劇場公開日 2020年12月18日

「まずまずの実写化と言いたいが、レイが…」約束のネバーランド おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0まずまずの実写化と言いたいが、レイが…

2020年12月31日
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鑑賞方法:映画館

興奮

原作未読ながらアニメシリーズでハマり、本作公開を心待ちにしていて、やっと鑑賞してきました。内容はアニメ1期と同じで、食用児として育てられた子供たちが、その事実を知り、施設を脱出するところまでを描きます。1クール分のアニメを2時間の尺に収めるため、いくつかのシーンをカットして、端折ってる部分は当然のことながらあります。それでも、押さえるべき場面はきっちり押さえ、ストーリーが破綻しないように描いていたのはなかなかよかったです。

映像も、全体的に原作の世界観をわりとよく表現できていたのではないかと思います。鬼や崖のCGはややしょぼかったですが、孤児院の外観や中の様子、子供たちが遊ぶ森などは、よく雰囲気が出ていたと思います。

キャスティングは、なんといってもイザベラ役の北川景子さんが完璧!美しさ、裏と表の顔の使い分け、ラストで見せる内に秘めた思い等、まさにイザベラそのもの!渡辺直美さんも、その不気味さがまさにシスター・クローネって感じで、これもよき。他にも、松坂桃李くん、三田美子さんらの登場は、一気に場の空気を締めるようで、さすがの演技力と存在感。というわけで、コンパクトにまとめた脚本、作品世界をイメージさせる舞台、フルスコア3人を取り巻く脇役、とここまではバッチリ。

しかし、物語の中心となる、エマ、ノーマン、レイが、そのすべてをぶち壊すようで、本当にもったいなかったです。浜辺美波さんは大好きな女優さんだし、幅広い役をこなせる演技力もあると思います。でも、さすがに16歳には見えないし、あとの2人とのバランスも悪かったです。原作の設定年齢を引き上げたものの、あえて子供っぽく振る舞う演技と見た目が不釣り合いで、序盤は違和感でむず痒くなりました。それでも、持ち前の演技力で徐々に違和感が薄らいでいくあたりは、さすが浜辺美波さんといった感じです。同様に、板垣李光人くんのノーマンも、エマたちにすべてを託す覚悟を決めたあたりからは、違和感なくノーマンとして受け入れることができました。

ただし、一番の問題はレイ役!申し訳ないですが、演技も滑舌も学芸会レベルで、完全に浮いちゃってます。おかげでまったく作品世界に没入できず、作品の印象を著しく悪くしていると感じました。今時の子役なら、もっと上手な子がいくらでもいるだろうに、これでは逆にキャスティングされた彼がかわいそうです。

もうこれは、浜辺美波さんをキャスティングしたくて、設定を変更したことで、負の連鎖が起きてしまったとしか思えませんでした。製作側のビジネス事情は察しますが、結果として原作の魅力が大きく損なわれるようでは、それこそビジネスとしても失敗なのではないでしょうか。この手の失敗は枚挙にいとまがないので、いいかげんやめてほしいものです。とはいえ、本作が失敗作だとは言いません。むしろ実写化としては頑張ったほうではないかと思います。それだけに、レイ役のキャスティングが悔やまれてなりません。

おじゃる