ぶりに本当に「泣けた」
まさか、この作品に泣かされるとは思いもしなかった(笑)
実に上手いんだなぁ!こんな設定、いくらでもドロドログチャグチャの救いがない作品に仕立てられるのに、本作は驚くほどに後味が良かった!
ちゃあんとね。観客の非難感情の矛先が「あるもの」にすり替わるように出来ているの。だから誰も傷つかない。
ハートウォーミングなヒューマンドラマのハッピーエンドに帰結する。
よもや、ここまでのシナリオ、ここまでの作品だとは思わなかった。
嬉しい誤算で楽しませてくれた天野千尋監督と俳優陣に敬意を表したい。
天野監督、これから益々「要!チェック」だ。
都合
見れて良かった。
SNSが猛威を振るう現代にこそ必要な作品だと思える。むしろソレがもたらした現代の病巣を描いているかのようだった。
俺はSNSこそしてないが小説家と同じ過ちを犯してないだろうかと、自身の内側に問いかける。
「人は見たいものしか見ない」と言ったのは誰だったろうか?
確かに隣人の行動は褒められたものではないが、他人様には他人様の都合がある。その兼ね合い。折り合い。…頭がおかしいと断罪する程、よく知らないだろうとも思う。だけど世間の風潮としては「自分を守れ」の一点張りだ。そうやって知らず知らずの内に作られた牢獄の輪郭を見るようでもあった。
作品を見て思うのは「常識」の所在など主観で変わるって事だった。ファーストコンタクトの双方の認識がまさにソレで…主観により捻れた事実の成れの果てだ。
というか…朝の6時に小説書いてるお前も大概非常識だ。だが本人は気づかない。
自分に必要な事は「正しい事」ではないのだ。
歩きスマホもその一例で…。
必要があって見てる。
だが、あなただけが歩いているわけではない。
それを心の狭い俺なんかは思う。
「なんだよ?お前の為に道空けろってのか?」
例えば、意固地になってワザとぶつかったとする。
「あ、すいません」
が返ってきたなら、こちらも謝れるだろう。
だが、「痛っ!どこ見てんのよ!」とか「前見て歩けよ!」なんて言われた日にゃ…「見てないのは、てめえの方だろうがあっ!!」なんて事になる。
ワザとぶつかった俺は悪い。悪意があるからだ。
だけど、そもそも人混みで周りを見てないあなたは、もっと悪い。そおいう事なのだ。
自分の事を棚に上げて、あまつさえ讃えてるような状況だ。
…現代では頻繁にそおいう事が起こる。
実の所、綱渡りのような毎日だ。些細な事であらぬ方向に転がって、勝手に拗れていく。
ほぼほぼ表層だけを切り取って公開する風潮にも問題はあるのだが、ソレを見て笑ってる大衆のなんと見苦しい事か…品性のかけらもない。この辺りは予想だにしなかったバラエティ番組の余波にも思える。
画面越しに起こる事は、画面の中だけでは収まりきらなくなってる。この奔流を変える事はできるのだろうか?画面の中でイジられる人達は、イジられるのが仕事なのだ。同じクラスの同級生は、イジられるのが仕事ではないのだよ。
「冗談やん。マジになんなよ、寒いなあ」
…何故に自分の価値観の中に友達を閉じ込めるのだろうか?
作中、飛び降りたおじさんは一命をとりとめたけど、亡くなってたらどうするの?
多分、どうもしないよね。
次から次へと新しい餌は撒かれ、自分が加担した事実も忘れていくだけなのだろう。
おばさんは言う「狂ってるのは世間だ」
そうなのだと思う。
ただ、だからと言って、スーパーの店員に悪態をつく権利はないのだ。衛生上の問題とか、スーパー側にはスーパー側で山積みなのだ。
家に持ってかえって漬物にすれば済む話だ。
勿体ないと皆で分ければいい話なのだ。
それぞれの都合が交錯する物語で、決して他人事ではない物語だった。
俺自身、安易にその連鎖に組み込まれる要因はいっぱいあるだろう。自分本位な風潮が蔓延してる現代だからこそ、生まれた作品だと思う。
地上波で流れる事はあるのかな?
コイツを流す局があるなら、まだ救いもあるんだろう…だけど「視聴率取れないから論外」って却下されるのが関の山だろう。
…情けない。
作品としては、とにかく脚本が秀逸だった。
深読みすればするほど肉厚な台詞のなんと多い事か。
それらの台詞を発する役の立場も相まって、痛烈な風刺がこれでもかと盛り込まれてる。
演出も良くて、娘の誕生日の空気感なんかは抜群だ。何より「おばさん」のキャスティングは絶妙。
「撮るんじゃないわよ!!」とカメラに怒鳴り散らすおばさんのなんと爽快な事か。
出演者達から醸し出されるメッセージも豊富で、素晴らしい。
こういう作品こそメディアで流せ。
広く世に知らしめるに足る作品だった。
主人公のマキさんの性格に問題がある
主人公のマキさんの性格に問題があるというか随分極端だなあと感じた。
すぐに浮かれて踊ってるし、人に何か言われるとすぐに落ち込んだり喜んだり振り回されやすくて単純で短絡的です。
まあだからドラマになるんでしょうけれど。。。私も子どもがいるから分かるけれど、ちょっと迷子になっただけでもものすごく焦る。でもいなくなったら、生きて帰ってきてくれれ
ばそれだけでいい、と親なら願うもの。隣の変わったおばさんだろうと誰だろうと連れて帰ってきたなら、とりあえず泣いて喜ぶと思う。連れて帰ってきてくれた相手に対してあんなにいきなりキレて攻撃的になるかなあ?そりゃあ、時間が経つにつれ冷静になってきて沸々と怒りが込み上げてくるというのなら分かるけれど。
それでも、私だったらもっと子どもの様子を観察すると思う。どう見てもおばさんとおじさんを怖がっていないし、また遊びたいと言う。子どもは正直だから、怖かったり変な思いをしたら、2度と近づこうとしないだろう。マキは子どもの気持ちを分かろうとも言い分にも耳を傾けようともしない。
こんなに観察眼のない人が小説家って信じられない。おばさんが、「あんなにピリピリしてていい小説なんて書けるはずない」と言うのはいい得ている。
ともかく、こういう極端なキャラによって、物事を正しく見たり理解することの大切さがあぶり出される映画だ。自分の判断というのはあくまでも自分の判断であって、何か意見を言っても、「まあ、私の個人的な判断だけどね…」って思うようにして、決して全貌は見えていないことを自覚する冷静さが現代人には必要なんだろう。
1を見て10を分かるなんてあり得ないんだから。
タイトルなし
世の中の出来事は見方を変えれば色々と見えてくるのにそれがなかなか出来ないですよね。SNS全盛で情報過多の時代の今は特に。そんなところも描きつつ、人の本当の優しさを見せつけられた見事な脚本と作品でした。
佳作、しかし残された問題も
現代の、インターネットを含めたメディアと社会について、よく描かれていたと思います。
しかし、問題は小説家である主人公の夫。
私は、この出来事の元凶の大部分はこの人の子育てを妻に投げっぱなし問題にあると思いますし、物語の序盤ではそう受け取れるように描かれていたと思うのですが、その点はその後は取り上げられずに終わります。
隣家の美和子の夫が「ありがとう」と妻に言うのは、明らかに夫婦関係の対比でしたよね……?
主人公が夫に「自分のことしか見えていなかった」と謝るのも違和感。それは夫もまったく同じだったはずです。
出来事に常に他人事のようなこの男こそ、私にはかなり不気味な存在に思えました。
銃口はどこを向いている?
(これから観る方には少しネタバレあります)
大事なモノや目の前の生活を守りたいが故に傷つけ合ってしまう人々。
むしろ皆被害者。
…では加害者は?
タイトルから「アブナイ隣人」と闘うサイコな話かと思えばさにあらず。
個人的に仕事でモンスターカスタマーへの対応を抱えている時期だったので不安があったが、早々にそういう話ではないことが分かってひと安心。
しっかり堪能できた。
ただ、お隣りさんがエキサイトしていく様とか、メディアやネットが大騒ぎする流れやその人々の描写があまりにもステレオタイプというか「ベタ」というか、コントっぽいというか…。
SNSやマスコミを悪者にするってのもまあ今となっては常套手段。もちろんそれ以外の要素も描かれるんだけどさ。
でも、この予算規模としては圧倒的に頑張ってる佳作の部類だと思う。
それぞれのノイズィ
早朝から布団を叩かないといけない理由をノイズィはまきに対して最初にちゃんと説明しようとしているのに、聞く耳を全くもってないまき目線の前半フェイズではその声が掻き消されているあたりに、まき含め一般的に凝り固まった"常識"の形がある。
まきの娘が放ったノイズィ夫と一緒にお風呂入ったもんね発言さえ、先入観で最初は犯罪的なフィルターで捉えてしまったが、後半のノイズィ視点になった時、犯罪者でもロリコンでもなんでもない事が明らかになり、自分の心の汚さが露わになって恥ずかしくなった。
いかに表面的、断片的に見える部分だけで物事を判断し、善悪を決めつけてしまう人間心理が恐ろしいものかとがうまく表現できている作品である。
また全体を通して安易にバックミュージックを極力入れない事により、日常の生活音のSEが時に騒音に、また時に耳障りよく聞こえてくるのはテーマ性と噛み合ってて上手い演出だと思った。
人によって同じ音でも感じ方は違うから個々にとってのノイズィは劇中何かしらある。
世論や同調圧力で白黒入れ替えるメディアやマスコミ。世間的に上級とされる弁護士や裁判官なんかより、常に俯瞰で物事を見極め冷静な判断をしているのがキャバ嬢という職業に1番のアイロニーを感じた。
最後にひとつ。私にとっての日常のノイズィは職場の同僚が休憩中に観るYouTubeのロボットボイスのゲーム実況である。
期待とは異なる衝撃が主観を木っ端微塵にする圧巻のドラマ
主婦で小説家の真紀は出産を機にスランプに陥ってしまい、書き上げた作品も編集者にダメ出しを食らい、かつてのファンもだんだん離れていってしまう。そんな折早朝から隣家のベランダでけたたましく布団を叩く音がただでさえ毛羽だった真紀の心を蝕んでいく。溜まりかねた真紀は隣家の主婦美和子とベランダで派手な言い争いをしてしまったところその動画がYouTubeでバズってしまい、ただの小競り合いが大騒動へと暴走していく。
私はこの主人公に物凄く嫌悪感を感じていましたが、そういう先入観や偏見が本作の肝。自分が美しいと思っているもの、正しいと思っていることを他人が同じように思っているとは限らないということが繰り返し突きつけられ、そんな主観がグラグラと揺れているところに突如放り込まれる台詞が胸に突き刺さります。他人事だと思って眺めていた光景に引き摺り込まれポスターから滲むイメージとは全くかけ離れた結末まで突き飛ばされるような感覚。爽快感と気恥ずかしさが同時に胸に湧き、両目からは悔恨の涙が溢れました。こちらが勝手に期待していたカタルシスとは全然異質な衝撃を鳩尾にかましてくる実に素晴らしい作品です。あとチラッとだけ登場する洞口依子さんの演技にも度肝を抜かれました。
全112件中、21~40件目を表示