劇場公開日 2020年10月2日

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「『スパイ大作戦:おばあちゃんに余命を宣告するな』の巻」フェアウェル ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『スパイ大作戦:おばあちゃんに余命を宣告するな』の巻

2020年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

おばあちゃん子の私には涙腺崩壊になることを覚悟して観に行ったが、流れた涙は笑い涙だった。家族みんなで祖母の病名を隠すその言動と作戦の緻密さを見ているうちに、これはファミリー版『スパイ大作戦』なのだと気づき、ほくそ笑んでしまった。

末期ガンであることを祖母に伝えるか否かで揺れる家族の思いをカルチャーギャップとユーモアを交えて描いた作品であるが、病を知っている家族が勝手にしんみりしたり、落ち込もうとも、病人であるはずの本人が何も知らず元気であるというのが本作のミソ。高齢であっても元気に気丈に家族を束ねるその姿は、正に「病は気から」と言わざるを得ない。

とは言え、アメリカ育ちの主人公が一番祖母に病名を伝えるべきだと言う主張をするが故に家族も観客もハラハラする。しかし、これはやっぱり『スパイ大作戦』だ。家族が集まる機会と称して計画した結婚式をいかにうまく行うか?という表の計画を企て、その裏で診断に関する“別の作戦”を進行させる。「病気のことは絶対におばあちゃんに言うな」と薄暗い部屋で父と叔父から口止めされるシーンはスパイ映画っぽいし、一仕事を終えて病院から出てくる家族のスタイリッシュな行進シーンには、思わず『レザボア・ドッグス』かよ!とツッコミを入れたくなってしまう。

ラストには衝撃の結末が待っているが、それがすこぶるハッピーな気持ちにさせてくれるのも見事。国際化、グローバル化、文化や生活の多様化などが進み、家族の在り方も千差万別だ。映画でも疑似家族を描く作品が増えているが、これは血の繋がった家族が織りなす家族の絆を描いた作品であり、そして何よりも文句なしに痛快な作品だ。

Ao-aO