「細かいシャレに丁寧な説得力を滲ませるフレンチバカ映画の傑作」シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション よねさんの映画レビュー(感想・評価)
細かいシャレに丁寧な説得力を滲ませるフレンチバカ映画の傑作
シティーハンターこと冴羽遼と香の元に舞い込んだ仕事の依頼はその香水を嗅いだ者をたちまち虜にするという“キューピッドの香水”を悪の組織から守ること。依頼主がオッサンなので速攻断ろうとした遼だったが、試しにとオッサンがつけた香水を嗅いでしまい・・・からのドタバタアクション。
監督であるフィリップ・ラショー渾身の企画とは聞いてましたが、これは漫画の実写化としてまさに完璧。駅の伝言板による仕事依頼、香が振り回すハンマー、延々と繰り返される下らない下ネタ・・・同じことを邦画でやったらスベること間違いなしのド直球な演出に何ら違和感を感じないのは、照れや衒いが一切ないからではないかと。元々ラテン諸国では日本の漫画やアニメ、特撮が昔から根強い人気がありますが、子供の頃から抱いてきたその余りあるリスペクトをそのまま表現することに何の躊躇いもない、邦画でこの域に達した映画は『電人ザボーガー』くらいじゃないでしょうか。恐らくは世間的には失敗作と認識されているジャッキー・チェン版『シティーハンター』も参照していると思われ、照明の当て方やアクションのテンポにそこはかとなく香港映画の香りが漂っていますし、そんな懐古趣味に留まらず『ハードコア』みたいなPOVアクションもサラリと挿入しているし、さりげないダンスシーンでの流麗なカメラワークは『トップ・シークレット』のようなオフビートな優雅さも備えています。サントラのチョイスも絶妙で、80’sフランス映画のアレが流れた瞬間には鳥肌が立ちました。もちろんエンディングに流れるアレには思わず涙が溢れました。帰り道ではついサビを口ずさんでしまうことでしょう。吹替版しか上映がないのが残念、字幕版でも鑑賞したい傑作コメディです。