「権力は不都合な真実を隠蔽する」オフィサー・アンド・スパイ 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
権力は不都合な真実を隠蔽する
19世紀末フランスで起こったドレフュス事件を映画化。冒頭タイトルにあるとおり、忠実に史実をなぞらえた作品のようだ。
主人公は冤罪となったドレフュスではなく、彼の元教官で新たに諜報部長となったピカール中佐。残されたメモの筆跡から犯人は別人であることを知り、将軍や大臣に伝えるが、もみ消されたため、新聞社とエミール・ゾラに真実を伝え、一大センセーションになる。
ドレフュスはユダヤ人ということで売国奴扱いされるわけだが、当時のフランス(というかヨーロッパ全体)でユダヤ人がなぜそれほど毛嫌いされていたのかよくわからないが、民衆の反応はちゃんと描いている。しかしこの作品では、軍部が自らの権威と面子を守るため、偽証やでっち上げを重ね、事実を隠蔽する姿を描く方に力点を置いている。
映画としては、ピカール中佐が淡々としていて冷静すぎて、もっと苦悩したり、感情を発露するシーンがあればよかった。アフリカに飛ばされて戻ってきても、全然やつれてないし。不倫する夫人とのシーンも、あまり効果的とは思えなかった。
事件の顛末を描くために、最後の方はずいぶん駆け足だったが、100年以上前の事件を忠実に再現しながら、いつの時代も権力は不都合な真実を隠蔽しようとするものだ、と伝えたかったのだろう。それにしても、決闘が当時まだあったとは驚き。
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