「これは俺のための映画だ」映画大好きポンポさん といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
これは俺のための映画だ
この映画の一番良いところは、映画の尺が90分なところ。
2021年の公開時、映画ファンの間ではめちゃくちゃに評判が高かった作品。スケジュールの都合で劇場で観ることが出来ず、なかなかサブスク解禁もされないし近所のTSUTAYAにもDVDが並ばなかったため、観たくても観れない状態が続いていました。この度ようやくネットフリックスで配信が開始されましたので、ずいぶん遅れての鑑賞です。
結論ですが、めちゃくちゃ良かった!!!!!!
これでもかと映画的カタルシスを詰め込み、映画あるあるを詰め込み、アニメでしかできない映像演出を詰め込んだ本作。2021年に観ていれば、年間ベストに名を挙げていたかもしれないほどの「映画好きのための映画」でした。キャラクター造形が萌えアニメっぽいので敬遠する人も少なからずいるかと思いますが、映画好きなら観ておいて損は無い名作です。
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天才的映画プロデューサーのポンポさん(小原好美)のアシスタントとして働くジーン(清水尋也)は、映画監督に憧れながらも、自分には無理だと諦めかけていた。そんな中、映画の予告編を製作するように指示されたジーンは、予告編製作の中で映画作りの楽しさに目覚めていく。予告編の出来が認められたジーンは、ポンポさんの新作映画『MEISTER』の監督に任命される。突然の監督就任で、ジーンは映画作りに奔走することとなる。
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映画制作を描いた映画というのは意外と多くて、松本壮史監督作品『サマーフィルムにのって』とか、私は未鑑賞ですが1963年製作のフィデリコ・フェリーニ監督作品『8 1/2』とか。
劇中に登場する映画あるあるとか、映画とはこうあるべきみたいな格言とか。そういうのをしっかり有言実行していてクオリティが高くて楽しめます。キャラクターの言葉のパンチラインや、王道だけど盛り上がる映画的カタルシスを感じる展開。映画好きがハマる映画だったと思います。
本作は映画制作の過程や主人公ジーンの成長や葛藤がしっかり描かれているのが素晴らしかったと思います。特に印象に残ったのが、最初は映画監督に指名されてタジタジだったジーンが、同じく映画初出演で緊張しているナタリーに対していった台詞ですね。「正直逃げたいけど、今まで逃げて逃げてここにたどり着いた。これ以上逃げられない。」「死んでも映画を完成させる」という彼の言葉から、背水の陣で映画制作に挑む彼の覚悟が見て取れます。
そして、本作のクライマックスにあたる編集シーン。編集というものが、ここまで心身を削る作業だと言うことは知りませんでした。でもよく考えれば、映画制作の裏話なんかを映画パンフレットなんかで読むと、撮影のクランクアップから映画の公開まで一年以上かけている映画が結構あるので、その期間を映画編集に費やしていると考えると、映画制作のメインは編集と言っても差し支えないんじゃないかと感じます。そんな映画制作の編集作業をここまでスタイリッシュに且つヘヴィーに描けているのは素晴らしかったですね。特に、映画撮影の合間にみんなで意見を出し合って奇跡的に撮影できた嵐のシーンや、ナタリーが初めて撮影したシーンを容赦なくカットする鬼気迫るジーンの描写は本当に素晴らしかった。
全編通して無駄がなくブラッシュアップされた映画でした。映画がこんなに洗練されてスタイリッシュなのに長々とレビュー書くのもよろしくないので、これくらいにしときたいと思います。オススメです!!