「不思議な映画だった。そして、多分、凄い映画だった。」ジョジョ・ラビット CBさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議な映画だった。そして、多分、凄い映画だった。
これは、不思議な映画だった。そして、多分、凄い映画だった。
是非、みんなに観てほしい。観るべき映画だと思う。すごく笑えるとか、楽しいとか、涙ぼろぼろってわけではないけれど、普通に観られて、「あれ?」と、ちょっとだけ考えたくなる映画って、あまりないから。観て、いろんなことをレビューしてほしい。
ちゃんと面白いので、ご安心ください。
自分も、評価が高いから観に行ったのだけれど、これから観に行く人は、何も見ずに、まっさらな状態で行くのが、いいかもしれません。この映画は、先入観がないほど響く気がする。
-------自分としても感想は残しておきたいので、以下感想です。ネタバレはないけど、私は、最初に書いたように、まっさらな状態で観た方がいい映画だと思うので、まだ観てない人は、観てから読むことをお勧めします。
空想上の親友ヒトラー、母がかくまう少女エルサ。この二人が、10歳の主人公ジョジョに、さまざまなことを話してくる。前半は、ヒトラーが、後半はエルサが。
ただ思い込んでいただけのことと、自分で考えたこと。自分にとって、どちらが大切なのかを、ジョジョが心から、知る。その過程を、俺たちは、この映画で観る。
終盤近く、久しぶりにヒトラーは登場する。ジョジョは、そこでのやりとりで、先ほどの二つのどっちが大切かを、しっかりと確認する。
途中で語られる、リルケの詩の一節「全てを経験せよ、美も恐怖も。生き続けよ、絶望が最後ではない」との言葉が、本作の中心にあるのだろう。
「ナチスは悪い」が主題ではなく、ただ思い込んでいたジョジョから、自分で考えて判断するようになったジョジョへの成長に、観ているこちらの心が震えるのだろう。おめでとう、ジョジョ。だから靴ひもも結べるようになったんだね。
ナチスに傾倒するジョジョを(もちろん、よくは思わないが)決して頭ごなしにダメだとは言わずに、やりたいようにさせている母ロージー。彼女がジョジョに「ナチスなんかの真似をするな」と言わないのは、時代が言えなくさせているのでは決してなく、「.今はそれが彼の考えなんだ」と、小さな彼の考えを尊重しているからだろう。凛々しい生き方だ。「我が子を導く」と言っても、「正しい(と言われている)考え方へ、導く」のか、「自分で考える人間に導く」のかがあるのだということが、この映画でわかった気がする。
「まだ10歳なんだから、木に登ったり落ちたりしている方がいいのよ」という台詞を始め、ジョジョをとても愛していることがわかる演技が素晴らしい。
先の三人以外にも多くの人がジョジョの周りにいる。終盤の大尉の行動には、きっと心を揺さぶられるよ。彼以外にも、しっかりと特徴づけられた出演者がジョジョに関係してくるのだが、なんて言うかなぁ、観ている側からは、ジョジョとその他、というように見える。ジョジョと "彼に影響する周囲" と言った方がいいかな。
だから「ジョジョの物語。彼自身の物語」だと際立っているのだろう。そういう点や、しっかりした戦闘シーン、ビートルズの熱狂で始まり、デビッドボウイの沈思黙考的な曲で終わる点、とさまざまな点で、よくできた映画だなぁと感心する。
自分も、しっかりと考えて、ウサギの勇気を持って生きていこう。
---- 2020/5/31 追記
エルサも、(圧倒的な被害者ではありながら) 言動にユダヤ人的選民思想もあり、誰でもそういうことがある、と表現されている点もいいよね。
私が言葉に出来なかった事や気付けなかった事が沢山詰まっていて、そう!それ!と思いながら読ませていただきました。
あの母に惹かれたのは押しつけの無い愛に心を打たれたからなのだと、このレビューを読んで気付きました。
これも、いいところ、突きますね。大好きな映画だし、胸を張って皆に薦められる映画だと思ってます。
この年のアカデミー作品賞は言わずと知れた「パラサイト」でしたが、俺の心の中では、本作でもアリだよなぁ、と思うくらい大好きかつ評価高いです。
CBさん、こんばんは!
私はこの映画がコミカルな要素のある映画とは知らなくて観たので
凄く新鮮に感じました。監督がヒトラー役という事も皆さんのレビューを拝見して知りました😅
とても映画好きとは言えないですね、お恥ずかしい💦
辛い哀しいだけの戦争映画ではなく、ホントにいい映画でしたね🥰
素晴らしいレビューですね♪
ナチスじゃない、ヒトラーでもない、この男の子の心の変化がメインのお話。成長を靴紐に置きかえている所や架空ヒトラーなど様々な面で美しく見応えのある映画ですよね。
初めて他の方のレビューにコメントするのですが、読ませていただいて、すごくこの映画の特徴を捉えておられると感嘆致しました。上手く言葉には出来ないけれど私自身がそう思っていたことを表現しておられるなぁ、と。ありがとうございます。
共感&コメントありがとうございます。
こちらこそ、CBさんのレビューをいつも楽しく読ませてもらって、「そうそう!それが言いたかったんだよ!」って感じで、共感をポチってます。
CBさんへ
コメントありがとうございました!
ボウイのヒーローズが使われたのには理由があると思うんです。録音されたのがベルリンってのもありますが、歌詞の中で繰り返される" just for one day"。んで最後の方で”Maybe we're lying, then you better not stay”と続きます。二人の未来を暗示してるんだと思うんです。やっぱり、音楽の使い方は最高だす!
反ナチ映画はハリウッドには溢れるほどあるので、視点を変えたり、ジャンルさえも変えたりしなければ今後の良作が生まれませんよね~
それを監督は見事に仕上げたと思います!
監督のセンスとジョジョくんがとても良かったから評価されたのだと思います。
とてもありがたいコメント、ありがとうございます。
翌日はリチャード・ジュエルを観たので、『ひとりサム・ロックウェル特集』になりました。
根拠のない極めて個人的な感覚ですが、ショーシャンクの空に、ミスティックリバーの頃のティム・ロビンスの存在となんだかダブるところがあります。