「観客が主人公」海辺の映画館 キネマの玉手箱 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
観客が主人公
大林監督の遺作でもあり、彼の人生全てを凝縮したかのような作品となった。宮本武蔵、戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦など、日本が経験した戦争を幅広く扱い、どす黒い闇が覆い被さったような現代、そして未来の日本人への平和への願いが感じられる。付和雷同、今でいえば同調勢力。そして、戦争というものがあるから方向に進んでいってしまうということ。中原中也の詩も見事なチョイスでした。
故郷尾道での撮影となった本作は、監督自身の原点にも帰り、積み重ねてきた映画そのものへのセルフ・オマージュさえ感じさせられ、日本映画の歴史や大林作品の歴史も盛り込まれているのです。戦争映画だけではなく、山中貞夫や小津安二郎、作品でいえば「無法松の一生」など、映画愛に満ちています。
CG全盛時代にあっても『ハウス』の頃のホラータッチのVFXから、フィルムを重ねたり、クロマキーを使ったりする大林流は健在・・・というより、過去作をそのまま思い描いてしまうほど監督の歴史でもあったわけです。売れっ子女優であっても脱がせるテクニックも健在だったし。ぼかしてたけど・・・
そして豪華な出演陣。大林作品で出演している懐かしの面々が嬉しい。尾美としのり、浅野忠信、最も嬉しかったのが『ふたり』の中江有里だった。今じゃブックレビューばかりかと思ってたけど、女優としてもまだまだいける。
そんなこんなで、まさしく玉手箱のような映画でした(宝箱、宝石箱でもよかったけど)。自分でも映画を数多く見るようになってからは、教科書よりも映画に教えてもらったことが多くなってきてると思う。そんな映画好きの観客に対するラブレターのような映画でもあったかな。しっかりとメッセージは受け取りました!
コメントありがとうございます。
大林監督の日本映画講義、楽しかったですね。
あの名匠やあの名優の名が出る度、ニンマリとしてしまいました。
確かに『花筐』よりまだ本作の方が分かりにくい易かったですね(笑)