劇場公開日 2022年6月3日

  • 予告編を見る

「後味の悪さ」オフィサー・アンド・スパイ コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0後味の悪さ

2022年6月4日
PCから投稿

実際の事件通りに話が進むので、モヤモヤイライラ。
軍がでっち上げた証拠の捏造クオリティが低すぎて、そりゃ騙せないだろうと何度もツッコミたくなる一方で、権力者側が口裏を合わせて押し通す恐ろしさはリアリティたっぷりでありました。

ただ、軍部とカトリック教会の反ユダヤ主義と反共和制・右翼国粋主義者の台頭により、国家が再審派と軍肯定派の二つに分断されたことが事件の背景でありながら、軍だけにフォーカスして教会や政党の関与が、わずかしか描かれなかったのが不満だったことと。
主人公のピカール中佐は、自身の潔白のためと、軍の風紀を正すために裁判で戦うので、最後までユダヤ人のドレフュスが差別されることについては当たり前だと肯定的な態度なのがつらかったです(史実通りなのかもしれませんけれども)。

個人への差別に集約した見せ方が、テーマ(ユダヤ人差別の悪質さ)は伝わるという判断だったのかもしれませんが、まぁ、後味の悪い作品でした。
これが狙い通りだったとしたら、とても「映画賞で好まれる」作りなんだなと思いました。

ちなみにこの事件がきっかけで、フランスでは政教分離政策が進んだことと。
欧州のユダヤ人差別の酷さが露呈し、ユダヤ人国家建設を目的とするシオニズムが提唱され、イスラエル建国に繋がっていったこととが歴史的意義ではあったのですが、そのあたりには触れられていませんでしたね。

コメントする
コージィ日本犬