「居心地の悪いインド製サスペンスコメディ」盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
居心地の悪いインド製サスペンスコメディ
盲目のピアニスト、アーカーシュ(アーユシュマーン・クラーナー)。
ひょんなキッカケで高級レストラン(お酒を提供するバーに近いかも)でのピアニストの職を手に入れた。
親しくする女性も出来た。
が、彼には秘密があった。
それは、盲目というのは嘘で装っているだけ。
そんなある日、元映画スターのプラモードから、後妻との結婚記念日のサプライズ演奏を依頼される。
当日、彼の住居を訪れるが、そこでプラモードの妻シミーと不倫相手がプラモードを殺害した現場だった。
目撃者のアーカーシュは警察に駆け込むが、その警察の署長こそプラモードの妻シミーの不倫相手だった・・・
というところから始まるインド製作のコメディサスペンス映画。
前半は頗る面白い。
盲目を装っている主人公に彼女が出来・・・とのはラブコメ路線。
そもそも、「装っている」というのは『お熱いのがお好き』『トッツィー』などと同じく、正体を隠しての「なりすまし」コメディで、この種の映画にハズレはない。
が、この映画、前半3分の2ぐらいで、定石から離脱し、個人的には面白くありませんでした。
なりすまし映画の基本は、なりすましていることへの「罪悪感」なのだが、この映画では、主人公の本心かどうかわからないが、「それは芸術のため」などといってのけ、罪悪感の欠片が感じられない。
はじまってすぐのシーンで、「このアパートはNGOのお陰で安価に借りられるんだ」と、親しくなった彼女にいうにもかかわらず。
で、この「前言撤回」的な場当たり的展開で、映画はどんどんと複雑怪奇を極める事態となり、よく言えば「想像できない展開」なのだけれど、「想像できない展開」よりも、想像できる展開だけれど、納得と驚きがある映画の方が個人的には好き。
その予感はあったけれど、あっさり裏切られた感じもする。
ま、主人公の盲目が演技だとバレ、それが犯人に逆に利用され、本当の盲目にされてしまう展開あたりまでは面白いが、その後は先に述べたような罪悪感がないので(盲目になった主人公の腎臓を、移植用に摘出しようとするハナシは気分が悪くなった)、心地よく見れませんでした。
個人的には、主人公は「あれは嘘」と認めたうえで、彼女と結ばれ、事件も解決するというのが好みなんだけれど・・・
それでは定石的すぎるのかしらん?
ちょっと、コーエン兄弟作品がみせる露悪的展開の映画のようで居心地が悪かったです。