「東洋と西洋の価値観の違いに着目した、「嘘」が織りなす家族模様。」フェアウェル たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
東洋と西洋の価値観の違いに着目した、「嘘」が織りなす家族模様。
アジア系アメリカ人のビリーが経験する西洋と東洋の命に関する価値観の違いを、彼女とその一族との交流により描き出したホームドラマ・コメディ。
主人公ビリー・ワンを演じるのは『オーシャンズ8』『クレイジー・リッチ!』の、名優オークワフィナ。
第77回 ゴールデングローブ賞において、オークワフィナが主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞!
第36回 インディペンデント・スピリット賞において、作品賞を受賞!
実績と信頼のA24作品!数ある名作の中でも、本作が最高傑作なのではっ!?
……まぁこの映画合わせて4つくらいしか観てないんだけど💦
アメリカと中国の対立が深まる中、このような両国間の架け橋になるような作品が注目を集めるのは良いことだと思う!
本作は監督であるルル・ワンの実体験を基にした作品。
さらに主人公ビリーを演じるオークワフィナも、母親を早くに亡くした為お婆ちゃんに育ててもらったという過去があり、本作への気の入れようは相当なものだったらしい。
製作陣が強い気持ちで挑んだからこそ、高い評価を得ることが出来たのだろう。
本作の白眉はなんと言ってもオークワフィナの演技!というか存在感!!本作が初主演映画であるにも拘らず、アジア人初となるゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞!凄すぎィ!!
いやはや、評価されるのも納得の素晴らしい演技でしたねぇ。アメリカと中国の価値観の違いに揺れる女性を見事に演じきってます。
お世辞にもアジアン・ビューティーとは言えないルックスなのですが、それが良い。それがリアリティを醸し出してる。ふと見せる何気ない表情とか仕草が魅力的な女優さんです✨
あとあのハスキーボイスが良い!ちょっと女優の伊藤沙莉に声が似てる。
今作で初めて彼女を知ったのですが一発でファンになりました!
今後もっと高いところに登っていく女優さんでしょう!
アメリカ🇺🇸と中国🇨🇳の命に対する価値観の違いというのは非常に良い着眼点。
これは中国からの移民であるルル・ワン監督でしか作れない物語だったのでしょう。
戦後教育により西洋の価値観を植え付けられた日本人🇯🇵の視点からすると、アメリカ🇺🇸の持つ「命は個人のもの」であるという考えも、中国🇨🇳の持つ「命は家族と共有するもの」という考えも、どちらも理解できる。
中国🇨🇳とアメリカ🇺🇸の関係を描いた映画だから、日本は関係な〜い、と思う人もいるかもしれないが、むしろ日本人が一番この映画を楽しむことが出来るのではないだろうか?
西洋思想と東洋思想、どちらが優れているとか正しいとか明確な答えを出していないフェアーな姿勢に好感が持てます🙂
一つの家族の物語に終始しているので、非常に地味な映画。この地味さが、映画のテーマとピタッとハマっていて心地よかった。
シリアスな問題を扱っているが、基本的にはコメディタッチで凄く見やすい。
中国🇨🇳独自の文化を面白おかしく描いているが、決してバカにしているのではなく、リスペクトして描いているというのが伝わってくるので不快感などは一切ない。
あのお墓での「一礼、二礼、三礼」の件とか普通にコントみたいで面白かった🤣
嘘を突き通した一族が、疲弊した顔で『レザボア・ドックス』歩きをするところ、最高👍
「嘘」がテーマの作品なので、冒頭からキャラクター間の会話は小さな嘘だらけ。
「ピアスしてない」とか「今大叔母さんの家にいる」とか「もうピアノは弾いてない」とか「お酒は殆ど飲んでない」とかとか。
大きなものから小さなものまで、嘘だらけの物語だからこそ、最後の最後にビリーが祖母(ナイナイ)に自分の挫折を打ち明けるシーンが心を打ちます…。
ビリーがアメリカ🇺🇸から中国🇨🇳へ降り立った時、画一的なデザインをした建設中の高層ビル群やアパートが異界的なものとして表現されていたのに対して、ラストシーンでビリーがアメリカ🇺🇸へ帰国する時、タクシーの車中から見える景色が前者と同じものでありながら全く違う意味合いで観客に迫ってくる。
この撮り方の上手さ、ルル・ワン監督只者じゃあねぇっ!!
描かれる家族の感じとか、古き良き日本映画のかほりがするので、邦画ファンにもおすすめ出来る。
身近な人がガンを宣告される、こんなこと誰の身にも降りかかる可能性があること。そんな時、その当事者にどのように接するのか、この映画を観て考えるのも良いのではないでしょうか?
とにかく、個人的には大傑作だと思う!全人類に見てほしい作品です!
※
製作費:300万ドル(約3億3,000万円)
興行収入:2,300万ドル(約25億3,000万円)
…大ヒット!