「変人である、という意識」キッチン 雨音さんの映画レビュー(感想・評価)
変人である、という意識
印象に残る映画。見終わってからも、影像を思い浮かべたり、あれこれ考えてしまう。
なかなか奥が深い映画に思える。
原作はどうなってるのだろう。
ここにでてくる主な登場人物たちは、自分を<変人>だと少なからず感じていたり、本人の意識はともかく、世間では変人とみなされがちな人たちだったりする。
そんな人たちの、外の世界との違和感、そしてその克服ということが、この映画の底辺に流れているものなのかな思う。
精神的にこもった世界。棒読み調の台詞、他人を気遣いすぎる優しすぎる微笑み、怒りや戸惑いや驚きを伏せた表情、…これらは、籠もった世界を表現するための演出なのか。それとも単なる作者か監督の好みのようなものなのか。
どちらにせよ、私は籠った世界を感じる。
人は皆、自分で意識するかしないかの差はあれど、少なからずそれぞれ変人なのだと思う。そして、もしそこを深刻視したならば心が折れてしまう。自己はある程度、肯定しなくちゃいけない。
では、自分を大切にしながら、どうやって外と折り合いをつけるか。どうやって他人とかかわり合いを持っていくか。
この映画の彼らのように、まず、自分を大切にする凛とした強さを持つこと。そして同じように他人をも尊重すること。そうやって信頼関係を作り上げればよいのか?そんなことを考えさせられる。
なんと、30年以上前の映画なのに、写し出されるモノもまた魅力的だった。
キッチンの、物が厳選され整理され大切に扱われている様子、そこからくる居心地のよさ、登場人物たちのお洒落、みかげの清潔感溢れる凛とした美しさや言葉、流れている優しい音楽。それらは心のあり方と深く関連しているように思う。
何かと味わい深い映画だなぁ…
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