「格好よくない普通の人である主人公の奮闘記」ブラック校則 ねこさんの映画レビュー(感想・評価)
格好よくない普通の人である主人公の奮闘記
生まれつき髪が茶色い女の子に恋をした主人公が校則を変えて彼女を救おうと奔走する物語。
作中で散りばめられた様々な伏線がラストで綺麗に回収されていく気持ちよさや会話劇の面白さはさすが此元和津也脚本だなと思いました。
私はドラマを見てから映画を見ましたが、ドラマを見ずに映画を見ても独立した一つの作品として十分楽しめるものに仕上がっていると思います。
好きな女の子の退学の危機を救おうとする主人公は決して格好いいキャラクターではありません。
主人公の親友であり相棒である男の子は明るくて皆に分け隔てなく接し、虐められっ子をスマートに助ける。その明るさの裏で苦労もしていて、高校生にしてどこか達観しているし、自分なりのポリシーをしっかり貫いて生きている。
対して主人公はネクラでうじうじしているだけ、趣味は妄想、特に得意なことは何もなくいつも目立つ親友の陰に隠れて空気のような存在。親に買って貰ったギターは中途半端。何かしたいとは思っているがなかなか動き出せない。
でも大半の人は主人公のような「格好よくない人間」の側でしょう。
親友や憧れのヒロインのように高校生にしてどこか達観していて揺るぎない自己を確立している人は稀で、それを羨望の眼差しで見ている主人公こそ、大多数の人の姿なのだと思います。
そんな主人公がヒロインに恋したことをきっかけに奮起し、あたふたじたばたして情けない姿を晒しながら、最終的に大きな物を動かす結末だからこそ、この物語は痛快かつ見ていて勇気を貰えるものになっているのだと思います。
彼が大きな一歩を踏み出す行動を取った後の慌てっぷりも全然格好よくないしヒーローという言葉とは程遠いんですけど、でも彼があの行動を取ったからこそ、あの大きなうねりを生み出すことが出来たのは紛れもない事実です。
その後のラストにかけての展開はスピード感に溢れ、どんどん加速して高揚していく空気に飲み込まれるように見いってしまいました。
他の誰かではなく自分の意思で自分自身が動き出さないと、誰かを救うことも自分を変えることも出来ない。
情けないところの沢山ある普通の人間だって一歩踏み出すことで何かを変えられるかもしれない。
そんな可能性は誰だって持っているんじゃないだろうか。
そんなことを考えさせられる痛快青春ストーリーです。