サラブレッドのレビュー・感想・評価
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実力派が織り成す先の読めない心理劇。振り回され役、イェルチンの妙演も光る
実力派の若手女優を親密に対峙させ、冒頭から屋敷内をカメラがさまよい、背後では和太鼓を思わせる劇伴が鳴り響く。はて一体、どんな物語が展開していこうというのか。一寸先も読めない。
クック演じる役柄に関して言えば、そもそも感情というものを持たない。それゆえ何をしでかすのか分からない恐怖がある。対するテイラー=ジョイは、感情的な性格ではあるけれど、その表情は時折、氷のように冷たく光り、予測不能性はクックを超えるほど。このように我々は、彼女たちが何を考えているのか、今どんな気持ちなのか、ほとんどわからないままこの心理劇に深く深く潜り込んでいくわけだが、そこから少しずつひだをめくるように現在地をあらわにしていく筆致が、なかなか魅力的だ。
そしてアントン・イェルチンが、出演時間は長くないにしろ、確実な印象を残す。彼の存在感によって本作はより人間的になり、観客の感情の入り込む余地をもたらしてくれた。
ごめんなさい。よくわからない
予備知識0で鑑賞。なかなか物語は動かないし、ラストはアメリカの警察ってそんなアホなの? というオチ。かわいらしい女優さんを写真集的な目的で観る人以外、どう楽しんでよいのか果たして。他の方のレビュー巡礼に行きます!
2人の選択にそれで良いのか…と
淡々とした感じでストーリーが進みますが、常に緊張感があり楽しめました
アマンダとリリーの2人はその選択をする必要はあったのかと思いましたが、感情がないというアマンダは本当はリリーと友達でいたかったからそうしたのかも
リリーは母のためというのもあったのかもしれないけど、結局は自分のためであったと思えるし、心が破綻してるのはアマンダよりリリーの方かもしれません
元々そうだったのか、アマンダの影響なのか、継父が邪魔だったのか
元々そうだったように思えてしまいます
禿げ散らかしたイェルチン
義父を殺したい動機がイマイチ腑に落ちない、殺したい程に酷い男だとは思えず、何ら感情を持ち合わせていない究極な人助け、衝動的でもなければ計画的にも破綻している願望は唐突でありがら見事に達成。
ガキ共にナメられるうだつが上がらないチンピラ役のアントン・イェルチンの情けない姿が切なくなる、アニャ・テイラー=ジョイを見てるだけで飽きはこないが退屈感は否めなく、あの娘は『グッバイ、ケイティ』の女優サンだったのネ。
美少女には気をつけろ
再会した幼なじみ、一人は金持ちのお嬢様(アニヤ・テイラー=ジョイ)だけど継父を憎んでいる。
一人は変わり者(オリビア・クック)で個性的すぎるかも。
二人は継父を殺すことにして、ちょっとアホな麻薬の売人(アントン・イェルチン)を利用することに。
美少女二人を眺める作品かな。
おーまじかー
ラスト、これでいいのかよ
と思いつつ、こうなるしかないか、とも思う
にしてもオレンジジュースのシーンは
痺れた、、、
きっと忘れられない映画に
なるかもしれない
ただ音響?音の入り方とか
若干くどくて、変な演出〜と思っちゃうところがある
「ゴーストワールド」のオフビート感を再現
高校を卒業する前後の社会に適合できない少女2人を描いた映画といえば、「ゴーストワールド」が思い浮かぶ。そこに登場したゾーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソンに、やはり不適合な成人男性スティーブ・ブシェミの3人組の、この社会の「どこか違う」感に訴えてくる笑いと悲哀は、深く印象に残っている。その印象をひと言で表現すれば、<オフビート>ということになるだろうか。
本作「サラブレッド」は恐らくその焼き直しだが、とてもよく出来た焼き直しとなっている。「ゴースト~」3人組は、ここではオリヴィア・クック、アニャ・テイラー=ジョイ、アントン・イェルチンに置き換えられ、三者三様の社会との不適合ぶりから生まれるオフビート感を味わわせてくれる。
表題「サラブレッド」は、馬のエリート転じて富裕層のドタバタ劇であることと、役に立たなくなった馬をさっさと屠殺することの二重の意味を持っている。
アマンダ(オリヴィア)は家の持ち馬を、骨折して気の毒だという理由で、非常に残忍な方法で屠殺して問題児扱いされ、本人も「自分には感情というものがない」と考えている。
リリー(アニャ)はいい学校に入学して優等生ぶってはいるものの、実際は富豪の継父のカネによる裏口入学で、ネットをパクったレポートを提出して退学になった問題児であり、継父からはことあるごとに叱責されている。
二人は幼馴染だが、再会したら話は自然にリリーの継父殺害計画に展開する。そこに登場するのがティム(イェルチン)。彼は成人女性に相手にされず高校生をレイプした前科があり、今はヤクの売人だが、大人相手の売人にはなれず高校生相手に小銭を稼いでいる絵に描いたような小者。「将来はこの界隈を仕切る売人になる」が口癖である。
社会的不適合の少女2人が、腰抜けの小者に殺人依頼をするわけで、その状況だけでも面白いのだが、このティムはいざという場面で、案の定、尻尾を撒いて遁走してしまう。
そのままではリリーは問題児を集めた学校に転学させられ、卒業後は継父の支援もなしに放り出されてしまう。そこで彼女は、深夜独りで継父を殺害し、睡眠薬入りのカクテルで意識不明にしたアマンダに罪を着せてしまう。これはとてつもなくシリアスな話なのだが、実はアマンダはそれを承知でカクテルを飲み干すのである。
リリー「あんた感情がないんでしょ? だったら幸福にもなれないし、生きる価値なんてないんじゃない?」
アマンダ「考えたことがなかったけど、価値ないわね。これ、飲んじゃうわ」
そして、継父殺害は成功、リリーによって血塗れにされたアマンダが犯人扱いされ、殺人犯として刑務所にぶち込まれるが、「ここにはいい人が多いし居心地も悪くない」という手紙をリリーに送ってくる。
腰抜けティムはこの一件に懲りて駐車場の係員となって働いているが、そこにリリーが高級車で乗り付ける。腰の据わった犯罪者リリーが腰の引けたティムを揶揄い、ニッコリ微笑んでメデタシメデタシで終わるのだった。
こうストーリーを書いていても、この映画の面白さは到底伝わらない。結局、本作の面白さは、状況や会話の唐突さ、意外さ、ズレまくったタイミング等々にあり、それらが「オフビート」感を醸し出しているのである。
ただ、「ゴーストワールド」が深い悩みを抱えた不適合少女を来世行きのバスに乗せて、最後に悲哀を残したのに対して、本作は継父殺しの少女が誰に憚るところなく大金を使いたい放題でニンマリしているところに視点の違いがあり、残す印象は本作の方がかなり軽い。それは映画の出来不出来というより、好き嫌いということになるだろうか。
以上の本筋とは別に、本作はいろいろなコスチュームを身に纏ったアニャの魅力を見せつけるという側面があって、彼女のファンにはとても楽しい映画になっている。監督、わかってるじゃないかw
淡々と…
アマンダ、リリー共に無表情で、乾いた会話。次第に本性を表すリリーの方が怖い。復讐のシーンも見せず、あまりにも淡々と物事が進んでいくので。ストーリーに強弱も感じられず、共感出来なかった。継父も殺すほどかという点も感情移入できず。罪を擦り付けて平気だし、双方壊れてる。
論理性に欠ける
え…頭おかしいが過ぎる…
折り合いの悪い義父を元々嫌悪してたけど、
通ってた名門校辞めさせられて
問題児の通う学校に行かせられることになって
限界迎えて他人に殺人やらせようとした?
その猟奇や展開にドキドキするのを楽しむ映画?
論理的じゃない、穴があり過ぎる、
コンセプト先行で詰めが甘い
それが気になってしまうと楽しめないのかもしれない
警察が正しく捜査して真犯人が捕まる
その後の裁判の様子や世間の反応、
それに対する二人の言動、
そういうところまで描かれてたら楽しめた気がする
体内から睡眠薬の残りが確認されるだろうし
服についた跳ね返りの血痕の位置や量に
違和感持たれるだろうし、
犯行時の服やゴム手袋を捨てたゴミからも…
いくらでも事実追えるだろうに…
警察の捜査がザルすぎる
愛馬を失うことで弱ってしまうであろう母を想って取った行動、愛馬を苦しめないようにとの想いからの行動、その行為を振り返って「長年連れ添った自分で良かった」て言う子が。感情がない、なのか。とか。
全体的にご都合主義の創作物って感じ。
サラブレッド、というタイトルの意味も
私には難しかったな…
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あらすじ覚書
感情欠落少女とサイコパス少女が
ヤクの売人利用して
サイコパス義父を殺そうとするも失敗。
サイコパス少女が感情欠落少女に睡眠薬飲ませて
その間にサイコパス義父を包丁で刺し殺し、
感情欠落少女に罪をなすりつける話。
感情欠落少女は感情がないから人生に価値はない、
だから罪を被せてもいいって思考のサイコパス少女、
それを認める感情欠落少女。
ヤクの売人は以前に未成年者強姦で逮捕歴あり、
次は軽犯罪でも捕まれば15年は刑務所暮らし。
それを分かって少女たちは
売人から薬を買う際の音声を録音、
それを使って殺人しろと脅しをかける。
売人が言いなりにならないと分かったら頭殴って、
出血するほどの怪我を負わして服従させようとする。
サイコパス実母は義父にベタ惚れ、
なんでも義父の言いなり。
サイコパス義父はなぜそこまで?ってくらい高圧的。
感情欠落母は空気。
空っぽのような、煮えたぎるような。
「私には感情が無い」と嘯くアマンダと、キレイに整った外面の底に闇が渦巻くリリー。
主人公2人の対比から、物語は思いがけない方向へ…。
大きく捉えればイニシエーションものなんだろうし、
揺れ動く心情とか人間関係を描いたスリラー作品でもあるのかな。
リリー役のアニヤ・テイラー=ジョイが本当に美しくって、
時に人間的というか、しっかり血の流れる生き物に感じられたり
かと思えば人工的な、陶磁器とかある種の工芸品のように感じられたり。
アントン・イェルチンの遺作ということで見始めたけど、
今後もチェックしていきたい女優を見つけられたことが一番の収穫だったかも。
アニャ・テイラー=ジョイ♪
アニャ・テイラー=ジョイ目当てで観ました、十分堪能できます(笑) 気に入っている女優さんがいると観てるだけで癒されますね、出番が多いとなおさらです(^-^) まだ観てなかった作品があると嬉しいですよね、「まだまだ彼女を観ていられる」という気分になれるので(笑) 劇中の『アヴェ・マリア』が流れるとこよかったなあ~♪
この物語を深読みして意味を持たせることはいくらでもできると思う。 ...
この物語を深読みして意味を持たせることはいくらでもできると思う。
けどそうしたいと思うほど興味が湧かなかった。
全体的に淡々としててたいした説明も無く感情の動きも無く見てる側が想像するしかなくて、うーん、めんどくさい。
なんというか、、
内容は、感情欠落者とサイコパスの話。
喜怒哀楽がないアマンダと他人への共感力がないリリー。
最初はアマンダがヤバいかと思ってたけど、リリーのほうがやばかった^_^;
もっと面白くできたような気がするので、星3で。
深く読めるスリラー
サラブレッドとは血統です。
一般庶民の感慨として、世の中には、通らなければならない労苦をさらりとかわして、富や名声を得ている──と思える人がいます。
もちろん、じっさいには、そんなことは解りません。ひとかたならぬ努力を隠しているかもしれませんし、また、たとえすいすい生きてきたのだとしても、そんなことを無関係な他人が批判したり、羨むのは不適切なことです。
映画には、そのジレンマが描かれています。
アマンダ(オリヴィア・クック)は、賢いのですが、世渡りがうまくありません。簡単にいえば、何をやってもうまくいかない──と諦観しているタイプの女性です。経済的にも恵まれていません。
反対にリリー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、要領がよく、リッチでもあります。
ふたりともきれいな女性ですが、その立場が外見にあらわれている──ようにも思えます。わたしたちは有名人に対して、その外観だけで「なんとなく~してそう」と身勝手な感想をもってしまうことがありますが、映画はそのイメージをうまく利用しています。
リリーはセレブ感のはなはだしい女性です。色白で、育ちの良さと同時に、そこはかとない悪意がある──ようにも見えてしまいます。
対してアマンダは、庶民的です。
基本的に愛嬌のある女優ですが、ここでは寡黙でとっつきにくい印象をもち、リリーにくらべると肌つやもすぐれず、恒常的な不満足を抱えている労働階級の外観をつくっています。
ふたりの印象は、それぞれの過去作からも地続きです。
ウィッチやスプリットやマローボーンのテイラージョイも、選ばれた感の高い、救われる役どころです。
また、監督は、ベイツモーテルでどこへでも酸素タンクをひいていくエマや、ぼくとアールと彼女のさよならの露命のレイチェルを見て、クックをキャスティングしたはずです。クックはなんとなく、気の毒なのです。
サラブレッドはその相対性を、スリラー映画として描いた映画です。
ただし、道徳へおとさないのが、この映画の優れた点だと思います。主犯のリリーは邪魔な継父をなきものにして、のうのうと人生の階梯をのぼっていますが、アマンダは、前科者になってしまうのです。
加えて、その構図=不公平が観衆にとって、たいして不満にならないところが、この映画のさらに優れた点だと思います。
リリーには良心の呵責がなく、アマンダもその境遇を受け容れています。投げやりなクックがとてもうまいので、テイラージョイの邪気が気になりません。
その顛末に、じわりとタイトル「サラブレッド」が浮かび上がってきます。
スリラーの形態を持ちながら、哲学的主題へ昇華している──個人的には、そう感じます。
まったく違う話ですがシャブロルのいとこ同志のようでもありました。
感情とこころを持つ生き物を人間と呼ぶ
なにも、感情が欠落しているからといって
アマンダがこころもないヒトだとは思えない。
正しい判断をしようと思ったら
ときとして感情が邪魔をするかもしれない。
また、感情に任せて冷静にいられず
間違った判断を下してしまうかもしれない。
アマンダは感情が動かない。
だから利害が発生しない。
ただ、友人リリーのこころに寄り添っただけ。
ただ、それだけ…
アマンダには、こころがある。
だから友人の代わりに罪をかぶることもいとわない。
そして施設からリリーに送った手紙が、
感情なきゆえのもっともな正論を世間に
問いかけていたのように思えました。
〈先天的な〉感情欠落者のアマンダ
〈後天的に〉こころを捨てたリリー
どっちが“ひとでなし”なんだろうか?
でも、今後生きづらいのは
リリーの方じゃないかな?
だって、こころを捨てても
感情だけは残っているのだから…
【自らの中に秘めた凶暴な感情が露になった際の若き二人の少女の表情と不穏な雰囲気が印象的な作品】
”リリー(アニャ・テイラー=ジョイ)は高圧的な継父を憎んでいる。”
”アマンダ(オリビア・クック)は罪の意識を感じないと真顔で言う。”
二人はアマンダを心配した母親の計らいで久々に再会する。アマンダはリリーの屈託する思いを見抜き、彼女に”共感”する。
ダークな坂道を転がり落ちていく二人だが、表情はあくまで冷静。
二人はドラッグ売人ティム(アントン・イェルチン)に継父殺害を依頼するが、彼は放棄する。二人の異様な気配を敏感に察知したのだろうし、大口を叩く割には小物で良い意味で言えば、脳内安全装置が働いたのだろう。
リリーはアマンダの罪を感じないという言葉をどう受け止めたのだろうか。
アマンダはリリーから飲み物に強力な睡眠薬が入っている事を告げられながら、全て飲み干した。
私はアマンダのこの行為はリリーに思いを遂げろ、あとは私が引き受ける、自由になれというメッセージだと感じた。
そして、血だらけの体で睡眠薬の影響でソファーで眠るアマンダの体に寄り添い横たわるリリー。
”共感”が成就した瞬間である。
あの出来事の後の二人の表情には微笑みが浮かび、二人が夫々の新たな歩みを始めた事を物語っている。
〈ヨルゴスランティモスに明らかに影響を受けている不穏な雰囲気漂う映像と不協和音と言っても良い効果音も印象的。「聖なる鹿殺し」百回位観ただろう、コリー・フィンリー監督〉
〈内なる感情が露になった際のある決意をした二人の表情が印象的な作品〉
〈アントン・イェルチンの急逝に慎んで御悔やみを申し上げます。自分よりも若く有望な俳優の訃報を聞くのは辛い〉
感情ある方が恐ろしい
うーん…スタイリッシュサスペンスって…。
継父が気に入らないリリーと、感情のないアマンダの話でした。感情がないから、継父のことを、気に入らないなら殺せばいいのに…なんて言えるのかなとも思いました。一見、アマンダの方が恐ろしい女の子に見えます。でも、生きてて楽しい?だったか、生きてる意味がある?とかいう言葉を投げかけたリリーの方が、よっぽど恐ろしい。あれ、アマンダは、記憶ないんだよね?完全に罪を被ったってことよね?この後のリリーの未来は、どんななんでしょう?
ただのワガママな女子二人の物語って感じです。確かに、あんな父親はどうかと思いますけど、殺すんかい?って感じ。母親も、なんで、あんな男と再婚したんだろう?
淡々とストーリーも進むし、面白みに欠けます。ちょっと睡魔と戦いながらの鑑賞でした。
感情がないってことは、幸せも感じないってことね
「スプリット」以来に観たアニヤ・テイラージョイが美少女過ぎて、ストーリーが頭に入ってこず。
・・・いえ、正直に言えば、あまり淡々とした進行なので前半の肝心だったのだろうという場面で寝てました。そのせいで、犯行の動機がいまいち飲み込めず、なんでこの子達は物騒なことを考えてるんだ?のまま終了。
結局、利用した奴された奴、て話?でも、たぶん知ってたところで共感わきにくいことしか言ってなかったけど。
※このサイトのアニヤの画像、もうちょっと可愛いのあるでしょ?
一気飲み
殺らなきゃダメだ。…ダメなのか??
冒頭からバチバチにキメてくるカメラワークに音に演者の表情、全ての演出が洗練されビシッと嵌っていて、1シーン1カットの全てに魅入られる。
非常に格好良い映画だった。
「無感情で優秀な模倣者」だと自称するアマンダと、静かに煮えたぎる負の感情を抱くリリー。
二人の対比、リズミカルな会話の積み重ね、徐々に本気度を増す親殺しの計画、不穏な空気の濃淡に常にゾワゾワさせられる。
異様なほどの緊張感に独特のテンポのギャップが面白い。
威圧的で抑圧的な継父のストレス、そして母親の空気の薄さよ。
しかし娘の気持ちを知ってか知らずか、「彼好みになりたい」と日焼けマシンに入る救いの無さよ。
でもきっと、殺さなきゃならんほどのものではない。きっと、客観的に見ると。
ただきっと、殺すより他に救われる道などなかった。きっと、主観的に見ると。
そもそも二人と二人の間にある価値観と目的に重きが置かれ、それ以外の人やモノゴトはかなりぞんざいに扱われている気がした。
それぞれの家族、周りの人、ターゲットである継父でさえ居ても居なくてもいいくらいの存在感。
観客の価値観や意見なんかもクソ喰らえと言わんばかりの挑発的な姿勢すら感じる。
唯一入るアクセントのティムがとても良い味だった。
だらしなくてチャラついたどうしようもない悪さで身を固めているけど、おそらく一番マトモな人。
どっちに転ぶのかわからない不安定さで、一時はどうなることかとハラハラした。
決定的なシーンの見せ方がまた秀逸。
ローリングマシン(?)のグオングオンという音が耳に刷り込まれて離れない。
状況的にあのラストは無理がある気もするけど、自ら選んだことだもんね。
歪な形の友情。…友情なのか?友情ってなんだ?
無感情ってどんな感じ?無感情なりに友達の意識はやっぱりあるんだろうけど。
むしろ無感情側の方が友達を想って言動を放つことも多かった気がする。
やたらと多い会話、手紙はもはや何を言ってるんだか惑わされる。
時折置いてけぼりにもなるけど、本筋は至ってシンプル。肉付けと味付けが上手い。
ショックシーンやスリルはもう少し欲しかったなーとは思いつつ、じわじわ身体に染み渡る衝撃の感覚はとても好き。
移入してガンガンに乗るタイプではなく、傍観でニヤニヤしながら見つめるタイプだった。
アマンダと対峙すると、全て見透かされるような気がして非常に不愉快な気分になる。リリーの大きな目が揺れる様子もどこか恐ろしい。
オリビア・クックとアニヤ・テイラー・ジョイ、二人の美しい人の共演が目に楽しかった。
どちらかというとアニヤの方が無機質な印象の顔付きをしているだけに、二人の役柄の違いがさらに面白く感じる。
そして、イェルチンみたいな人だなーと思ったらイェルチンだった。良い俳優だな。
ローテンションで淡々とした空気。
劇場内は静かな寝息のスヤスヤハーモニーで満ち満ちていて、その状況に笑いそうになった。
私も完全に寝不足状態だったけど、手を抓りまくって何とか落ちずに済んだ。
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