劇場公開日 2021年2月19日

  • 予告編を見る

「新感覚に満ちた余韻がずっと胸に留まり続ける」ベイビーティース 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5新感覚に満ちた余韻がずっと胸に留まり続ける

2021年2月26日
PCから投稿

出会いの場面から鮮烈だ。ハッと心を掴まれ、そのまま吸い込まれそうな気持ちになる。目を離すと何をしでかすか分からない青年も、登場するたび見違えるほど髪型を変える少女も、おそらくお互いがお互いにとって、欠けたパズルを埋め合わせるような掛け替えのない存在なのだろう。たった一人で生きるにはあまりに足元おぼつかない二人だが、一緒にいると全てのバランスが調和したみたいに最強。少女の両親もまた、勝手気ままなように見えて、少女への愛情は決して揺るがない。それぞれの心の機微が、表情の変化が、独特のパステルカラーと音楽に彩られながら、とても愛おしく映る。「難病もの」という一言で片付けるのは避けたい。本作が描くのは原因から結果への一直線ではなく、むしろその過程であり、瞬間だ。遠くの未来を見つめることがままならない彼ら。だからこそ一瞬一瞬がある。透明感に満ちた生命の躍動がある。新たな表現の神様に魅入られた秀作だ。

コメントする
牛津厚信