鼓動のレビュー・感想・評価
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押しつけがましくなくていい
藤原季節さんが好きなので観てみました。28分のショートムービーですが、けっこう中身は濃いし、濃いのにきれいに纏まっていると思いました。最後の救いが大げさではなく、すっきりしているところもとてもよかったです。父を亡くした青年と、息子を亡くした男性の話ですが、ちょっとエピソードが月並みというか、既視感があるのは残念でした。それでも、出ている方がみんな演技力があるので、引き寄せられるものはありました。
喪失したもの同士の邂逅
喪失したもの同士の邂逅を描いた、藤原季節主演のショートムービー。
父と息子を亡くした二人がたまたま出会い、たまたま手を差し伸べる。
この奇跡的とも言える出会いは、再び歩いていけるきっかけなのでしょう。
そうそう。何か見た事ある駅前だなと思ってたら、ちょいちょい映画観に降りる駅でしたw
【”父はいつでも、息子の事を想っている。例え、疎遠になっていても、厳しく接していても・・。”2組の父子の姿を通じて、父子の関係性を描き出した作品。】
■22歳のミツル(藤原季節)は家に帰る途中、電話を手に地面に突っ伏して泣き叫んでいる初老の男(入江崇史)を目撃する。
周囲の人々は迷惑そうに彼との関わりを避けて通り過ぎ、ミツルも面倒なことに巻き込まれないように帰路につくが、1年前にあった父からの電話を思い出し…。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・ミツルは、父からの電話に素っ気なく出る。そのうちに、電話にも出なくなる。だが、ある日留守電に入っていた父の死を告げる医師の言葉。
ー そして、届けられた父が大切に保管していたモノ。それは、幼いミツルのおもちゃだった。-
・一方、野球に入れ込んでいた息子を厳しい態度ながら、応援する男(入江崇史)。だが、息子が難病に侵されてることが分かり・・。
ー この男が、息子が野球をしているシーンを独り観ている所から、修理に出していた携帯に映っていた幼き息子の誕生日パーティーの光景。それを見て、男は人目も憚らず地面に突っ伏して泣き叫ぶ。”すまなかった・・。”と言いながら。-
<ラスト、そんな男に手を差し伸べるミツルの姿が、僅かな希望を感じさせる作品である。>
It is no use crying over split milk.
故事諺では最も有名な一節であろう。「後悔先に立たず」・・・ まさに人生自体がこの世界観に内包されているかとさえ思える、心から消去できない爪痕に深く浸透している言葉である。本作はそんな諺を、父親息子二組の、一方は父親側、他方は息子側視点で、ストーリーに落とした群像劇である。勿論、映画なのだから観客は俯瞰でスクリーンを目で追うので、何が問題なのかは倫理的にはハッキリしている。しかし、父親と息子という同性故の苦悩と葛藤は普遍なのである。自分のように力強い男、又は成しえなかった夢を受け継いで欲しい父親、だらしない自分の父親に愛想を尽かし反面教師のレッテルを貼り続ける息子。男同士だからこその蟠りをこねくり回さずストレートに表現してみせた本作は、短編ならではのスピーディー感が上手く演出を助け、没入感をより加速させていく。路上で膝をついて四つん這いで泣き叫ぶ初老の男に、父親の叫びを掬い取って上げられなかった後悔に苛まれる若者、それぞれの人生をプレイバックしてゆきながら、それぞれの人生など知る筈もない他人がラストに邂逅する。そして、その後悔を浄化するかの如く、手を差し伸べる若者とその若者に死んでしまった息子の面影を観て、自分勝手な思いを押しつけた悔いを赦されたかのように一気に憑物が取れる初老の男。思いやりが欠如していた自分達の過去の悔いが、こういったことで昇華していく皮肉さ。その何とも概念化不能な沢山の感情を、脚本演出ではなく、俳優達の感情に純粋に従った演技が今作品の白眉であると、アフタートークで監督が語っていたのは、大変印象的であった。勿論、擦り続けられたテーマであるし、解答も又作品それぞれであろう。今作に於いてはそれは“偶然”という神のプレゼントが二人の男を癒すことが出来た。そこには正誤はない。あるのは心臓の鼓動のハーモニクスだけである。短編の中でしっかりとしたカタルシスに帰着できたチャンス取得の妙を大いに感じた作品である。
余談だか、若者の恋人のシングルマザー役である桝田幸希はどこかで見知った女性だと思ったら、元間宮夕貴であった。相変わらずの人目を惹くモデル体型の美しい女優ぶりは健在であるが、折角なのだからベッドでの会話シーンでは、ヌードであればもっとリアリティが演出できたのにと、そこは非常に残念であった。
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