劇場公開日 2021年2月19日

  • 予告編を見る

「【”私はあの空の一部になるのね。と彼女は呟いた”難病を抱えた女子高生と不良青年との最初で最後の恋を彼女を気遣う家族の姿も絡めて色鮮やかに描き出した作品。余韻の残るエンドロールも印象的な作品である。】」ベイビーティース NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”私はあの空の一部になるのね。と彼女は呟いた”難病を抱えた女子高生と不良青年との最初で最後の恋を彼女を気遣う家族の姿も絡めて色鮮やかに描き出した作品。余韻の残るエンドロールも印象的な作品である。】

2023年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■病を抱える16歳のミラ(エリザ・スカンレン)は、孤独な不良青年・モーゼス(トビー・ウォレス)と駅で出会い、恋に落ちる。
 しかし、両親のアナとヘンリーはミラの初めての恋を心配して猛反対。
 ミラは自分を特別扱いせず接してくれるモーゼスに惹かれ、彼との刺激的でカラフルに色づいた日々を過ごす。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作ではミラの病が何かは、最後まで明かされない。だが、髪が抜け落ちた姿を見れば察しは付く。
 ミラは冒頭、精気の無い目で駅のプラットフォームに立っているが、現れたボロボロの服を着たモーゼスに、その服で鼻血を拭いて貰ってから二人は親密になっていくのである。
ー ミラを演じたエリザ・スカンレンのモーゼスと出会ってからの活き活きとした表情や彼女の金髪だったり、紫色のウイッグが今作に鮮やかな色彩を与えている。-

・最初は不良少年のモーゼスとミラとの付き合いを拒んでいたアナとヘンリーだが、ミラの表情を見て徐々にそれを許容して行く姿。
ー だが、懐大きく許容する訳ではない姿の描き方が良い。アナはハイになったり、ヘンリーはセラピストながら不安定な気持ちになり、臨家の妊婦と衝動的にキスをしたり・・。-

・モーゼスも、家から追い出され孤独な気持ちの中、ミラに救いを求めていたのではないかな。

■ヘンリーはモーゼスを家に呼び、同居を認める。ミラを想っての事である。ある日、ミラは自身の余命を悟ったのか、モーゼスに”枕で窒息させてくれ”と願うが敵わず、二人は初めて身体を重ねる。
 早朝起きたミラはまだ寝ている両親の部屋を除き、ベッドに戻る。
 アナとヘンリーはなかなか起きて来ないモーゼスとミラの話をしている。”SEXはしたかな。”そこにやって来た呆然としたモーゼス。
 異変を察知した両親はミラのベッドに駆け寄る。モーゼスは”もう、死んでいたんだ。”と呟くのである。

■今作が秀逸なのは、そのシーンの後にミラとモーゼス、アナとヘンリーたちが海岸で過ごすシーンが挿入されている事だと思う。
 ヘンリーはミラの写真を撮ろうとするが、逆にミラがヘンリーの写真を撮り、ミラは空を見上げ、”私はあの空の一部になるのね。”と呟くのである。
 そして、エンドロールは薄いピンクをバックに静に流れる。
 余韻ある美しいエンドロールである。

<今作は、難病にかかった少女の最初で最後の恋を、色鮮やかに描き出した作品である。アーティスティックな作り乍ら、観ていて心に残る作品でもある。>

NOBU