劇場公開日 2021年5月28日

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「こんな日だから絵を描く」HOKUSAI よしえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0こんな日だから絵を描く

2021年6月7日
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鑑賞方法:映画館

絵師・北斎の人生を柳楽優弥と田中泯が演じた映画。全4章構成で、前半2章を柳楽が、後半2章を田中泯が演じている。
第一章では歌麿・写楽・北斎の三者三様が、第二章では馬琴との才能の才能のぶつかり合いが、第四章では戯作者柳亭種彦の死に絡んで老境に至った北斎の魂の有り様が、それぞれ描かれているが、第三章の、特にいわゆる北斎ブルーとも呼ばれる藍との出会いのシーンなど、もはや顔芸かと言っても過言ではない強烈な表情をいくつも重ね、いかにその出会いが画期的であったかを描いていて、流石に代表作と目される「富嶽三十六景」誕生のシーンだけに、画も演技も熱が籠もっていた。
ただ、たしかに良くできた映画だとは思うのだが、相手が北斎というメジャークラスな人物であるだけに、色々工夫はあってもやや通り一遍なストーリー展開と描写に留まったきらいはある。北斎の奇天烈さに負けないくらい奇想天外破天荒なストーリーが見たかったというのは贅沢にすぎるだろうか。
ただ、作中で2度語られる「こんな日だから絵を描くのだ」という北斎の台詞は、心に留めておきたい良い言葉だった。なんとなくではあるが、北斎ならたしかにそんなことを言いそうではある。

よしえ