劇場公開日 2020年11月20日

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「オチがあったりなかったり、様々な物語をじっと見つめる絵画のようなドラマ集」ホモ・サピエンスの涙 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0オチがあったりなかったり、様々な物語をじっと見つめる絵画のようなドラマ集

2020年12月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

街を見下ろす小高い丘のベンチに腰掛けた老夫婦、突然信仰を見失った牧師、久しぶりに出会った友人に無視された男、廃墟となった街の上空をフワフワと浮遊するカップル、電車の中で望みを失ったと泣き出す男、戦死した息子の墓を訪れた父母、シャンパンを愛おしそうに嗜む女、鮮魚売場で突然痴話喧嘩を始める夫婦、我儘な患者にブチ切れる歯科医・・・様々な人々が織り成す悲喜劇の数々を固定された視点から見つめる作品。

全編を通じたストーリーがあるわけではなく、オチもあったりなかったり。現実と非現実、過去と現在を奔放に行き来しながら無作為に切り取られたかのような物語の断片には深い悲しみや絶望、微かな希望の芽生えが滲んでいますが、一切カットを割らないワンカメラで捉えられたドラマはどれも絵画のように美しく、絵画的であるがゆえに登場人物の心情が鮮やかに浮かび上がります。80分に満たない小品ながら、全編を貫くオフビートなユーモアが優雅な余韻を残す印象的な作品です。

よね