劇場公開日 2020年6月19日

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「児童文学だけあって子供向けな作品ではあるが豪華な声優陣が救ってくれている」ドクター・ドリトル バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5児童文学だけあって子供向けな作品ではあるが豪華な声優陣が救ってくれている

2020年7月25日
PCから投稿

エディ・マーフィ主演で舞台を現代のアメリカに変更し、フランチャイズ化されたシリーズが定着しすぎていて、原作自体が霞みがちになっているため、今作が大胆にファンタジー・アレンジがされているように感じるかもしれないが、実はこちらの方が原作に近いテイストになっているのだ。

物語のクライマックスで「ある架空の生物」が登場するが、原作でも巨大なかたつむりや蛾といった架空の生物も登場していることから、路線としては間違っていないのだ。

日本でも小栗旬主演のドラマ『獣医ドリトル』という作品が制作されたりもしたが、動物と人間との対話を描いた映画やドラマ、漫画などのルーツとなるのが「ドクター・ドリトル」である。

イギリスの児童文学である「ドリトル先生」シリーズの舞台はイギリスということで、今作の舞台もイギリスとなっていて、ジュリー・バックリーやジム・ブロードベント、マイケル・シーンとイギリス系俳優が脇を固めているのだが、主人公ドリトルを演じているのは、アメリカ人であるロバート・ダウニーJrだ。

しかもロバートはニューヨーク出身と都会っ子である。そんなロバートが主演に選ばれたのには理由がある。

プロデューサーがロバートの奥さんであるスーザン・ダウニーだからだ。『シャーロック・ホームズ』や『ジャッジ 裁かれる判事』『デュー・デート ~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~』など手掛けた作品には、ロバートを起用することが多い。離婚したら権利関係でもめそうではあるが、どうやらその心配はないみたいだ。

監督のスティーヴン・ギャガンは『シリアナ』や『トラフィック』といった社会派な作品を多く手掛けてきた人物ではあるが、さすがに児童文学の映画化ということで、社会派に変換することは難しく、子供向けな王道ファンタジー作品として仕上がっている。

キャラクター構造の不安定さや穴だらけの脚本、古典的で寒気すら感じるギャグやコントシーンが気にならないと言うと嘘になるが、子供向けとするのであれば、数ミリ単位でみてギリギリ許容範囲である。

それよりも注目すべき点は、動物たちに息を吹き込む豪華な声優陣である。オウムにはエマ・トンプソン、ゴリラにはラミ・マレック、アヒルにはオクタヴィア・スペンサーといった、動物化したら…と想像できそうなベストマッチは素晴らしい。その他にもセレーナ・ゴメスやマリオン・コティヤール、レイフ・ファインズなど錚々たるメンバー。

物語を楽しむほどの余裕を与えてくれない分、この豪華な声優陣の共演こそが救いである。

バフィー吉川(Buffys Movie)