「禍々しいが救いのある話?」ミッドサマー Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
禍々しいが救いのある話?
あの アリアスター の長編2作目ということで鑑賞。
前作ヘレディタリーは自分の人生の中で間違いなく最も怖い、というより忌まわしい一本だったが今作はそう言った ホラー的 な感情を主に扱った作品ではなかった印象。
主人公ダニーが家族にある決定的な 呪い をかけられたところで今作のタイトルクレジットが出るが、今作は彼女がそんな呪縛から解き放たれるまでを描いた作品だったと言える。
前作ヘレディタリーのラストもある種の祝祭感が溢れていたが今作はその 救い に向けての話運びがより明確になっている気がした。
白夜のスウェーデンのそれはそれは美しいホルガ村を舞台に繰り広げられる 家族 そして 生と死 のあり方は、ダニーを苦しめる一般的な文化的価値観とは180度異なっており、そのコミュニティの中では彼女の苦しみは意味をなさない。
(180度異なる という点は村に近づいていく途中のカメラワークでも 文字通りの形で印象的に示される)
つまり、村で繰り広げられる様々な 禍々しい風習 がダニーの抱える苦しみに対してある意味 わかりやすく 対照的なものとして描き出されていくので、話の向かう方向性にはそもそも忌々しい雰囲気があまりないのである。
その点でミッドサマーはヘレディタリーと比較して 恐怖 とい成分が少ない印象なのかもしれない。 というか、この映画に関していえばジャンルは ホラー ではないとも言える。
描いているのは 恐怖 ではなく、自分の生きるコミュニティとは全く異なる価値観で生きる人々の 異物感 とその 正しさ(正当性という意味ではなくその場を支配するという意味で)だった。
彼らからすると何一つ間違っていない 全て正常 なのだ。
食人族映画と同じだな。
とはいえ・・・
恐怖が少ない というのはあくまでヘレディタリーと比較してということであり、一つひとつの描写の感じの悪さはやはり凄まじい。
美しい景色の中で美しく繰り広げられる恐ろしく禍々しい風習の数々がほんとーに感じが悪く、なのにそれ込みでやはり超絶美しく撮られている。 それら全部をひっくるめて超キモいのだ。
特に、昔から苦手なのだが、ああいう ヨーロッパの絵本 的なタッチの絵で何か描いてあるだけでもうたまらなく嫌!笑
後半に向けて加速するバットトリップ的描写と合わせての数々はもう完全に見る側の理解を超えて彼らの文化の中で事態が進んでいくので やばい・・・この人たちやばい・・・ ともうただドン引き。
え 結局お前どこからそのつもりだったの? といのはどうやら映画をもう一度見直すと色々とわかるようになっているらしい(ヘレディタリーも結局 最初から詰んでたのね・・・ という話だった)が、とりあえず怖いので見直しません!!
でもダニーを旅行に誘うくだりの時点で こいつなんかやばくない?みたいな雰囲気はビンビンだったとは思う。
音楽 と 音の部分での演出もすごくて、最後とかもう
壮大なんだか 禍々しいんだか 美しいんだか
もうわけがわからない、こんな音楽はこの話以外ではあり得ません
という感じ。
フローレンスピューは今作のほか、個人的に超絶楽しみなストーリーオブマイライフ、MCU新作ブラックウィドウ などの注目作もあるし、ジャックレイナー、ウィルポールターも役者としての地位を確実にステップアップしており役者陣の充実もすごい。
怖いのはわかっているが次回監督作も期待大な出来だった。
いやーしかし本当にアリアスター作品はホント感じが悪い。笑
前作同様 カルト 的な集団を取り巻く話であり、ヘレディタリーの公開の際にはインタビューで 自分の家族に起こった出来事を題材にしていると答えていたが、彼の家族に一体何があったのだろうか。怖いけど聞いてみたい