劇場公開日 2020年2月14日

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇 : インタビュー

2020年2月13日更新

大泉洋&小池栄子、あうんの呼吸の原泉に迫る

硬軟自在の演技派として鳴らし、話術にも定評のある大泉洋小池栄子。初の本格共演となる映画「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」では、2人の持てる力が存分に発揮されている。成島出監督の緻密な演出の下、互いの魅力を引き出し合いながら予想外の!? アクションも含め小気味よいテンポの喜劇を完成させた。丁々発止のやり取り、機知に富んだ笑いが生み出される、あうんの呼吸の原泉に迫った。(取材・文/鈴木元、写真/根田拓也)

大泉が主要キャストだった映画「man-hole」(2000)、「グッモーエビアン!」(12)に小池が出演しているが絡みはなく、初共演は17年の舞台「子供の事情」。バラエティ番組などでも一緒になったことがないのは意外だが、舞台での稽古、本番で共にした2カ月が、2人の関係性の礎となった。

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」の萌芽は、その2年ほど前にさかのぼる。太宰治が遺した未完の小説「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが戯曲にして舞台化。観劇した成島監督が、ヒロインの永井キヌ子を演じていた小池に“ひと目ぼれ”したのだ。

「見終わってすぐに楽屋で『これ、映像でやりたい』と興奮されていて、その熱量がすごかったんです。監督は思い立ったら動くのが速い方なので、その後何度かお電話もいただいて、時間をかけて企画を立てていただいたのはありがたかったですね」

小池にとって成島監督は、女優としての道標を示してくれた恩師。「接吻」(08)で毎日映画コンクール女優主演賞を受賞するなど頭角を現していたが、11年「八日目の蟬」が転機となる。

「私のちょっとした浮ついた気持ちを見抜かれていたので、脚本に深く描かれていないところを掘り下げていくのも役者の仕事だという、芝居をする心得、役に対する向き合い方をとても細かく指導していただきました。それから芝居が楽しくなった、大きな出会いでした」

今回が5度目のタッグとなり、初めて主演女優として対じするのだから気合が入るのもうなずける。対する大泉も、かねて熱望していた成島監督からのオファーに「光栄」と喜びをかみしめる。文芸誌の編集長・田島周二は太宰の分身ともいえるが、さらに意外な人物が思い浮かんだという。

「監督から、田島はこういう人だという人生年表のようなものをいただいて、太宰と相当かぶるところがあった。もうひとつ、僕の中でひょうひょうとして頼りないんだけれど、美しくてしなやかという、どこか市川雷蔵さんの『好色一代男』のイメージがあって、その2人の雰囲気が常に頭の中にあった気がします」

戦後復興期、優柔不断だが女性にはモテるために何人もの愛人をつくってしまった田島。闇市の担ぎ屋だが絶世の美女であるキヌ子を金で雇い、偽夫婦となって愛人たちに別れを納得させようと画策する。成島組は撮影前に入念なリハーサルを繰り返すことで知られる。大泉は「僕は好きなのでありがたい」というが、プライベートの旅行のスケジュールを誤り1日だけ参加できないことがあった。

大泉「多大なるご迷惑をおかけしました」
 小池「代役の方に、とても上手にやっていただきました」
 大泉「だから、ここの芝居は随分代役でやっちゃったから、大泉さんに来られても若干違和感があるって言われて」
 小池「だって代役の人と6~7時間やって、代役の人も案を出し始めるわけですよ。それを監督も飲んじゃっているから(笑)」
 大泉「でも結局、そこは僕がやるわけだから」

そのリハーサルはエキストラにも及び、2人が偽夫婦になる交渉をする食堂のシーンでは、カメラの動きに合わせてエキストラがテーブルを移動させるなど臨機応変な対応で見事な長回しの1カットが撮影された。実はそれこそ、大泉が不在だったシーンである。

小池「そうだった。そうそう」
 大泉「大変申し訳ない話なんですけれど、僕がいない時点で、そんなに大事なシーンのリハーサルに意味はあったんでしょうか」

田島がキヌ子を力尽くで押さえようとするシーンも、「ラブシーンだと思って行ったら、現場にアクション部がいてビックリした」(大泉)というほどの激闘。ドレス姿のキヌ子が田島を追いかけ、土手を転がり落ちるシーンも1カットで、成島監督の妥協なき粘り強さが印象的だったと声をそろえる。

大泉「ある程度のスピードを持ってカメラのいい位置に転がっていかなきゃいけないから、相当難しいですよ。何回土手を落ちたか分からない」
 小池「ビスチェだったから、転がる時にオッパイが飛び出したらどうしようって考えていたのを覚えている。それでNGだったら最悪じゃないですか。いろいろなことを考えなきゃいけないので、大変でした(笑)」

これには大泉が、たまらず大爆笑。それでも互いに、そのシーンで撮影を終えられたことで得られた達成感を強調する。

小池「監督は簡単には褒めてくれない方なので、『うん、良かったよ』という言葉で過去の10年間がフラッシュバックのように巡りました。監督に(主演として)撮ってもらうことがひとつの大きな目標だったから、ちょっと夢見心地な燃え尽き症候群みたいになりました」
 大泉「映画の撮影が改めて楽しいなと思わせてくれました。監督がしっかりとしたビジョンを持っているので、付ける演出でどんどん面白くなっていくのでそれは見事だなと。やっぱり総合芸術だと思いますね」

それでは、双方の役に対してはどのような思いを持っていたのか。

大泉「彼女の強さ、自分というものをしっかり持っているから妙な誘いにも乗らない。それでいて男性に対してうぶな、ツンデレなところもかわいいなと思います。知らず知らずのうちに魅かれていくんだろうなというのは分からなくはない」
 小池「魅力的でしたねえ。つかみどころのない感じで、真意が見えないところに女心、母性本能をかき立てられました。気づいたら自分が横にいてあげなければダメじゃないかという気持ちにさせるのは、大泉さんが本来持っているチャーミングさとピッタリはまったからだと思います」

さまざまな設定で何度も見てみたいと思う、名コンビの誕生である。

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