「シネマカリテらしい秀作」ベイビーティース グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
シネマカリテらしい秀作
極私的には、〝シネマカリテらしい〟作品として大いに納得、満足でした。
感覚としては、『シシリアン・ゴースト・ストーリー』に近いものがありました。
展開だけ追いかけてしまうと、面白みという観点では拍子抜けすると思います。
目の前の一分一秒、そのすべてにおいて精一杯の喜怒哀楽を表現しなければ、という焦りにも似たミラの切迫感があまりに痛切で辛くなります。
ミラを思う両親のそれぞれの苦しみが、ひとりでは抱えきれずについ周囲に当たってしまう姿もまた同じように辛いのです。
それでも、エンドロールで流れ続ける波の音を聞きながら、背景の色が空や海や白い砂浜が混じり合った薄い黄色からやや霞んだ風合いのピンクになる頃には、ひとつの生の営みの物語なんだな、と静かな心持ちになっていくのでした。
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