「よく作り込まれた作品だけど、ポランスキー監督を巡る騒動が影を落とした感のある一作。」オフィサー・アンド・スパイ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
よく作り込まれた作品だけど、ポランスキー監督を巡る騒動が影を落とした感のある一作。
歴史の教科書にも掲載されている、有名な「ドレフュス事件」の顛末を映画化したとのことで、事件のことはあまり憶えてないけど、大丈夫かしらん…、と期待半分、不安半分で観たのですが、スリリングな展開を楽しむことができました。
もっとも本作では、ドレフュス大尉の冤罪を証明していくドラマが中心となっているので、なぜこの事件が世界史の教科書に載るほど重要なのかについてまでは、結末近くまで触れていません。ドレフィス大尉の冤罪が、ユダヤ人に対する差別感情と結びついていることは示唆される程度です。そのため本作が描いているのは、要するにフランス軍内の不祥事を巡る内紛劇なのですが、なぜ19世紀末に、フランスで起きた事件を現在、ポランスキー監督が作らなければならないのか、が気になりました。
その主な理由の一つは、間違いなく現在再び世界各地で生じている民族憎悪感情に基づいた衝突があるでしょう。ただ性的犯罪に関する様々な嫌疑がかかっている同監督作品ということで、本作に対して多くの批判の声が上がりました。作品の内容と監督自身の経歴とは切り離して評価すべき、という意見も確かにもっともですが、本作のテーマを考えると、批判が生じるのもやむを得ないかも知れません。
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