「花とラーメン」mellow 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
花とラーメン
『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』など恋愛映画に手腕を振るう今泉力哉監督。
今年も2本の恋愛映画を手掛け、その1本。
これまた良作!
作品的には『アイネクライネナハトムジーク』のような恋愛群像劇。
小さいがお洒落な花屋の店主と古いラーメン屋の店主を主軸に、通う常連客たちが訳ありの様々な恋愛模様を繰り広げる。
花屋の店主の夏目。「恋人は花」と言うほどの変わり者…いや、心優しい青年。
ラーメン屋の店主の木帆。亡くなった先代の父親の跡を継ぎ、一人で切り盛りする美人店主。
普通なら逆だが、花屋=男、ラーメン屋=女というのがユニーク。
花屋には常連客がいっぱい。
近くの美容室の中学生の娘、宏美。実は、夏目の事が好きで…。
そんな宏美も学校では人気者。後輩の男子…ではなく、女子2人から想いを寄せられている。
困ったのは、花を玄関に届けに行くお宅の美しい人妻。夏目に密かに想いを寄せ、夫に離婚を切り出す。しかも、夫婦と夏目で話し合い。ありえねー! 夏目も思わぬ展開に呆然で、しかも夫から妻を傷付けるな!…と言われる始末。え~…。
ちょっぴり切なかったり、ヘンなコミカルだったり、十人十色。
皆大人なのに何だか不器用で、そんな中で、夏目の不登校の姪っこがおマセさん。
見てるとすぐ分かるが、夏目と木帆はお互いに想いを寄せ合っている。
でも、お店に花を届けるお得意さん、お店にラーメンを食べに行くお得意さん。昔馴染み、友達…。
この関係を壊したくない。
最も不器用なのはこの2人。
ちょっとした視線、表情、仕草。
それらでこの人はあの人に想いを寄せている。この人はこの人に想い寄せていると充分伝わってくる。
今泉監督の恋愛演出は本作でも遺憾なく。
田中圭の好演。まるで素の本人を見ているかのよう。って言うか、「恋人は花」と言う彼女ナシの割りにモテモテでしょ。
ほとんど知らぬが、岡崎紗絵がとにかく可愛い! モデルらしく、スタイルもメチャメチャ良し! 友人と会食時は別人のようにお洒落だが、自分は仕事中の汚れてもいいようなシャツにジーンズのラフな姿も嫌いじゃない。こんな美人店主のラーメン屋なら毎日通いたい!
女の子3人も充分可愛く、中でも志田彩良が好助演。
私的意見ながら、魅力的なともさかりえ奥様に想いを寄せられるなんて何て羨ましい限り!
それから、あの姪っこちゃん、売れっ子人気子役なのね。どうりで上手い訳だ。
両店の雰囲気がとてもいい。
自分はさすがに花屋には行かないが、ラーメン屋は行く。
ああいうラーメン屋って夏場は暑いが、メニューは絶対美味しい。
実は最近、昔よく食べていた馴染みのラーメン屋にまた通い始めたばかり。このレビューを書いている今日も夕食で行く予定。
あのラーメンも是非食べたい!
愛情、感情、友情、同情…様々な“情”。
同情は都合のいい情。
愛情は成就しなければ無意味。
でも、本当にそうだろうか。
あの2通の手紙には涙腺を刺激させられた。やはり、手紙っていいね。
全ての情は優しさや温もりに満ち溢れ、自分の本心に通ずる。
ラーメン屋を畳み、本来の夢であった建築を学ぶ為イタリア留学を決心した木帆。
が…
ラスト、結局行かないんかい!
人によっては評価分かれるかもしれないが、それは好きな人への想いの表れ。自分で決めた自分のやりたい事。
若い女性がラーメン屋。男が花屋。男性監督が恋愛映画を撮り続ける。
自分のやりたい事をやる。
それでいいんだ。
劇的な出来事は一切起きない。退屈に感じる人も居るだろう。だけど、
昨日まで仕事が忙しく、休みの今日、本当に心底癒された。
今泉監督は個人的に今、連続ヒット中!