「「悪人」にも“いろいろ”ありまして」盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
「悪人」にも“いろいろ”ありまして
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メインキャストの半分以上が「悪人」という、とんでもない映画である。
アイデアはあっても、なかなか面白いエンタメにできないものだが、本作品は大成功している。
(1)盲人を装うピアニスト(アーカーシュ)、(2)浮気妻(シミー)、(3)警察署長、(4)外科医、(5)三輪タクシーの運転手、(6)その母(?)。(7)少年まで入れれば、7人もの“悪人”である。
対して、“善人”は3人しかいない。(1)ピアニストの恋人(ソフィー)、(2)元スターの寝取られ男、(3)隣人のお婆さん。
登場人物の“キャラ”と“動機”が、最初から最後まで一貫していることが素晴らしい。ご都合主義でキャラが変わらずに、決してブレない。
いろいろな形の「悪」があって、それぞれの持ち場・役割を果たすことで、物語を紡いでいる。
ピアニストは、詐欺師であっても殺人者ではない。外科医はビジネスとして、淡々と人を殺して臓器を取り出す人物である。
浮気妻はもともと平凡な人物であったが、バレないためなら血眼になって何でもやる。ラストの車を引き返すシーンでは、“ついにピアニストと和解するのか”と思いきや、ひき殺しにかかるという徹底ぶりだ。
また、ハリウッド映画ならアクションシーン連発という“力技”で押し切っていくだろう。
しかし、本作品はあくまで「予測不能」な、練り上げられたプロットで、観客を魅了しているのが素晴らしい。
まさか、冒頭のウサギが、あんな形で関わろうとは(笑)。
人生を決めるのは、生者(liver)なのか、肝臓(liver)なのか。
悪人たちの行く末は、文字通り、“最後の1秒”まで見逃せなかった。
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