「ユダヤ系ポランスキー監督のアイデンティティが勝ち過ぎたか…」オフィサー・アンド・スパイ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
ユダヤ系ポランスキー監督のアイデンティティが勝ち過ぎたか…
ガザ地区での戦争のニュースを
毎日のように目にする中、
ユダヤ人が“約束の地パレスチナ”を目指す
切っ掛けの一つになったという
“ドレフュス事件”を扱った作品として、
また監督が「ローズマリーの赤ちゃん」や
「戦場のピアニスト」等、
たくさんの名作を提供してくれた
ロマン・ポランスキーということもあり、
「ゾラの生涯」に引き続いて初鑑賞した。
見事な作品と感動しながらも、
いかにも作り物ストーリー的な作風の
「ゾラ…」を観た直後ということもあり、
ピカール中佐を主人公とするこの作品は、
史実とは全く同じでは無いとは思うものの、
それでも「ゾラ…」よりはかなり実話に近く、
あたかもドキュメンタリー作品でも
観ているかのような感じさえもあった。
ラストシーンでこそ、
軍の中枢に入ったピカールが
体面重視の判断をする皮肉り描写で
締めくくってくれたが、終始、
淡々と実話を追ったかのような作風は、
ポランスキー監督らしからぬ
ドラマチック性に欠けた印象を受けた。
この作品、ヴェネツィア映画祭では
銀獅子賞・批評家連盟賞を受賞。
しかし、1世紀近い製作年度の比較に
意味があるかは分からないが、
日本ではキネマ旬報ベストテンで第76位。
同じ“ドレフュス事件”を扱って
アカデミー作品賞受賞と、
キネマ旬報で第16位の評価を受けた「ゾラ…」
と比較すると、日本では
それほど評価は高くなかったように見える。
ポランスキー自身が
ユダヤ系ということもあり、
結果的にアイデンティティが勝ち過ぎて、
エンターテインメント性には欠けた作品に
なってしまったのではないだろうか。
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