「若者に平和を託す・・」海辺の映画館 キネマの玉手箱 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
若者に平和を託す・・
映画の形をとっていますがこれは紛れもなく大林監督の世界観に基づく平和への願いを込めた遺言です。熱意もその主張の正当性も疑いの余地は無いのですが映画としてみた場合に楽しめるかと言うと無理があるのは否めません。
タイトルから情緒的な作品かと期待したがいきなり珍妙なナレーション、一見SFチックと思ったらハリウッドレビューのような歌とダンスにはじまって戦争映画一挙上映と言いながら劇中へ観客がタイムリーブのハプニング連続に正直面食らいました。
先ず若者は戦争には無知であり関心もないノー天気だろうから興味を引くような現代風でビデオ・ゲームに参加のような軽妙なタッチであるべきと言う前提に無理があるように思えますが映画ばかりかCMづくりにも長けていた監督らしい読みとも伺えますね。
やはりそればかりでは迎合しすぎと思ったのか詩人中原中也の詩を用いて風格を添えてはいるのですが、まだ本意が伝わらないのではとの不安もあったのかくどいほどのナレーションで直接的なメッセージを足している。年寄の話はくどいと言われそうですが思い余ってのことなので致し方ありますまい。
広島生まれの監督だから反戦と言えば原爆だろうと察しが付くが戦国時代や新撰組と殺戮の歴史から振り返るから長くなる、3時間の長尺だがそれでもエンドマークは出さず中断と言うから恐れ入る。坂本竜馬に憧れていた金八先生も念願かなって龍馬役、これなら賛助出演者も納得のようでその顔触れも豪華絢爛。
反戦への思いとしては前作「花筐」で出し切ったと思えたが芸術性の故か肝心の若者に伝わっていないのではとあえて奇策で本作に臨んだようですが若者はどう受け止めたのでしょうかね・・。