「エールの循環」アルプススタンドのはしの方 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
エールの循環
「しょうがない」と言われた
「努力してもムダ」と言われた
けど外野だろうが、内野だろうが
誰がなんと言おうと関係ない
それは自分が決めることだから!
高校演劇大会で受賞して話題になった
顧問の先生が演劇部のために書いた戯曲の映画化!
だから映画的な展開はミニマム。
ですが戯曲的な魅せる場面の数々。
会話のやり取り、表情や行動
演じられているキャストさんたちの反応で
野球部の大一番の試合を
ほぼ『アルプススタンドのはしの方』
だけで進行していき
交錯していた主要4人たちの心情と試合経過とが
徐々にシンクロしていくカタルシス!
おおむね舞台演劇における戯曲は
お互いの関係性を肝とした表現が多いと思います。
最初はお互いに共有認識を探り探りして
関係性を示しながら物語は進んで行きますが
しだいに、
「違うんじゃないか?このままでいいのか?」と、
秘めていた想いが皆々の胸に沸き上がり
〈青春〉の熱が帯びていき
共に想いをひとつにできる喜びを獲得しました。
その共有認識〈青春〉を促す場面が
「スタンド裏」だったと思いました。
アルプススタンド以外で唯一の場所
「スタンド裏」にやってきた面々は
ここでは試合の進行とは切り離されて
共有認識とは別の個人の内面を一人称、
時に二人称で吐露していたように見えました。
だからスタンドに戻ってきた面々は
自分にも、他人にも素直になって
想いに寄り添うかたちで
応援できるようになったのでしょう。
誰かの応援が、誰かのちからになり
誰かのがんばってる姿が、誰かの応援になる。
そんな【エールの循環】を描いた
素敵な青春グラフティー作品だと思いました。
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・
以前、高校演劇部の地区大会を
観に行ったときと同じような
あたたかくってさわやかな気分になりました。
また、あの空気を
期待と緊張、自信と希望に満ち溢れた
学生さんたちの舞台を味わいたいな...
今年は野球をはじめとした運動部のみならず
演劇部の大会もコロナの憂き目にあって
行われることができないでしょう...
でも「しょうがない」とか「どうせムダ」とか
断定せずに
どうか迷わず自分の好きなことを継続して
未来に繋げていってほしい。
努力を実らすのは、あきらめない情熱だと信じて!