劇場公開日 2019年11月15日

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「エネルギッシュな新聞記者」i 新聞記者ドキュメント バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 エネルギッシュな新聞記者

2025年7月13日
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鑑賞方法:映画館

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東京新聞の望月衣塑子記者を題材とした森達也監督によるドキュメンタリー映画。同年に公開された劇映画『新聞記者』のプロデューサーが同時企画した作品だそうだ。

菅官房長官(当時)の記者会見で舌鋒鋭く迫って一躍有名になった望月記者だが、社会部の遊軍で政治部の記者ではないらしい。だから政治記者の慣例みたいなものに縛られず、記者クラブ的な馴れ合いにも与せず切り込んでいけるんだな。このあたり、かつての本多勝一や筑紫哲也(政治部出身だが)に通じるところがあるような気がする。もちろん本人の資質や性格によるところも大だろうし、記者として当たり前の仕事をしてるだけでもあるんだろうが、そういう人が浮き上がってしまうっていうのがなんとも。あと望月さんは悪い意味での女性的な湿っぽさがない。メソメソしたり涙を見せたりしないのだ。

辺野古基地移設問題、伊藤詩織さん事件、森友・加計問題、宮古島自衛隊弾薬基地建設などを取材・追及するエネルギッシュでパワフルな望月の記者活動を撮影しつつ、ある意味それを狂言回しとして日本の政治状況、メディア状況、社会状況を描き出したドキュメンタリー映画でもあった。伊藤詩織、籠池夫妻、前川喜平、金平茂紀なども次々登場していて、その度に、おお、となった。

しかしまあ菅官房長官とその報道官の望月記者に対する質問妨害はひどい。完全に狙い打ちの低レベルな嫌がらせだ。官邸前の公道でも望月記者と森監督だけがなぜか警察に度々通行を止められたり、カメラ撮影をやめさせられたりしてる。しかし結局はこれは我々1人1人が考えなければならない日本社会全体の問題なのだろう。

同時になんというかエンターテイメント映画にもなっていて、単純に映画としてもとても面白かった。パワフルな映画だ。ラストでタイトルがなぜ『i』なのかの意味がわかって、なるほどそういうことかと感心した。

バラージ