「一ワニ去ってまた一ワニ🐊🐊 パニック要素を詰め込めるだけ詰め込んだ、清々しいまでのB級感がニクいッ!」クロール 凶暴領域 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
一ワニ去ってまた一ワニ🐊🐊 パニック要素を詰め込めるだけ詰め込んだ、清々しいまでのB級感がニクいッ!
大型トルネードにより地下室に閉じ込められた父娘を襲う大ワニの恐怖を描いたディザスター&アニマル・パニック。
製作は『死霊のはらわた』シリーズや『スパイダーマン』シリーズで知られる映画監督、サム・ライミ。
『ジョーズ』(1975)以来、星の数ほどの作品が制作されている「サメ映画」。しかし、その裏側でひっそりと、しかし確実に作られ続けているパニック映画のジャンルがある事を皆様はご存知だろうか?
そう、それは「ワニ映画」だあぁぁぁああ!!🐊🐊🐊
と言うわけでワニ映画である。🦈に比べるとニッチなジャンルだが、『ブラック・ウォーター』(2007)や『マンイーター』(2007)、『THE POOL ザ・プール』(2018)などの作品がコンスタントに作られ続けている。日本にも『100日間生きたワニ』(2021)という話題作があるのだ!…えっ違う?
現実問題、🦈よりも🐊の方が怖い。
🦈で命を落とす人は世界中で年間10人程度だと言われているが、🐊による死者数はなんとその100倍!年間で1,000人がワニに食べられちゃっているのだ。
水木しげる先生の戦記漫画でも戦友がワニに食べられちゃう話があったし、とにかくワニは怖い。
ホラーの巨匠、サム・ライミが製作を務める本作は、そんなワニの恐怖を余す所なく描き出した。1匹だけかと思いきや2匹も。2匹だけかと思いきやいっぱいいるっ!!と、とにかく景気良くワニが登場し、火事場泥棒も警察官も見境なく食べ散らかす。景気が良いわに☺️
それだけでは無い。本作は「パニック映画の宝石箱や〜〜」と言いたくなるほどのお徳用パック。上はトルネード、下は大ワニ、さらには洪水で街中水浸しと言う正にこの世の地獄詰め合わせセットなのである。胃もたれするわいこんなんっ!!
ワニのいる地下室に閉じ込められ、さらにはそこに水が流れ込んでくる。ワニの恐怖に加え溺死の恐怖までもが描き出される上、水が溜まれば溜まるほど人間は不利に、ワニは有利になるという環境依存型特別マッチが開幕する。
この2重3重のパニックホラーの畳み掛けが凄まじい。天才的な脚本じゃん!マジで凄いよこれ!
この映画、始まり方からしてもう素晴らしい。
「CRAWL」というタイトルが画面に表示されるのだが、映像は水泳の記録会。「あれ?これ水泳映画なの?観る映画間違えた?」と思わせておいてからの🐊ッ!
水泳の「クロール」と“這うモノ“と言う意味の「クロール」のダブルミーニング。しかも、水泳選手を主人公に据える事でワニとの水泳対決も展開させる事が出来る!おいおいこの脚本書いたやつぁ天才かっ!?
一から十までバカバカしいが、そのバカっぽさを大真面目にやっている所が本作の美点。
そりゃ、いくらなんでも主人公のHP多すぎだろっ!!とか、ワニがすぐそこにいるのに父娘の絆を修復してる場合か!?とか、色々言いたい事はあるがそれはそれ。「ワニはヤバい」という馬鹿正直なテーマを、気を衒わずに真正面から描き切る。この愚直さと正直さこそが大事なんです。
ここで下手に「トルネード・クロコダイル」みたいな悪魔合体をされるとマジで冷める。サメ映画はこう言う事しがち。やっぱ🦈はダメだな。時代は🐊だよ🐊
終幕の仕方も良い。
『ザ・ロック』(1996)のニコケイばりの発煙筒エンド。しかもなんの余韻もないバッサリとしたエンドロールへの入り。これが渋いっ!
事件が終わったんだから映画も終わり、という全盛期の香港映画ばりの割り切りの良さ、この後味サッパリ感が今の映画に足りないモノなんだと実感させられました。
「どうせちゃちいワニ映画なんでしょ」とみくびっていたが、CGのレベル、演出、ストーリー、騒々しさ、全てにおいて期待以上。
凄まじいB級映画感なのだが、ここまでそれを貫かれるとむしろ感動してしまう。やはりパニック映画は王道こそが正道なのだ。
予想以上の面白さは数字にも表れており、興行収入は9,100万ドルと大当たり。制作費の6倍以上を稼ぎ出した。
この成功を受け続編の制作が決定したのだという事だが、またあの父娘がワニに襲われんの!?それとも今度はネーちゃんと母親?
いずれにせよ、次回作の出来次第では🦈と🐊の覇権が入れ替わるかも知れない。ついに🐊が天下を取るのか?緊張感を持って注視していきたい。