「アニメ好きに刺さる細かい小ネタが盛り沢山」前田建設ファンタジー営業部 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメ好きに刺さる細かい小ネタが盛り沢山
映画好きやアニメ好きの間では結構話題になっていた映画だったんですが、残念ながら私の住む地域は上映している映画館が無く、DVDレンタルしてるのを見つけてようやく鑑賞しました。
「空想の建造物の見積を作成する実在の建設会社の話」という程度の事前知識はありました。
結論から言えば、面白かった!!!
ラストシーンがちょっと納得いかない部分がありましたが、全体通して観ればめちゃくちゃ面白かった。昔のアニメあるあるの「作画が安定しない」「後付けで変な設定付ける」っていう描写には腹抱えて笑いました。「マジンガーZ」の映像が惜しげも無くバンバン出てきて「アニメはこういう描写なのか」とキッチリ画で見せてくれるのは分かりやすくて良かったですね。
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前田建設工業株式会社の広報グループでは、自社のホームページに掲載する新たなWebコンテンツを考えていた。そんな中、グループ長であるアサガワ(小木博明)は「アニメに登場する建造物を実際に建造した際の見積を算出する」という企画を発案し、その第一回企画として「マジンガーZの地下格納庫の見積作成」を提案する。抜群のフットワークの軽さで社内稟議や権利者への許可取りを済ませてしまったアサガワの企画に、広報部の新人である土井(高杉真宙)や先輩社員の別所(上地雄輔)も巻き込まれてしまう……。
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ストーリーや設定に凄い既視感あるなーと思ったんですけど、これって柳田理科雄さんの書籍シリーズ「空想科学読本シリーズ」に似ていますよね。アニメの中の突飛な設定を科学的な視点で検証する大人気の本です。私も小学生の頃に学校の図書室に通って夢中になって読んでいた記憶があります。本作『前田建設ファンタジー営業部』は「建設分野に特化した『空想科学読本』」って感じの雰囲気があります。
最初は前田建設の得意分野であるダム建設の知識が活きて、比較的順調に見積作成が進みますが、昔のアニメ特有の「設定の作りこみ不足による作画ブレ」とか「後付け設定」とかが、「なんでそんな構造にしたんだ!」「なんでそんな設定あることを最初に言わないんだ!」みたいな感じで見積作成の作業に影響を及ぼしていくのがめちゃくちゃ面白かったですね。
あと単純に「建設業」という職種についても興味が持てました。
今まであんまり「建築」とかに興味は無かったんですけど、見積の細かい設定を詰めていく段階の描写で「掘削の奥深さ」「水圧に対抗するためにどうするか」みたいな建築にまつわるエッセンスが散りばめられており、これが教育的な意味で興味深いし面白いんです。実際のトンネル掘削現場やダムで撮影が行われているようで、迫力のある映像・演者さんたちが現地に赴いてその迫力に演技でなく本当に圧倒されている様子が素晴らしかった。
また、「実話が基になった映画」で良くある問題点で「脚色不足により盛り上がらない」というのがあります。しかし本作は脚色や演出が良く、全く問題無かったと思います。というか、実在の企業を描いた作品なのに社内の部署によるいがみ合いとか派閥争いまで描いていて、「これ大丈夫?前田建設はよく許可出したな。」と思いましたね。実話を基にした作品だと大人の事情とか忖度が透けて見えてしまって白けることがしばしばあったんですが、本作に関してはそういう白ける場面はありませんでした。そこが実に良かったし、終盤の映画的カタルシスにも繋がる良い演出になっていたと思います。
ただ一点だけ気になったのが、ラストの展開ですね。
どんでん返しのような展開がラスト10分くらいで矢継ぎ早に3度ほど繰り返されるんですが、これが個人的には鬱陶しかった。それまでの展開が面白かっただけに「最後のそれ必要か?」って感じてしまったんです。せっかくのラストシーンなのだから、もう少しスッキリと終わらせてほしかったですね。
全体的に見れば、ほんとに面白い映画でした。
特にアニメ好きの方にはぜひ観てほしい映画ですね。オススメです!!