「いとをかし」グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
いとをかし
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総体的には喜劇なのだけど、不思議なうねりを感じる作品だった。
女房の他に十数人の愛人を抱える田島という男が主人公なんだけど、こいつがどこか憎めない。そういうキャラを演じるに大泉氏は抜群のキャスティングで他にいないだろうなと思える。それと対になる絹子を演じる小池さん…全く見劣りしなかった。
作品のカラーもあるかもしれない。
お芝居の質もどこか誇張されてる部分もあって、最初は鼻につくものの世界観が助けてくれる感じ。どこか自分達とは違う空気感がそこはかとなく漂う。
戦後という時代背景や、言葉使いがそう感じさせてくれたのかも。
太宰治がそうさせるのか、ケラリーノ氏の脚色がそうさせるのか…不思議なうねりを感じてた。
喜劇なのだけれど、相当に悲劇でもあるのだ。その悲劇を悲劇として描いてはおらず、誰もそれを悲劇だと受け止めてないような。
そこに出てくる占い師。
俺は感じた事はないのだが、宇宙の意志がそこに作用でもしてるかのような錯覚。
そんな登場人物がいるせいかなんなのか、妙な浮遊感を作品が帯びていて、なぜだか物語を俯瞰してしまえるように思う。
なんちゅうか、人の世を達観してしまえるような…自分自身ですら、どこを根拠にそんな事を考えたのかはよく分からない。
まぁそれでも、鑑賞中は楽しかったし、捨て犬のような目をする大泉氏に「似合うなぁ」とクスリとせずにはいられなかった。
「悲劇は喜劇」とかなんかそんな標語も思い出しはするのだが…悲劇も喜劇も、その人次第だなぁとも思う。
おかしいな、なんか哲学的な感想になっちゃった。太宰のせいかもな。
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