「ラクガキの夢と、鋭い社会批判の両立に成功した作品。」映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
ラクガキの夢と、鋭い社会批判の両立に成功した作品。
本作は劇場版としては28作目となる作品です。パンフレットで野原家の声優さん達が語っているように、原点回帰を強く意識した作品作りとなっています。それはクレヨンが重要な役割を果たすことからも明らかでしょう。だが単なる回帰指向ではなく、『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001)以来続いている、大人(親世代)を強く意識した物語構成はしっかりと引き継いでいます。
冒頭、画面一杯に踊るラクガキ達は、多くの幼稚園生が実際に描いた作品とのこと。観ているだけで楽しくなります。ラクガキングダムは登場時から抜き差しならない状況である事が分かりますが、それでもどこかのほほんとしています。
その一方で、本作の視点には強い社会批判が含まれています。過酷な児童労働やバッシングを連想させる場面が挿入されており、ブラックジョークとして受け取るにはあまりにも直接的では…、と凍り付いてしまうこともしばしば。
さらにしんちゃんの行程でなんとなく湯浅政明監督版『日本沈没』(2020)を連想してしまい、これはとんでもない方向に話が進むんでは…、と不安になりました(幸いこの予感は外れたんですが)。
相変わらずそれぞれの登場人物の特徴付けが見事で、しっかりと見せ場が用意されている点はさすが。富永みーなさんはやはり素晴らしい安定感でしたが、何役も声を使い分けていたリンゴちゃんの仕事もすごい。そして真珠の形を基調にしたというラクガキングダムの造形も見応えがあります。
パンフレットは情報盛り沢山で、こちらも読み応えが十分あります!
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