「完璧、などないのですが」完璧な他人 xmasrose3105さんの映画レビュー(感想・評価)
完璧、などないのですが
上手くまとまったという印象。
内容は、家族ぐるみで付き合いのある旧友同士の集まり。外面と本音。違うのが人間でしょ?というノリの、割と定番な、スマホを介して秘密を暴きあうというストーリー。他人の秘密は蜜の味?いや他人事じゃない...というブラックユーモア満載の仕上がり。
でもそれも空想?いや現実?というオチが付きます。
パラレル・ワールド的な「もしも〇〇だったなら」という描き方で、日常の一枚下にある本音が、ザ・人間!という下衆さで描かれる。ゴシップ好きな人は気軽に楽しめると思います。エンディングあたりでテーマが。なるほど。人には三つの顔がある、と言いたかったのか。公的な顔、私的な顔、秘密の顔。「完璧な他人」と、その人のスマホの中味は、一致しない。
ただこのエンディングだと、現状維持の肯定だけで終わってしまうかも(かなり厳しくてすみません)。
「だから秘密は隠しておくべき」的なメッセージ、それならすでに多くの人はそうしていると思う。「見ざる言わざる聞かざる」の三猿を知る日本人には、わざわざ暴きあうのは胸が重く...粋じゃない、少し寂しい。
秘密、そしてその下に潜む本音。本音のさじ加減は、いつも難しい。嫉妬やコンプレックスや欲望など、珍しいことではない。ただ、それ本来は自分の課題。でも他人との比較で生まれるので、どうしても多くの人が相手に矛先を向けてしまう。特に近しい関係の友人や家族。大切な存在が、自分に痛みを与える相手だと愚かにも思ってしまう。
でも自分に痛みや弱みがあるように、相手にだっていろんな痛みや弱みが当然あるのだ。そのあたりまえを、思い出せるか。
思い出す前に、人はすぐ忘れる。それでまた、変わらず進歩もなく人生が続いていく...
うーん、時代だと思いますが、なんだか最近とみに、優しさより完璧や強さがデフォルト?と感じることが多い。無知や無責任が、重大な過失になる。まさにタイトル通りの、「完璧な他人」を強いられている。監視、ミスを暴いての社会的制裁。見える化。痛みや弱みがないフリを、お互いしないといけないのでしょうか。もー、しんどいわ。
ズッコケや隙を、明るく笑い飛ばせなくなってきた。
「完璧、な訳ないじゃん、完璧度合いを互いにはりあう?いやいや、それほんとに目指したい関係ですか?!」と言いたくなるのは、わたしだけじゃないだろう(と勝手に信じている)。
本作は、すでに世間がそうなっている(完璧を張り合う世界)と作り手は思っている証。そんな世間を風刺したいのかな。わたしは、まだギリギリ拮抗していると感じているのですが、楽観的すぎるか。
エンディングは、やや風刺の刺さりが甘くなってしまったかも。原作があるそうなので致し方ないか。
夫婦も友情も、予定調和を目指した方が無難、でなきゃこの映画みたいな修羅場が繰り広げられますよ。あなたはそれに耐えられますか。というメッセージだけが、なぜか心に残ってしまった。
予定調和でもいいが、そこに愛はあるか?嘘でも本音でも、愛が生まれるのにどう効くのか。それを観たいのです。
予定調和に限界がきた時。覚悟を決めて「完璧な他人」の上っ面を自分で引っぱがせるか。失うものも多い。とても勇気がいる。でも「完璧な他人」より、「不完全な自分」を選択できたら、魂も少し成長できる気がする。