ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺんのレビュー・感想・評価
全44件中、41~44件目を表示
輪郭線を捨てて描かれた冒険物語
少し前のフランスのアニメ作品だが、ようやく日本語版が見れるようになった。
原題は、北極点という意味で「地球のてっぺん」。
ストーリーは1880年代前半だが、史実では、人類が北極点付近に到達できたのは、20世紀に入ってしばらく経ってかららしい。
ロシア貴族の若い女性サーシャが、北極点を目指して消息を絶った探検家の祖父の“名誉”と、失われた砕氷船を取り戻すために、「長い旅路」へ向かう・・・。
アートの面では、自分はパッと観て、1920~30年代の商業ポスターを思ったが、1940年代の鉄道会社のポスターからインスパイアされたそうだ。
輪郭線をあまり描かず(描いても黒い線は使われない)、かつ、版画のようにベタ塗りの色面で構成していく。(最初は線で起こすとしても、線画の線を最後に抜くという発想法では、こういう絵柄は作れないと思う。)
その代わり、2次元的な陰影は一つ一つ丁寧に付けており、光と影のコントラストは美しい。
原色はほとんど使われず、パステル的な少し濁った中間色が使われているが、北方の風景を描くのには効果的だ。
「シンプルな画風」とか「ミニマム」などと、ちらしに書かれているが、自分はそうは思わなかった。映像表現だけとっても、必要十分なクオリティをもち、予算不足や表現不足など一切感じない。
輪郭線を捨てたことで、豊かな表情やキレのある動作といった、マンガ的な表現は制限される。しかしその代わりに、フレーム一つ一つが、そのまま版画やポスター画であるような世界が実現している。
そもそも、“おとぎ話”には写実性は必要とされない。「髪の毛1本1本」が描かれなくても、「風に合わせてなびく髪」であれば良い。
また、音響表現がイケており、絵の写実性の不足を補っている。流氷のきしむ音や割れる音には、息をのむ。
ストーリーは、見かけによらず、フランス映画らしからぬ(?)ほど、かなりご都合主義だし、ハリウッド的でもある。
正直、「ありえない・・・」なのだが、スッキリとまとめ上げていることも事実で、“おとぎ話”と割り切った方が良さそうだ。
主人公のサーシャの絵柄は“カワイイ”が、声は低くハスキーで、“しぶとい”キャラに合っている。
大きなスクリーンと、素晴らしい音響で観ると、より楽しめる映画だと思う。
南極よりも遠い場所
TAAF2016・長編コンペティション・グランプリ受賞作
遭難してしまった祖父を探す為、過酷な北極点を目指す孫娘の物語、
荒くれた海の男達の男気と優しさに交しながらの成長譚も良く表現されてます。
人物作画は輪郭線を省く独自の手法、背景はベタ塗りの彩画。
この背景美術は目を瞠るものが有り、
行く手に立ち塞がる氷河、崩れ落ちる氷山、弄ばる帆船の動き等々、壮大さに感銘しました。
劇場の大画面で観るべきアニメーション映画です。
英語題名+フランス語題名
この作品は、1880年代つまりロシア革命の30年ばかし前の時代に15才のサーシャという女性の北極での冒険を描いている。
映画の冒頭、ロシアの文化的位置付けにあるサンクト・ペテルブルグの港からサーシャが愛する冒険家の祖父が乗る船が今まさに出港をしようとしている。その後祖父の乗った船が行方不明となり人々は、船が沈没したと考えていたが、サーシャだけは、不沈船が遭難するとは考えていなかった。ある日、祖父の書斎で、北極点までのルートの手掛かりになるノートの切れ端が出てきた。それをもとにロシア皇帝の甥にあたる王子や父親に祖父の消息を捜しに行きたいと提案しても誰一人彼女に耳を貸そうとする者がおらず、ついには後先を考えず、豪邸を飛び出して北極を目指すことのできる船のある港まで無一文で行ってしまう。ダバイという船に乗ることを一等航海士のラーソンと約束するが、見事に騙され、失望しているとレストランの女主人が手を差し伸べる。始め怖そうなおばさんと思いきや..........? 掃除洗濯、もちろん食事の支度や給仕など生まれてからこの方1度も経験もしようとさえ思ったことのない、何不自由のない生活をしてきたお嬢様で何もできない非力なサーシャがついに1ヶ月で祖父の消息を捜しに行くことが出きるまでに成長する..................。
デフォルメされ色の配色などが統一され、あたかも無駄なものは無視するかのように全体的にそぎ落とし簡素化して見やすく、そうはいっても迫力のある氷山が砕け散るところやダバイが押しつぶされてしまうシーンなどは迫力があり、簡素化されたものの中でも例外もあり、船のドバイのマストやロープ、船外の描写は具体的に表現されている。
この映画の特徴として15才の女性の北極を舞台にした過酷なしかも生死を分けてしまうような北極という荒々しい自然環境におけるサバイバルを描いていて、観ているものにワクワク感が半端なく伝わってくるし、しかもシナリオ自体もよどみなく進んでいきサックと観ることができた。犬のシャックルのかわいいワンポイントも登場します。
この映画を観て、個人的な意見として、プロデューサーであり、東映の代表取締であった大川博という人物を思い出す。ステレオタイプのワンマン社長でその風貌に特徴があるにもかかわらず彼がいなければ、今皆さんが見ているアニメーションが、ただの子供の読みものの漫画で終わっているか、アニメーションという言葉も存在しないかもしれないと思っている。その当時の漫画を数段階飛躍させて"文部省推薦"なんて言う冠もつけることができている。その中でも劇場公開映画「ガリバーの宇宙旅行(1965)」や「少年ジャックと魔法使い(1967)」のデフォルメ感や冒険活劇のストリー性などを彷彿とさせる。また2009年の、フランス、ベルギー、アイルランド合作の長編アニメーション映画「ブレンダンとケルズの秘密」というものも参考にできるかもしれない。
amazon.comではすでにプライムビデオとして配信されていて、そこには"goofs"としていくつかの変なというか歴史的に存在する訳がないものも出てくるし、この映画自体、1880年代では北極点近くまで人類は誰一人として到達はしていないのが歴史上明白なことで、重箱をつつきたいものとしては?
しかし、そんな馬鹿げたチンケなことはどうでもよくてほっといたほうが得策で、面白い映画は面白いと鑑賞されたほうが、よいのは当たり前のことかもしれない。
1873年に創業したときライバル新聞紙のビルの1部を借りて事業開始したミシガン州における2大新聞紙の1つThe Detroit News その見出し
"Review: ‘Long Way North’ a story of dream fulfilled"
「全体からすると、映画"ロング・ウェイ・ノース"は、魅力的で受け入れやすいフェミニストメッセージを含む、視覚的満足のできる映画である。」
ジャーナリズムの文学的スタイルと芸術、特に映画と演劇に特化した週刊誌、Chicago Reader
"Long Way North strikes a blow for 2-D animation in a 3-D
marketplace " と題された2016年12月15日の記事から
「スマートで、エキサイティング、そして鋭くはっきりとしたキャラ設定がされている。このフランス - デンマークのアニメーションは最高位の家族向け娯楽です。」
2016年7月28日(木)アンスティチュ・フランセ東京で以前公開されている。
全44件中、41~44件目を表示