劇場公開日 2020年1月24日

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「海外の批評に反して」キャッツ 石松さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0海外の批評に反して

2020年1月23日
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鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

日本では公開前から海外での酷評ばかりが取り沙汰されているが、百聞は一見に如かず。実際に観てみたほうがよい。

じつはまったく期待せずに試写を観たが、もちろんツッコミどころは多々あるものの(だからこそ?)、観て数日経っても『キャッツ』を思い出しては自分の経験や取り巻く環境と重ね合わせてさまざまなことを考えてしまっている。
予想外に、もう一度、いや二・三度観たいと思っている始末。

百人百様、さまざまな受け止め方のできる、余白の多い作品だと思う。
いわゆる名作ではないかもしれないが、フックが多く、良くも悪しくも心に残る作品。
噛み締めるごとにジワジワ味わえる、スルメ作品といえる。

もっぱら不気味、不快との評価が多い例の猫人間(人間猫?)のヴィジュアルは、観ているうちに慣れたのか、意外と気にならかった。
むしろ、人間ぽい身体だからこそダンスシーンなどで身体の躍動感が表現できているのかもしれない。
これが毛皮まみれの衣装だったり、本物の猫を使っていたら、作品の要のひとつであるダンスは堪能できなかっただろう。
内容もそうだが、『キャッツ』というのは、じつは猫ではなく人間の話なのだと改めて感じた。
映像でこそ可能になる尻尾の動きなども、面白かった。

たしかに、冒頭が間延びした感じがあったり、メリハリに欠けていたり、もう少し脚本や編集で工夫できたのではないかと思う点も多い。
しかし逆にみれば、それら欠点は、舞台を映画化するに際し、両者の差異を意識し作品を作るためのよい教訓にもなるだろう。

今回映画化にあたって、ヴィクトリアの視点から描いたりと、設定を新しくしている部分もあり、一応工夫はしているよう。
映画用に作られた新曲のうち、ヴィクトリアが歌うナンバーは不覚にも琴線に触れた。
気づくと口ずさんでしまっている。

それから、ラストの長老猫の台詞は、ジェリクルキャッツの本来の/隠された意味をきちんと示唆している。
これは舞台版にはない演出で、本作のジェリクルキャッツ観を端的に表すものとして刮目すべき点。

とまあ、感じ方はさまざまだろうが、なかなか見所がある。
他人の、しかも海外の評価を鵜呑みにして観る前から駄作と決めつけるのは勿体ない。
ぜひご自分の目で確かめていただきたい。

石松
kunta21さんのコメント
2020年1月24日

おっしゃる通り
この映画版の「CATS」は舞台のミュージカルを知らない人にとっては 違和感ばかりが見えてしまう映画なのかもしれませんね。

劇団四季が演じる日本版でも ブロードウェイのアメリカ版でも ロンドンの公演でも ミュージカルとしての キャッツシアターは鑑賞者がその劇場に入った時点で その置かれた舞台装置の中で 鑑賞者自身が猫の1匹になってしまう臨場感があります。 そのうえで 猫たちが演じる物語に引き込まれていく様子は ミュージカルの最高傑作と言われる コーラスラインに通じるところがあり それぞれが歌う 表現の仕方は改めて 猫が演じたコーラスラインのように見えてきました。
 映画版では そのストーリーを理解するには 多少の無理があるのかもしれませんが ビクトリアと言う白猫の登場は 原作のミュージカル舞台版のキャッツとは違った視線で 「CATS」を見せてくれました。

個人的には 劇団四季版のイザベラが歌う 「メモリー」の歌詞が好きだったので 改変された日本語版の歌そのものにはちょっと違和感がありました。

kunta21
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