「未来に向けて 若者達のムーブメント」ガリーボーイ shironさんの映画レビュー(感想・評価)
未来に向けて 若者達のムーブメント
ダラヴィ地区に住む大学生が主人公です。
他の映画で描かれていたこのスラムが、かなり貧しいイメージだったので
主人公を始め皆んなが普通にスマホを持っていることに違和感がありました。
でも、アジア映画研者の松岡環さんのお話しによると
インドでは携帯の普及率がかなり高く、スラムでもみんなが普通に携帯を持っているそうです!
電話がメインの小型の端末を持っている人達が、街中でしきりにショートメールを送っていたり、
若者はスマホで動画を見たりしているらしいです。
これからご覧になる方は、私のように無駄な違和感を持たずに、物語に集中していただければと思います。σ^_^;
実話との触れ込みですが、インドの人気ラッパーネイジーとディバインがモデルとなっているそうで、ライブに行った監督が楽屋を訪れて意気投合!どうしてもこの物語を伝えなければならない!と映画化に至ったようです。
主人公のムラドや仲間となるMCシェールに二人のエピソードを落とし込んでいるから、社会背景もリアルなのでしょう。
様々な階級と宗教が描かれていました。
・上流階級⇒ナジムの父親の雇い主
家族ごとに車を所有し、それぞれに運転手が付いている。
・中流階級⇒ナジムの恋人
女の子にも充分な教育を施せる経済力とリベラルな考え方をもつ一方で、昔からの価値観も引きずっている。
・下層階級⇒MCシェール
低所得者向けの集合住宅
・スラム⇒主人公ナジム
バラックだてのような長屋。
ラップミュージックを通してのサクセスストーリーに引き込まれますが、
中でも私が感動したのは、悪友モインの友情と、父親との確執でした。
彼を取り巻く悪友やラップ仲間はもちろん、ラップを否定する人々も含め、その出会い全てが、彼を歌う事へとかりたてている。
まさにガリー(裏路地)が生んだ魂の叫びに他ならない。
そして、涙無しには見れないのが、自分達の心の代弁者であるナジムを送り出すムインとのシーンです。(T ^ T)
全てを背負って歌う姿に感動しました。
父親との対峙も感動的でした。
インドに長くいた同僚の話だと
インド社会では、まだまだ父親の言うことは「絶対!!」で、逆らうことなど出来ないそうなのです。
それに、カースト制は無くなったけど、自分は元◯◯だ というカーストが残っていて、周りの人達も「あの人は元◯◯で、あの人は元◯◯」と知っているのだそうです。
そんな根強い階級社会のなかで、スラムの中で生きる事に甘んじている父親と、抜け出そうとする息子。そんな対峙になっていましたが…
でも、父親も息子には抜け出して欲しかったに違いない。だから無理にでも大学に行かせて、新しい未来を切り開いていって欲しかったに違いない。
ただ、ラップという方法が理解出来なかっただけで。
そんな二人の気持ちが痛いほど伝わって
階級社会から抜け出して、いつの日か社会が変わる事を信じて未来を切り開く若者たちのパワーを感じました。