劇場公開日 2020年1月31日

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「工学部の学生さんたちに是非お勧めしたい」前田建設ファンタジー営業部 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5工学部の学生さんたちに是非お勧めしたい

2020年2月2日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

いわゆるゼネコン業界は、談合などの不正のイメージが強く、若い人の就職希望者が減るのではないかと危機感を覚えた実在する前田建設が、企業のイメージ向上を図るべく、マンガやアニメに出て来る設備を実際作ったらどれほどの経費と期間が掛かるのかを、真面目に計算して 2003 年に Web で公開したのがきっかけで、舞台化や書籍化を経て、遂に映画化されたもので、この Web サイトは現存しており、ほとんどが実話とのことである。

映画ではこの作業に専従する社員が出て来るが、実際には有志がそれぞれの業務を終えた後ボランティアでこのプロジェクトに関する作業を行ったらしい。既に9つのプロジェクトが行われているが、本作はその最初のプロジェクトである「マジンガーZの格納庫」を実際に作ったら、というテーマについて描かれている。アニメの DVD を参考にして、扉の開く速度や油圧リフトが上昇するスピードなど、いずれも原作に忠実に行うことができるかどうかをまず検討するのだが、アニメの原作者の思いつきに引きずられる社員たちの騒ぎっぷりが非常に面白く、終始爆笑させられた。

作業としては、まず地中に巨大な格納庫を作るために掘削作業が必要となり、その現実化のネックなどが非常に興味深く語られる。次には格納庫の扉の開閉に必要な機械構造や性能が吟味され、ほぼ全体像が見えてきたところで、ある回の中でとんでもない追加機能があることが指摘され、全員が絶望の淵に追いやられたりして、見ている方はハラハラさせられる。実に面白い展開である。いずれもコストはかけられないので、無償での作業に頼らざるを得ないという縛りが良く効いている。

自社の技術部だけでは対応できないと思われた部分については、取引先の会社にまで協力を打診したりするというのも驚嘆すべき話で、そんな酔狂なお遊びに付き合ってくれる会社があるものかと思うと、より熱意を持って熱く語ってくれる企業が実名で登場するなど、実に見応えがあった。物づくりにやり甲斐を見出せる人間は、幼少時にマジンガーZなどを見た経験を持つ者が多く、それを頭から不可能と断じる者ばかりでないというのが前提でなければ成り立たない話であるが、話の展開には非常に引き込まれた。全ての準備が整い、仮想的な試運転を行うシーンが特に圧巻であった。

この映画は建設業界が中心となった話であるが、同様の挑戦は機械や電子、情報、医療などあらゆる業界でも想定は可能なはずである。工学部に籍を置くものとしては非常に興味深く拝見することができた。建設業が専門の人には更に面白く感じられたことであろう。工学部の学生さんたちにも是非勧めたい映画であった。

役者は特に脇を固める人たちに実力者が多く、いかにも頼り甲斐のある頼もしいスキルの高い人物に見えた。マジンガーZの生みの親の永井豪がカメオ出演しているのも楽しめた。音楽は、特に仮想的な試運転でマジンガーZのテーマ曲がスローテンポでアレンジされているところに痺れた。演出も正統派であったが、最初の方で怒鳴ってばかりいるところがあり、台詞が聞き取りにくかったのは何とかして欲しかった。
(映像5+脚本5+役者4+音楽4+演出4)×4= 88 点。

アラ古希