異端の鳥のレビュー・感想・評価
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強烈な映像の強さに目が離せない
ほとんどセリフが無いモノクロ映画、いつどこ誰は分からないままに進んでいくのにも関わらず。
場所を失った少年、家までの道すがら関わる大人たちを少年の目線で描く、所在の無い物語。
はじめに関わるのが祈祷師みたいなおばあさんで、儀式的なシーンから抽象的な物語なのか?と煙に巻かれた様な気分になる。
しかし、少年が受ける執拗なまでの差別発言や行動で私たちにも徐々に状況が見え始め、恐ろしい程の現実が現れてくる。
側から見えない家庭の事情やら人生の悲劇、狂気な欲望にまみれた世界から慈悲深い人々まで、閉鎖的なコミュニティの厳しい目にさらされる少年と、少年自身の強い瞳が対照的だ。
はち切れるばかりの少年の気持ちが最後に溢れ出す時に、私の気持ちもシンクロする。
忘れるわけがない、大切な物は心の奥深くにしまってあるんだから。
不幸てんこ盛り
同様の作品で「炎628」があるが、炎が昭和の金八シリーズ(腐ったミカン編)なら、鳥は平成金八シリーズのようなよくわからない例えだが、そんなかんじ
北の国からなら、連続ドラマシリーズとスペシャルの違い
新日なら昭和プロレスと棚橋以降の新日とか…もういいよ!
「人生そのものには意味なんてない」という真理を、徹底して突きつけられる
私たちが目をつぶってきた人間社会の不条理な世界を、嫌というほど見せつけられる作品。
作品の最後で少年は父親との再会を果たすものの、その再会がそれまで少年が経験してきた悲惨な状況を打ち消してくれるはずもない。父親の腕の刻印からも、彼も少年と同様に過酷な日々を過ごしてきたことが伺いしれる。
その後の少年の心に平穏な日々が訪れることはくるのだろうか。
これは70数年前に起きた東欧での惨状を、今の時代に伝えるためだけの映画ではない。
近い将来ネオリベラリズムの経済体制が実質破綻を迎え、社会の分断がいっそう深刻化していく日本や米国のディストピアな未来を描いているような気がしてならない。
目の前の日々の生活に精一杯のなかでは、「道徳」や「正義」など何の意味も価値もなくなってしまう。
底辺に生きる人びとは、自分たちよりもマイノリティの人々を容赦なく叩き潰す。まるで今のネトウヨのように。
サルトルは「人間は自由の刑に処せられている」と言っていたらしいが、「これから好きなように生きていけ」と放り出されてしまった少年の姿をも言っているかのよう。
第二次世界大戦の惨事から、西欧の人びとが信じてきた神が自分たちの人生に何の意味も与えてくれないと気づいてしまった。そのことから実存主義の思想が生まれたことは、ある意味で必然的だったはず。
「生まれてきたこと自体には何の意味も持たない。その人生に意味を与えるのは自分自身しかいない。」
今だからこそ観るべき作品であるが、もうしばらくは観たくない作品。
色のない稀有な映画体験
手放しで傑作とは言えないが、とてつもない問題作であることだけは確か。
ホロコーストを逃れ生きるために村を訪れては差別と迫害を繰り返される少年の姿を描いた作品。
この作品、迫害がメインテーマじゃなくて、「生存本能の副産物」がメインテーマ。
生きるためならなんだってやる人の行動や、生きるために我慢してきた欲をどういう形で爆発させるのかを描いていると感じた。
ある人は、迫害。
ある人は、暴力。
ある人は、誘惑。
ある人は、救命。
ある人は、戦争。
それぞれが生き延びるための果ての姿。
そこには善悪もなければ、色彩もない。
そんな人間の本能に「名もなき少年」は打ちのめされていく。
家族も名前も自分自身も分からなくなる程に。
ヴェネチア映画祭で退場者続出と聞いていたので、グロを覚悟していたが白黒だしグロくはない。
ただとにかく痛々しくてとにかく惨い。
割と真面目に主演の子を心配するし、監督の果てなきこだわりも伝わってくる。
この作品を作り切った制作陣は本当に素晴らしいし、この作品を演じきった主演の子の根性がトンデモない。
作中では感動しなかったけど、エンドロールで制作陣を観てると何故かウルッときた。
とてつもなく残虐な人間の姿を捉えたモノクローム169分。
これは覚悟してでも観る価値あります。
期待通りの絵と想像以上のストーリー性
美しく力強いモノクロ映像は期待通りで、過去という意味合いもさることながら、まるで別世界の出来事のようにさえ見えてしまうめくるめく幻想的な景色が素晴らしくて、期待以上のストーリー性に終始集中力が切れることなく、作品を十二分に堪能できた。
名の知れた名優もちらほら出てくるので、自然と出演陣のパフォーマンスにも興味を持たせてくれたのだが、何といっても主演の子役の見事なパフォーマンスは圧巻だった。台詞が少ないということも功を奏していたとは思うけれど、にしても巧みに演出された陰影の中、あの少年は輝き続けていたなぁ。正直、内容は全般的にこの世の地獄というにふさわしいくらいに悲劇的かつ過激で見るに堪えない箇所もかなりあったけれど、常に小さな輝きがあったので、最後まで目を反らすことがなく観賞できたのかもしれない。
時に目を背けたくなるような残虐・暴力描写が映し出すのは人間の業、戦...
時に目を背けたくなるような残虐・暴力描写が映し出すのは人間の業、戦時中に顕になる大人の野蛮な歪み。そんな中で主人公の少年は酷い目に遭いながらも行く先々で健気に生きようとする……と思いきや。彼もまたそうした一種"狂気"的なや闇に飲まれ変わっていくよう。タイトル(原題)が深い。
35mmフィルムのモノクロによる見事な撮影。正直、(戦時中)子供や主人公が酷い目に遭いながら様々な場所や人の元を渡り歩いていくというプロット自体を追いかけたとき、それ自体にすこぶる目新しさがあるというわけではないかもしれない。ただ、それでも主人公の少年が次々に遭う生き地獄的所業はじめ熱量がすごいし、監督・脚本・製作すべてを自らで務めたヴァーツラフ・マルホウの表現者としての逃げない姿勢に感服。
セリフ少なくとも、だからこそ際立つ役者陣の熱演。ヨーロッパが誇る名バイプレーヤー安定のステラン・スカルスガルドに、すっかり作家主義な映画に出まくる姿勢がひたすら好感な名優ハーヴェイ・カイテル。この二人は、自らの保身や猜疑心・嫉妬と欲に忠実な大人達ばかり出てくる中で数少ないまともな良心のキャラクター。バリー・ペッパーは『プライベート・ライアン』の頃から狙撃手がよく似合う。
JOSKA
今年映画館鑑賞56本目たぶん
今回のクソ客:ビニール袋で食べ物やら飲み物やら持ち込んでいる男性が隣で、箱のチョコか何かだと思うけど何度も開けては閉めて繰り返していて、「ずっと開けておけよ!」と思った。しかもめちゃくちゃ嫌いな、定期的「ふぅ〜〜〜」みたいな息吐くタイプに、欠伸まで!欠伸くらい音殺してできるだろうが(気持ちは若干分からなくもないが)
人間とは一体なんなんですかね?
まず、映像美が素晴らしかった。
鮮やかなモノクロ。
時折差し込まれる数々のワンショットが
時間を見事に切り取った写真や絵画のよう。
構図が印象的。見入ります。
だからこそなのでしょうか?
繰り広げられる残酷、残虐性極まる獣達の所業が
非常に際立つのです。心にザクザク刺さります。
そりゃ、観ている方もどんどん目が死んで行きますよ、
主人公のように。
それほどに人間という最強の獣の本性が
そのまんまに描かれます。
劇中早めに英題の意味を表すシーンがあるので
「あぁ、そうか、そういうことか」
と思いながら観ることになると思いますが、
その理解した意味に縛られて鑑賞し続けない方が
良いのかな?って思います。
この映画、とにかく「人間」に焦点を当てている作品だと思います。
(表情のアップが多い演出が印象的です)
それと、幕区切りが特徴的です。
生き物として、獣としての本能のままに生活するのも人間なら
本能を制御できるのも人間。
しかし、不幸を繰り返す。悲しみを自ら生み出す。
本能を制御できなくなったときにそれらは生み出される。
きっとそれは「罪」と呼ばれるものなのであろう。
現代には、たった独りで人類の全ての罪を背負い
「受難」と「贖罪」を行ってくれる人はいない。
人間自身は「復活」はないし、死んだら終わり。
「受難」を経験し続ける他ない。
地獄である。死んだように生きるとはこのことか。
なぜなんだろう?
でもそこからはい出せるのも人間であることも確か。
我々人間は全て、「受難」しているのだと。思います。日常的に。
しかし「贖罪」のち赦され「復活」もする。・・・「人格」としての復活。
それを成し遂げるときに傍にいるのは「人間」なんだよなぁ。
それが「希望」なのか「温もり」なのか?
そのためには人間のそばにいなければならない。
独りではだめ。
そうすると集団ができる。
集団ができると・・・・・また・・・。
切ない、人間とはなぜに切ない。
でも少しの希望を胸に人生のバスに乗って
曲りくねった道を進んでいくしかないんだろうなぁ。
十分消化できていないのでダラダラ書いてしまってすみません。
この観賞後感覚、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と似ているなぁ。
あーーー、どなたかと「あれってどーいうこと?」と話したい気分です。
なお、この映画。
かなりハードな描写が多いです。
さまざまな暴力シーン、性描写、幼児虐待シーンなど苦手な方
観る際は要注意です。すぐに退場できる席にするなどの
準備が必要かもしれません。
それでも生きる。
タル・ベーラを思わせる美しいモノクロ映像。小津安二郎を彷彿とさせるローアングル。全編にわたるてんこ盛りの暴力、恐怖、苦痛、死、欲望、憎悪、差別、貧困、嘘に、少しの正義感と慈悲。戦禍を軸に、人間の魂の本質をえぐる衝撃作。
動物好きさんにはお勧めしません!
感想が大きく分かれる映画でしょう。どんな戦争ドキュメンタリーも負けます。人間のヒトとしての根幹を揺さぶられる内容です。 ヒトの性悪説も納得かな。昭和生まれは観るべし。 これを観てしまうと今年観たナチが出てくる映画は生ぬるいの一言です。コロナ禍だからこそ観るべき映画と言えます。但し、無類の動物好きさんには酷な映画です。お気をつけて。
人間とは何か
この作品には想像を超えた凄みがある。
モノクロのクリアな映像を通して見る少年や人々の大写しの強烈な表情が、頭から離れなくなる。
そして、作品は、人間の本性とも異なる、人間とは一体何なのか、根源的な問いを投げかけているように感じるのだ。
ユダヤ・キリスト教的に言えば、神の作りたもうた人間とは一体何なのかだ。
戦争の悲劇とか、ユダヤ人のホロコーストとか、戦時中を描いた作品によくあるテーマとも完全に一線を画す。
「地獄の黙示録」を初めて観た時にも突き放された感覚を覚えたが、その感覚を更に突き放す感じさえある。
少年の出会う多くの人は、どこか人間というより動物的だ。
チャプタータイトルの名前が、かろうじて人間であることを示していると言っても差し支えないほどだ。
心優しい人もいるが、早くに命を落としたり、少年の元を去る。
そして、人間の最も醜い部分が、獣のような部分が、場所や人を変えながら語られる。
女性の獣と交わる場面は衝撃だ。
そして、少年の変容。
少年は成長したのか。
この試練は神の望んだことなのか。
生きるとは何なのか。
人間が生きるとは何なのか。
オリジナルタイトルの、The Painted Bird の意味は、割と早い段階で示唆され、物語の暗澹たる行方をも暗示する。
だが、無垢な人間の本質は善であるのに対して、色塗られて、つまり、様々な経験を通じて変質してしまうという意味のようにも感じられる。
少年の名前は何か。
名前と共に少年は人間性を取り戻すのか。
この演出や映像を不快に思う人もいると思う。
人間の奥底に眠る「何か」に向き合う作品だと思う。
野蛮人のための
僕の性格では主人公にイライラ。
もっとシッカリせんかい!
とは思っても虚構の映画。
見方を変えれば、過激な成人向けアドベンチャーゲーム。
物語の背景が第二次世界大戦当時には思えず、野蛮人がぞくぞく登場する。
しかし主人公はこの成人向けのゲームづくりによく耐えたものである。
と、思いつつ、実際の彼は成人なのではないか?とも思ってみたり。
シャーマンの婆さんにスゴイ展開を期待したがリアルにあっさり終わり。
ハービーカイテルさんに活躍を期待したが何だか無力に終わり。
主人公の軟弱さにイライラが続いていたが、
主人公は虐待おやじを穴にドボンしてから人格が変貌する。
そのあたりから期待をしてトイレを我慢し始める。
そして主人公が軍人からピストルを貰うと、さらに恐ろしい存在へと。
凶暴になった主人公の未来は・・・それは誰にも責任がなく。
ともかく169分(約56分×3)は長い。
帰りのエレベーターで男がイラついて野蛮になっていた。
いるいる野蛮人は今でもどこにでも。
ずっしり感。
セリフも少なく音楽もほぼなく三時間。が、あっという間でした。ユダヤ少年の不幸な逃亡劇。出逢う人は鬼畜ばかり。戦時下の地獄な状況が伝わってくる。悲惨な出来事ばかりだけど名前をかけたのにホッと安堵できた。
不幸話お腹いっぱい
なにやらエッジの効いた作品らしいという評判で見に行ったが、たいしたことなかった。
モノトーンの映像も宮川一夫に遠く及ばす、演出も平凡。音楽はほぼなし。
この手の不幸話は、これまで幾百の作品で語り尽くされている。
特にこの作品ならでは斬新さがあるわけではない。
人間がこれまで何千年と続けてきた不幸と、その不幸を生み出してきた人間の未熟さは、そろそろ終わりにしよう。
この不幸に三時間浸りたい人は見ればいいと思うが、私はもう十分です。
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