劇場公開日 2020年1月17日

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「ジョジョは大人の男になれましたね」ジョジョ・ラビット といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ジョジョは大人の男になれましたね

2020年2月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「ナチス思想を信仰する少年が主人公」という前情報だけ知っている状態で鑑賞。日本でもナチスについてはあまり知らない人が多いですが、海外ではナチスに対する批判的な意見が多くて話題に出すのも憚られるそうです。日本と諸外国とのナチスに対する意識の違いの要因としては日本が戦時中はドイツと友好国だったからという歴史的背景があるんだと思います。

映画に話を戻しますが、ナチス信仰の少年ジョジョが主人公でありながら作品自体は非常にコミカルで面白く鑑賞できますし、映画の後半ではジョジョがナチス思想に疑問を持ち始めるため、この映画自体はむしろナチスに批判的な主張が盛り込まれているように感じます。映画序盤のジョジョは受動的に刷り込まれた知識だけを盲信する子供の状態でしたが、後半では自らが見聞きしたり体験したことから能動的に考え行動できる大人の男になりました。ナチの思想へのアンチテーゼを唱えつつ、「ナチの思想からの脱却」を通じて一人の少年の成長を描いているのは上手い演出だったと思います。

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第二次世界大戦中のドイツ、10歳の少年ジョジョは「空想上の友達がヒトラー」というくらいナチス思想を盲信していた。一人前の兵士になるために青少年集団「ヒトラーユーゲント」に参加するも、ウサギを殺すように命じられたのに心優しいジョジョはそれができず「ジョジョラビット」という不名誉なあだ名をつけられたり、手榴弾の投擲訓練で大怪我を負ったりと散々な目に遭う。実戦に向かないジョジョは兵士でなく街のポスター貼りなどの軍務の雑用をしながら過ごしていたが、ある日自宅の亡くなった姉の部屋に隠し扉があるのを発見し、扉の中で母親が密かに匿っていたユダヤ人の少女と出会う。
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この作品は第92回アカデミー賞の脚本賞に輝いた作品です。当然ながら、脚本が本当に本当に素晴らしい。脚本賞に選ばれたと知っても特に驚きはありません。「そりゃ脚本賞取るよね」と思いました。それくらい、随所に散りばめられた伏線やユーモアや細かな言い回しの妙が光ります。

また、その脚本を最大限に際立たせる映像演出も素晴らしかった。
多くのシーンで「主人公ジョジョの視点の高さのカメラアングル」が使われており、これが主人公ジョジョの目線から見た戦争とナチスを描く本作に絶妙にマッチしています。また、この映画の一番の衝撃的シーンでもある「お母さんの靴」のシーン。直前に登場したジョジョがお母さんと一緒に歩くシーンと全く同じ構図なのに、ここまで印象が変わってしまうとは。思わず息を呑むような恐怖感と絶望感がありました。

靴紐も結べなかった一人の少年が大好きな女の子を守れる勇気ある一人の男性に成長する物語として非常に楽しむことができました。戦争映画ですがグロテスクな戦争シーンはありませんし、ナチスを題材にした映画ですがナチスを礼讃するような表現も(皮肉をこめた表現を除いて)出てきません。映画の題材を見て敬遠している方でも楽しめる内容になっていると思いますので、あらゆる人にオススメしたい映画です。

といぼ:レビューが長い人