劇場公開日 2021年2月19日

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「感性豊かに綴られる重厚なラブストーリー、生への渇望が愛で埋まる痛みに涙」ベイビーティース たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0感性豊かに綴られる重厚なラブストーリー、生への渇望が愛で埋まる痛みに涙

2021年2月8日
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鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

知的

"エモい"なんて言葉が似合うであろう映画だと思い込んでいたのが、蓋を開けると、それはとても痛くて優しくて温かい世界が広がっていた。心が躍って、震えて、涙して。こんなに深い作品だったとは。

はじめに描いていたイメージは、「病気の彼女が知る、最初で最後の恋」のような、エモさを綴るような作品だと思っていた。しかし、この作品はそんな生ぬるいことなど言わない。骨太なドラマから突きつけるのは、「生への欲求」。病気を抱えた女の子の家族、好きになった彼、周りのほとんどが"足りない"人で、強くも偉くもない。人としての欠陥を持っている。だからこそ、そこを埋めようとして、彼女や彼に当たったりする。序盤は割と凸凹だけが機能するので、やや引き込まれにくかったが、彼に連れられたことによって開かれる世界を堪能するとき、骨太なドラマを積み上げていく。そこに流れるクラシックやクラブミュージックに、自然が奏でる音まで、感情を煽動することで、一層の面白みを感じる。また、章立てされたチャプターが限られた時間を有限かつ価値のあるものへ昇華させている。多彩な表情を魅せる映画だけに、こちらも器が大きくないと感じられない部分も多数あるのが特徴的だった。最後に、タイトルの意味が特に素晴らしい。序盤で出てくる乳歯が意味を成すとき、あっけなく落ちてゆく様が何故か美しい。だからこそ、入り口と出口の違いに驚きながら楽しんで欲しい。

可笑しく思えるような不思議な二人が、いつの間にか「変哲のない二人のすべて」を見ていることに気づく。いい意味でエモく、密度の濃すぎる青春の行方。バランスの取れた優しい1本。

たいよーさん。