フェアウェルのレビュー・感想・評価
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ラストの軽いジャブ、謎の選曲
中国では今でも命に関わる病を本人に告知しないことが当然のようにあるということに驚いた。ただ、振り返れば日本も一昔前まではそのような風潮が主流だったので身近な感覚のようにも思えた。
幼い頃両親に連れられてアメリカに移住した主人公のビリーや、日本に移住したおじ、日本人の彼女がいるいとこなど異文化に親しんだ人物の視点を複数置くことで、この「嘘」の描写が賛美にも批判にも寄らず、「嘘」をつく側もつきたくない側も根底にナイナイへの強い愛情がある点は同じということを浮き彫りにする語り口は好感が持てた。
比較的オーソドックスな物語の流れに油断していたら、一番最後の数秒で自分の先入観に軽いジャブを食らわされるような映像が現れてびっくり。
余談だが、披露宴で日本人彼女といとこが随分渋い歌を歌うなあと思いエンドロールを注視したら「竹田の子守唄」だった(字幕は”komuriuta”と誤字になっていた…)。名曲ではあるが、曲の成り立ちも含め、披露宴で今の若者が歌う設定にとてつもない違和感を覚えた。監督は何故この曲を選んだのだろう。
思いの外、一筋縄ではいかない人情噺
オークワフィナという人は、どの映画で見てもすごくいいのだが、ひとりで主演を張った本作の、寄る辺のなさそうな佇まいが素晴らしい。監督の実体験がベースだというが、物語としては「お祖母ちゃんのために家族みんなでウソをつく」というヒューマン・コメディの定番のようなところがあり、定番的展開の中でさりげない、そして割り切れない心情が時折浮かび上がる。知的で抑制の効いた作りだと思う。
ところが、だ。抑えて抑えてきたエモーションが、クライマックスの別れに凝縮されて名場面が生まれた!と思っていたところに、最後のタネ明かし的な仰天のオチが明かされる。こちらが勝手に思い込んでいた「感動作の定番」って何なんだろうと、軽いゲシュタルト崩壊を起こす。これが監督の計算通りだとしたら、本当に気持ちよく手のひらで転がされてしまったのだろう。
中国の勢いを感じさせるアメリカ映画
ルル・ワン監督は中国生まれの米国育ち、その実体験に基づく劇映画の主演に、やはり父親が中国人の米国人女優オークワフィナを起用。米国文化で育った“現代の華僑”が、中国に里帰りして親類たちと過ごし、祖母に余命告知をするかどうかで対立するというドラマが、心に染みる物語に仕立てられた。アメリカ映画でありながら中国系のスタッフ・キャストが米中のカルチャーギャップをユーモラスに描く本作は、米映画界の多様化と差別撲滅の追い風を受けた面もあるとはいえ、やはり中国という国の勢いを感じさせ、日本の観客として羨望と嫉妬を禁じ得ない。
描かれるのは、東洋と西洋の死生観や家族観の違いであると同時に、中高年と若者の世代間の価値観のギャップとしてとらえることもでき、若い世代ならむしろその点でより共感できるのではないか。大方の予想を裏切るラストも心憎い。あの「ハッ!」が海を越えて届くのも、映画ならではの素敵な嘘だ。
ホテルの従業員から浴びせられる不躾で絶え間ない質問攻め、 食卓や結婚式での会話、 墓参りの風景、 中国人社会らしい情景がおもしろい。
動画配信で映画「フェアウェル」を見た。
劇場公開日:2020年10月2日
2019年製作/100分/G/アメリカ
原題:The Farewell/别告诉她
配給:ショウゲート
林家珍(奧卡菲娜)
姜永波
马泰
林晓杰
章静
趙淑珍
卢虹
水原碧衣
王子逸・脚本監督
中国で生まれアメリカで育った王子逸監督の自伝的物語。
主演のオークワフィナの中国語の当て字は奧卡菲娜。
彼女の中国語は上手くない。
普段は使わないのかも。
ひょっとしたらこの映画のために勉強した可能性がある。
セリフは90%普通語。
10%英語。
ハリウッド映画だがおそらく全編中国で撮られている。
ビリー(オークワフィナ)は6歳で
両親と長春(中国)からニューヨークに移住した。
祖母が末期がんだと診断された。
ビリーの従兄の結婚式という名目で
家族全員が長春に集まった。
中国では助からない病は本人に告げないという伝統があり、
ほかの親戚も大叔母に賛同。
余命を本人に宣告するか否か
ビリーと意見が分かれてしまう。
ホテルの従業員から浴びせられる不躾で絶え間ない質問攻め、
食卓や結婚式での会話、
墓参りの風景、
中国人社会らしい情景がおもしろい。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
中国では《死期の告知をしないという》そのため悩むNYの孫娘。
2019年(アメリカ)監督:ルル・ワン
この映画は「死期の告知」を巡る東洋と西洋の倫理観の違いを
テーマとしています。
即刻告知するのが、アメリカ・ヨーロッパ(現在の日本も)のやり方。
なるべく本人には知らせないらしいです中国では。
孫娘でニューヨークに住み作家を目指すビリーとの
《お別れの挨拶(フェアウェル)》を、
ナイナイはしたいのではないか?
秘密にするのは人権侵害・・・と、思っています。
この作品を監督したルル・ワン監督自身と家族の実体験を描いた作品です。
ナイナイは長春に住むおばあさんです。
長男は日本へ、次男はアメリカへ、移民しており、
家族は妹が側に暮らしでいる。
ナイナイが末期の肺がんで余命数ヶ月との知らせが、
ニューヨークへ日本へと走ります。
驚いた親戚一同は長春に集結する事に。
理由は長男の息子(ナイナイの孫)が日本娘と結婚するので、
盛大な式を長春ですることとして、家族が集まります。
中国の風習がやはり珍しい。
高層ビルも無個性で安普請。
結婚式だというのに出席者はまるで普段着だ。
ホテルでは新築なのにエレベーターが動かない・・・など、
どこか歪な中国の繁栄。
中国人は死期の告知はしない習慣。
特に癌は、その恐怖に人は殺される・・・と、言うのだ。
ナイナイばあちゃんは《かくしゃく》とした仕切り屋。
孫娘のビリーは何度も告知しよう・・・と、
家族に提案するが、即座に却下されてしまう。
カルチャー・ギャップがテーマの映画です。
主役のビリーはラッパーで韓国系と中国系の血を引く
アメリカ人のオークワフィナ。
見るからに個性的。
肩をいからせクチを突き出す動作が、ラッパーそのものだ。
意外と結婚式の中国人の生態がユーモラスですし、
ラストの締めに大きくのけぞりました。
可能性や柔軟性というものについて
中国が舞台の現代物は私には珍しかったので、何かと新鮮で興味深く見ることができた。
もし早くに本人に告知していたら、気落ちしてがっかりしてしまい、治るものも治らなかったのかもしれない?
病気に限らず、「あなたはこうだ」と決めつけてしまうのは良くないのだろうな。
人間には柔軟性というものもあり、いろんな可能性を秘めているという面もあるはずだから。
曖昧さ、臨機応変な柔軟性、ごちゃこちゃしてスッキリしない状態、そういうものから生まれてくるパワーや可能性は捨てたものじゃないかもしれない。
そういう点で、ナイナイの妹は聡明だった。彼女は肝っ玉が座っているようで、目付きからして違う。「時がきたら私から話す」とキッパリ言い切った。様子を見て決めるのだ。全てを考慮して自分で判断するというその自信と柔軟性が素晴らしい。中国でも男より女のほうが精神力が強いのか。
そして彼女の判断は正解だった。
なかなか面白かった。
ナイナイなれ
余命わずかな家族に、その事実を告知するか否か。
社会の最小単位でもある”家族”の葛藤を通して描くのは
アメリカと中国の文化の違い、そしてその葛藤に揺れ動くビリーのアイデンティティだ。
美しい画面構成と滑らかな語り口のストーリー進行で、割と淡泊な表現。
詰め込みすぎず、常にこちらへ考える余白を与えてくれるような作品で
今後のこと、家族のこと、自分自身のことなど、鑑賞中にはいろんな事が頭をよぎった。
きっと誰にとっても自分を全肯定してくれるナイナイは必要で
それは同時に、自分も誰かのナイナイになれるということでもあるんだと気づかせてくれた。
地味だけど、それこそ人生を豊かにしてくれるような示唆を含んだ名作だと思う。
予告ではシュールコメディを匂わせてたけど、実際は真面目なドラマ。家...
予告ではシュールコメディを匂わせてたけど、実際は真面目なドラマ。家族、国、個人、社会、などなど、この監督が感じたことそのままなんだろうな。
私としては予想外の展開が続いた。最後まで😁
シャン・チーを観た勢いでオークワフィナの演技を確認
日本でも昔はガンを告知しないドラマがいっぱいあった。90年代、アメリカのシステムに倣ってインフォームド・コンセントなるものが発表され、そこからはガンは告知するものとして定着。逆に、「家族には伝えないでくれ」と医者に頼むドラマなんてのも出てきたような気がする(かなり曖昧な記憶)。でも、実際に医者から家族に伝えられた時は、時代が変わったんだな~と実感した個人的思い出もありました。
基本的なストーリーはともかく、現代の中国の経済事情がよくわかる内容だった。「100万ドル稼ぐにはアメリカだとどのくらいの期間が?」などという中国好景気をアピールするかのような会話。とにかく中国に戻ってきなさいよ!といった台詞が多かった。
感情が顔に出てしまうというビリー(オークワフィナ)の演技が絶品。『シャン・チー』でも顔芸が出来るほど感情豊かだったなぁ。アジア系の顔立ちなのに大家族の中でただ一人アメリカナイズされていたビリー。言語や文化の違いだけでなく、家族への思いの差が彼女を通して伝わってきた。
強い精神力
冒頭はシリアスな展開を予想したが
コメディ要素が織り交ぜられラフに鑑賞できた
東洋と西洋の死生観や家族観の違いなども
ユーモラスに描かれている
ラストもまた良く
病気も強い精神力吹っ飛ばしすことが
できるのではと思わせてくれる
2回見るともっとよさが味わえる
最近、改めて観たブラジル映画『ぶあいそうな手紙』があまりにもよかったので、少々印象が薄かったのだけど、やっぱりいい映画です。
思えばがんの告知は、私が子どもの頃、まだ一般的ではありませんでした。
今では知ることは当然の権利ですが、果たしてそれがよいことなのかどうか。
劇中では、アメリカと中国、東洋と西洋の考え方の違いを対比させ、色々なエピソードが紹介されます。日本人にとっては「当たり前」に思えることも、アメリカ人は新鮮な驚きを持ってこの映画を観たのではないのでしょうか。
おりしも各国の映画賞で、多様性や公正さを重んじる動きが出てきて、ちょうどアメリカ人でありながらアジア系の女性が主人公のこの映画は、その機運に乗ってゴールデングローブ賞を手にしたのでしょう。これからますますアジアからの視点で見た物語や、役者、監督、脚本家が活躍の場を広げるチャンスが広がるのはうれしいことです。これまでの映画界は、あまりにも「白人男性」中心でありすぎましたものね。
そして、決して中国的な価値観礼賛と言うわけではなく、アメリカ的なよいところも紹介しているし、日本人にとっても、距離的には近くても心理的には遠い国、中国の、さまざまな慣習や価値観を知ることができて、興味深いです。食事会や結婚式での豪快さ、年長のおばあさんが取り仕切る冠婚葬祭、欲望丸出しでご先祖にお願いする様子など、ユーモラスでした。
中国人から見た日本人女性もちくりと批判していて、そんな風に見えているのか、と面白かったです。あちらでは年長、年少、男、女にかかわらず、はっきり意見するのですね。
結婚式で披露される韓国人ソプラノ歌手による「Caro mio bien」、厳かな美しい歌声に耳を奪われ、うっとりしてしまいました。
チャーミングなラストも好きです。
日本でも30年前なら多数派、
アメリカでも60年前なら主流だったのでは? 文化差もあるだろうが、どちらかというと、世代差とか癌という病気への認識度の違い、治療法の進歩も影響していると思う。
水原さんは全く知らなかったので、流暢な日本語を喋り出して、びっくりした。なんかハオハオを尻に敷くというかうま〜く操縦しそう。
シリアス過ぎずおちゃらけ過ぎずのいい塩梅だった。
まあでもオチには苦笑い。そんなこともあるから人生って…。
安藤さくらみたいな主人公の女優がいい。繊細な心の襞も。死ぬなんて...
安藤さくらみたいな主人公の女優がいい。繊細な心の襞も。死ぬなんて思えないくらいパワーがあってきれいなおばあちゃんも。食べるシーンの数々。食べたいと思うものが。お餅。
付き合う期間が3ヶ月だと世間がうるさい、とかはうざい話だ。それを振りかざすおばあちゃんのことも好きではないけど。
まだまだ中国は古い社会。
ラストで出る声「ハッ!」
告知に関してだけじゃなく、文化や価値観の違いが各所で面白く、意外だったのは、中国は最悪ではない、というくらいの客観視した感覚で捉えていること。
パスポートの国がどこでも私は中国人、という台詞にあるように、中国人はそのことをすごい誇りに思い、面倒なほど自国を評価していると思っていたから。
ナイナイの「人生は何を成し遂げたかではない、どう生きるかが大事なの」といった感じの言葉、とっても感動しました。
郷に入りては郷に従えを、不満を顔じゅうに滲ませながらも何とか堪えた主人公が、最後に放つ、鳥が飛び立つほどの「ハッ!」からの、すごいやられた感。
同じくらいの声が出たことは言うまでもありません。
「家族」をベースに「国」を語る
キャストがほぼアジア人のアメリカ映画。
先に「クレイジー・リッチ!」が有ったが、個人的な軍配はそちらに挙げますね。
アメリカ育ちの中国人を"バナナ"と表した素晴らしいセリフを超えるエモーショナルが本作には無かったので…
しかしながら
"重要な事を本人に伝え無い"
という設定が、そのまま中国の
"国家に情報統制されている人民"
を揶揄していて面白い!
そして両作に出演しているオークワフィナ!、本作でゴールデングローブ受賞も納得の押さえた芝居が最高ですね。
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