劇場公開日 2022年6月3日

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「古今東西、隠蔽体質はどこにでも」オフィサー・アンド・スパイ シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5古今東西、隠蔽体質はどこにでも

2022年7月1日
iPhoneアプリから投稿

19世紀にフランス陸軍で起きた冤罪事件を題材に、国家権力の不気味さを描いた作品でなかなか見応えがありました。映画は、有罪判決を受けたドレフュス大尉が、衆人環視の中で官位を剥奪されるという衝撃的なシーンから始まり、ここに軍部の体質が集約されています。裁判後、防諜部の士官が冤罪に気づき調査を進めていく過程はスリリングです。一方で、再審になるまでがもたつき気味だし、裁判の過程も結構省略しているので、ハリウッド映画の法廷ものと違って地味な展開だし、結末も尻切れトンボな感じは否めず。むしろ、隠されていた軍部の体質と矛盾や非合理に満ちた異形の姿が露わになる時の当事者の反応を描くのは、ロマン・ポランスキーらしい所だと思います。役者では、ジャン・デュジャルダンが信念のある士官役を好演、ルイ・ガレルも原型がわからないほどの役作りが素晴らしかったです。それにしても、邦題は内容とアンマッチですね。

シネマディクト