「両親への深い愛の物語。」ベイビーティース はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
両親への深い愛の物語。
これは余命幾ばくもない少女の人生最後の恋物語ではない。
友人に恵まれず、精神科医の父と情緒不安定な母は娘を失う恐怖から薬が手放せない。近く訪れるであろう死をなんとなく受け入れながら日々生きるミラ。そんなある日目の前に現れた訳あり青年モーゼス。
ミラにとっては恋の始まり。しかしモーゼスは病気のミラに向き合うつもりなど毛頭ない。目的はミラの家から薬を盗み出して売りさばくこと。それを知ってもミラの恋心は止められない。モーゼスの事は嫌い。でもミラの為に側にいてやってほしいと頼む両親。
さぁ泣け泣けと巻くして足るようなこともなく、静かでリアリティのある演出は秀逸。
そして終盤。これはミラとモーゼスの物語ではなくミラと両親の物語であることに気付かされる。16才なりに病と闘ったミラの両親への想いが美しい。ミラはもしかしたら両親の為に恋人を探していたのかもしれないな。いざと言う時自分の本当の願いを叶えてくれる相手として。
寄り添って眠る両親を見つめるミラがなんだか大人びて見えた。最期にミラが思い浮かべたのはモーゼスではなく父と母だっただろうな。そんな両親への愛情がいっぱい詰まった浜辺のラストシーン。ようやく素直に泣けました。
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