劇場公開日 2020年1月17日

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「少年の淡い憧れと恋心の美しさ、戦争や迫害のバカらしさ」ジョジョ・ラビット ともさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5少年の淡い憧れと恋心の美しさ、戦争や迫害のバカらしさ

2023年6月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

戦地が自分のすぐそばに迫ってくるまで、街ややりとりは戦時下とは思えないくらいポップに描かれている。
ユダヤ人の少女との出会いからの展開も、まるでおとぎの国の住人に出会ってしまったかのようなどこかほんわかとした空気感すらある。淡い恋心の描写も、蝶で描かれたりしていて、子どもらしくとても愛らしい。もちろん、警察が家に来て…のところのシーンはとても緊迫感があって心臓バクバクしたけど…!笑

終盤の合戦のシーンが結構良かった。自分もジョジョと一緒に、地獄の世界の中にいるかのような感覚になった。スローになる演出が効果的だったと思う。
軍事訓練も、ヒトラーの存在も、なんとなく絵空事のようだったし結構ポップだったので、見知った顔が次々と死んでいく現実を一気に見せられて、やっと戦争というものの実態を見た気がした。ジョジョもあれをみて、戦争万歳なんてとても言えなくなったのではないかな。
ホロコーストのことも、ジョジョにとっては絵空事や御伽話のような話だったけど、自分の目でみて実態がわかってたら、「ホロコースト万歳」なんてとても言ってられなくなったよね。

「制服を着ていないと仲間に撃たれるから」とドイツ軍の制服を着て、ドイツ軍が降伏したあとは「ここから逃げろ」とドイツ軍の制服を脱がされたのが印象的だった。
一瞬で立場が裏返る滑稽さというか、争いの馬鹿らしさみたいなものを感じた。
ユダヤ人かそうじゃないかなんて、たったそれだけの違いで虐殺までに至る、馬鹿らしさ。

私にとっては、ヒトラーってもちろんそんな身近な存在ではないけど、ジョジョや当時を生きたドイツの人々は、いつも眼にするし意識しているとても身近でクールなら存在だったんだろうなぁと。街の人やジョジョが、日常会話の中でヒトラーの名を出すのが新鮮で、そんなに当時の日常を垣間見れた気がして、面白かった!

とも