「軍事技術の恐ろしさに慄える」エンド・オブ・ステイツ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
軍事技術の恐ろしさに慄える
シリーズらしくそこかしこに前の作品を思い起こさせるシーンがあったが、過去の作品の知識がなくても十分に楽しめる。当方も過去作品は観ていない。
作品紹介にあるように、モーガン・フリーマン演じるトランブル大統領が大量のドローンによって襲われるのだが、その部分を何気なく読み飛ばしていた。映画を観てはじめて、実際のドローン攻撃がどれほど恐ろしいかを理解した。
コナミのビデオゲームに「メタルギアソリッド」のシリーズがあって、ゲームの中にPMCと呼ばれる民間の軍事会社が登場する。武器と傭兵を販売、レンタルする会社で、巨大な戦闘ロボットが主人公スネークの行く手を阻む。
このゲームよりもずっと以前、多分100年くらい前から、SF作家や漫画家をはじめ、いろいろな人たちがロボット兵士の登場を予言していた。鉄腕アトムだってそのたぐいのひとつだ。
ロボットというと、つい人型ロボットを想像してしまうが、自動車などの製造ラインで活躍しているのはユンボーを小さくしたみたいなアームだけのもので、目的に対して最適な形のロボットになっている。そしてその究極の形のひとつがドローンである。
科学技術の発達は常に軍事開発が先導してきた。ドイツのフォン・ブラウン博士が開発したV2ロケットがその後の宇宙ロケットに繋がったことは誰もが知る有名な話だ。軍事用のドローンはとっくの昔に作られている。最新の軍事技術は極秘情報として開示されないだけだ。ちなみに民間軍事会社PMCも実在している。
さて本作品は予告編の森の爆破シーンが最も痛快な場面ではあったが、それ以外にも見所が多くあり、退屈することなく鑑賞できる。特にモーガン・フリーマンの場面では、その演技だけですべてを納得させるようなところがあり、思わず唸ってしまった。
ジェラルド・バトラーは「ハンター・キラー」の決断力のある艦長の役もよかったが、アクションがある本作品の演技は、中年男の悲哀と責任感が滲み出ていて、味があった。
総じてテンポのいいストーリーで、気持ちよく鑑賞できる作品だが、ドローンの恐ろしさだけはいつまでも残っている。既に軍事供用されていると思うと、空恐ろしい。反体制のデモは警官隊が対応するのではなく、ドローンが対応する時代が来ないとも限らないのだ。