「2回見るともっとよさが味わえる」フェアウェル ピンクマティーニさんの映画レビュー(感想・評価)
2回見るともっとよさが味わえる
最近、改めて観たブラジル映画『ぶあいそうな手紙』があまりにもよかったので、少々印象が薄かったのだけど、やっぱりいい映画です。
思えばがんの告知は、私が子どもの頃、まだ一般的ではありませんでした。
今では知ることは当然の権利ですが、果たしてそれがよいことなのかどうか。
劇中では、アメリカと中国、東洋と西洋の考え方の違いを対比させ、色々なエピソードが紹介されます。日本人にとっては「当たり前」に思えることも、アメリカ人は新鮮な驚きを持ってこの映画を観たのではないのでしょうか。
おりしも各国の映画賞で、多様性や公正さを重んじる動きが出てきて、ちょうどアメリカ人でありながらアジア系の女性が主人公のこの映画は、その機運に乗ってゴールデングローブ賞を手にしたのでしょう。これからますますアジアからの視点で見た物語や、役者、監督、脚本家が活躍の場を広げるチャンスが広がるのはうれしいことです。これまでの映画界は、あまりにも「白人男性」中心でありすぎましたものね。
そして、決して中国的な価値観礼賛と言うわけではなく、アメリカ的なよいところも紹介しているし、日本人にとっても、距離的には近くても心理的には遠い国、中国の、さまざまな慣習や価値観を知ることができて、興味深いです。食事会や結婚式での豪快さ、年長のおばあさんが取り仕切る冠婚葬祭、欲望丸出しでご先祖にお願いする様子など、ユーモラスでした。
中国人から見た日本人女性もちくりと批判していて、そんな風に見えているのか、と面白かったです。あちらでは年長、年少、男、女にかかわらず、はっきり意見するのですね。
結婚式で披露される韓国人ソプラノ歌手による「Caro mio bien」、厳かな美しい歌声に耳を奪われ、うっとりしてしまいました。
チャーミングなラストも好きです。