「映像美 ストーリー設定の壮大さにワクワクするが……」映画ドラえもん のび太の新恐竜 ごはんさんの映画レビュー(感想・評価)
映像美 ストーリー設定の壮大さにワクワクするが……
ドラえもんが大好きで、アニメはもちろん毎年映画を観ております。
アニメedのミスチルの曲から始まるかっこいい映画宣伝に子供心を擽られ、公開をずっと楽しみにしておりました。
感想として
良かったところ
・圧巻の映像美だった。
ドラ映画のopは毎年ワクワクする作りになっていますが、今年も例に漏れず、壮大でかっこよかったです。恐竜がCGでしたが、違和感も無く迫力満点でした。また星空の描写等も素敵でした。
・ストーリーの大筋がとてもかっこよかった。これは上手いなあと唸る設定が多く見られました。懐かしキャラの登場や、危険が迫る際の焦燥感を楽しめました。
疑問に思ったところ
・キャラの描かれ方。終始クネクネしたしつこいあざとさが気持ち悪かったです。せっかくのストーリーに集中出来ないくらい、ウザい表情や動きをする。最近のドラえもんは可愛らしくあざとく描かれがちですが、過去作は丁度良いバランス配分でしつこ過ぎず、目立ちすぎず、感動シーンにもちゃんと集中できる程のカワイイ動きをしてました。
南極カチコチ大冒険等も、終始キャラがちょこまかと動いて可愛かったですね。
対して今回はやりすぎ感が否めません。ジャイアンのとぼけ顔はもはや幼児みたい。またキュー、ミューは恐竜なのに動きすぎ。人間の為の都合のいい可愛さ。ピー助の良さが際立ちます。ロボットであるピッポがめちゃくちゃあざとくても許されたのは、人間が作ったものだから。それを道具で改変もしていない動物に押し付けるのは薄気味悪い。
大袈裟な表情、照れたり怒ったり、感情の起伏の仕方が雑で、深夜アニメを観てるようでした。
またキャラの持つ役割。しずかちゃんの描かれ方が、ダメな主人公を支える分にはいいのですが、描かれ方が臭いなと思いました。
主人公と同じ小学生の女の子にそれは担わせなければならないのでしょうか。川に入って夕陽に照らされながら主人公に微笑み、主人公の心情を慮ってあげる。旧時代的な「女の子像」にこれまた、ラノベを見てるような稚拙さ、変態性を感じます。ラノベや深夜アニメでは全然いいんです。ただ、子供がターゲットのアニメにハルヒの様な変態性は雑音に見えます。
ジャイアン スネ夫の描かれ方も雑だなあと思いました。のび太に何故か協力。熱波の最前線で戦わせるが見せ場なし。終始のび太に主人公補正がかかってて、その他のキャラはただの駒。チープなラノベを観てるようでした。
のび太がご飯を食べないキューに苦戦するシーン。ピーマンを残すのび太を怒るママとの対比でしょうが、大人側の押しつけに見えました。キューに対して憤慨するのび太と対比することで、大人側のこんなにご飯を食べさせるのは大変なんだぞ、が垣間見えて、子供を使って、大人の意見を主張することは物語としてどうなのかなと思いました。生き物を育てる大変さを表現するのはいいと思いますが、違和感に感じたのは、のび太が小さい生き物に対してキレ散らかすからです。のび太は短気だし、ずるいし、あきっぽい。けれども生き物は大事にします。ここで無理やりのび太の汚い感情を描くのは、大人の主張を展開する為なのか。
のび太のキューに対する押しつけ。
のび太が終始うざく思えました。こんなにのび太ってウザかったかな?と疑問に思いました。
のび太の良さは、優しいところ。弱い自分と同じ様に、弱さを抱える生き物に寄り添って思いやることが出来るところ。決して、片足の人間を無理矢理走らせる様な履き違えた優しさでは無いと思います。
キューはしっぽが短いこと、これは鳥でもそうで「尾が短ければ飛べない」です。それを知っているのに、「飛べないと仲間に入れて貰えないんだから」と、尾が短いだけで傷つける方に憤慨するでもなく、「弱い方」にキツく当たり、怒り、身体性を考慮したり工夫すること無く、根性論を押し付けます。それをされてのび太自身苦しかったくせに。感動ポルノに見えて、せっかくの感動美麗シーンがシラケました。
ピー助登場は感動しましたが、時系列や整合性が取れておらず、気になってその後の物語に集中し辛かったです。
また、のび太が過去改編でタイムパトロールに逮捕されそうになった時、ヤダヤダ言うのび太をみんなで守ります。
「のび太くんは逮捕させない」
ピー助の時にタイムパトロールに守られたくせに、敵対すると言うのも、、、敵だと思ってた存在が、タイムパトロールだった、というのは胸熱でしたが、それにわがままで反抗しすぎだと思いました。
物語の大筋は感動的で、描写も迫力満点。デザイン周りもかっこよく、番宣や楽曲も素敵でワクワクしたのに、細々とした部分の価値観が何かおかしい。
令和の時代に「2020」と銘打っておいて旧時代的な価値観の元にキャラを動かすのはシラケるというか、まだこんな事描くんだという感じ……。
古くて残念。多様性を理解する時代に、中には旧時代な作品もあってもいいだろうけど、子供のエンターテインメントの代表であるドラえもんがそれを描いていいのか。旧時代的な根性論や性役割、軍隊教育的な価値観で傷ついたり、置いてかれたりした人達が沢山いたんじゃないのか。のび太こそがその傷つけられてきた張本人じゃないのか。のび太にはそう言った人達を否定する側に、大多数に回らないで欲しかった。
クレヨンしんちゃんでさえ、ダイバーシティを考慮した作品を作っているのに……
キャラの持つ心情が今回は共感できなかったです。
無理くりポリコレを意識せよとは言いませんが、キャラ自身のアイデンティティと反対の立ち回りをされると戸惑います。
その他の部分はものすごく素敵で壮大で面白かったです。